女になった俺と、

六月 鵺

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リッシェンリーダン

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【我ら魔導書は埃を被るためにいる訳ではないからのぉ。使い手がいなければ、我らに存在意義はないに等しい。だから感謝しとるぞ?ここにおる魔導書も口に出さんだけで、感謝しておるよ。お主が使い手になってくれて。のぅ?啝譚よ?】

頬杖をついて、にやりと意地悪く微笑みながら、啝譚に視線をやる。

【ま、まぁのぉ、わしに書かれとる魔法は凶悪で忘れられた魔法がほとんどやさかい、まさかまた日を拝めるとは思わんかったから……うん】

忘れられた魔法……か。魔導書は魔法の、敷いては魔法使いの歴史と言っても過言ではない。
今でこそ魔法が全ての世界だけど、昔は科学が全てを支配する世界だった。
昔も昔、大昔の魔法は今よりも大掛かりな割りに成功率が低かった上に、魔法使いが少なかったからこそ、科学が発展した。
その中で魔法は徐々に進化して、魔法使いも増えていった。
そして六百三十七年前、科学の発展した国と魔法が発展した国がぶつかり合い、魔法が勝ったために、魔法が全てを支配する世界になった。
魔法の歴史は科学よりも血に塗れてる。
啝譚を作った魔法使いが生まれた日ノ本の国は、戦争をしない国にも関わらず、ディンディアナのせいで戦わざるを得なくなった。
ずっと戦争もなく平和だった国が戦えと言われて、いきなり戦えるはずがない。ただ悪戯に人が死ぬだけだ。
そして、一人の天才が現れ、科学と魔法を駆使し敵を退け、破壊の限りと殺戮の限りを尽くした上で、日ノ本の国は勝利し平和な国に戻った。数多の犠牲の上に、平和が成り立っている。
戦争が終わった後に啝譚は作られている。だから啝譚自身は戦争を知らない。でも、製作者の悲哀と葛藤を、記憶を知っている。
啝譚の最後の文に書かれていた。
【この魔法が使われる日が来ないことを、望む。】
啝譚自身が陽気なのは、内包されている魔法が凶悪だからなのか……。
製作者はどんな思いで、作ったんだろう。平和主義者だった天才は、どんな思いで。
リーガルの言う通り、使い手がいなければ魔導書は、存在意義を失ってしまうのに。
使い手が現れないかもしれない魔導書を、なんで。
啝譚を見つけたのは、リアゲートの屋敷のこっそり忍び込んだ地下室。そこで、封印の鎖を巻きつけられてたのを、こっそり持ってきた。
魔導書は使い手のマナと、魔法を行使する意志がなければ使えない。
〈リーガル〉の場合、魔法回路解錠の魔法だけは、マナなしでも使える。
俺にはもう、マナが流れてる。つまり、啝譚を使える。これからは俺にとって、ただの本じゃなくなるんだな。
強力な武器になるけど、使い方を誤れば、殺戮兵器になってしまう。
どんな魔法も一歩間違えば、使い方を変えれば、殺すための武器になってしまう。
俺は俺の目的のために戦うことを選んだ。でも、その選択のために犠牲が出たとしたら?
決めている。俺は俺のために迷わないと。
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