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1章 秋山とソレガシ
『目的地』
しおりを挟む宿に帰った秋山は、これからどうするかを考えていた。
当初は気ままに狩りをしながら帰る方法を探すつもりだったが、“さい果ての場所”が何なのかが気になっていた。
目的も無く退屈だった秋山からすれば、それは願ってもない情報だった。
それに、この世界はいったい何なのか知りたくなってきた。ゲームと似ているけど、同じではない。
ゲームと異世界が混ざっているような……
とにかく、当面は“さい果ての場所”について調べる必要がありそうだ。
と、そこまで考えて、お腹も空いたし取り敢えず、夜ご飯を食べる事にした――
_______________________
美味いな。米が欲しくなる……
今日は、宿屋の食堂で日替わりセットを頼んだ。
本日は黒パンと肉野菜炒め、スープのセットだ。疲れているのもあるが、かなり美味いと思う。
「ところでエリアさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
何故か目の前の席に座って食事風景を眺めている店主、エリアさんに尋ねる。
「あら?恋人なら募集してないわよ?」
……さいですか。聞いてませんけどね。
「さい果ての場所って知ってますか?」
「サイハテノバショ?」
やっぱり知らないか。
「ごめんねー。きいたことないわ」
申し訳なさそうに謝って来るエリアさん。嘘を言っているようには見えないし、これ以上聞いても無駄だろう、と判断して食事を続けることにした――
「で、なんでずっといるんですか?」
「おいしいかな?って心配なのよ」
ジ――――
……
…………
………………。
「美味いですよ」
――早く部屋に戻ろ。
_____________________
それから二週間程、朝と昼は街の外でこの身体に慣れる為に狩りをして、夜は酒場やギルド酒場で情報を集めた。
集まった情報はどれも役に立たないものばかりだった。まず、“さい果ての場所”と言う言葉を知っている人が少ない。
知っている人も、言葉は聞いたことがあるけど何かは知らない、と言う人ばかりで結局ギルドマスターから聞いた話以上の情報は無かった。
ギルドマスターは、不干渉と言った通り何も仕掛けて来ることもなく、何度かギルドを音連れた時は直接対応してくれた。根はいい人なのだろう。
そのせいで、ギルドマスターと対等の立場の冒険者がいる……と噂になっていたが。
そんなわけで、オレは近い内に街を出ようと思っている。
この街で得られそうな情報はもうないからだ。
どこに行くかはまだ決めていないが、ゲームの順番的には“イスカンドの街”だったはずだ。
目的地は追々決めるとして、まずは準備を整える必要がある。
移動手段は……徒歩かな。
馬車は存在するのだが、せっかくだから歩いて行くことにした。この身体は肉体的に疲れる事は殆どない。HPがスタミナの代りになっているらしく、徐々にHPが減っていくが自動回復スキル〔リジェネ〕ですぐに元に戻るのだ。
それに、狩りもしたい。
慣れ、とは不思議なもので、二週間魔物を狩り続けた結果、魔物に関しての殺傷は抵抗がなくなっていた。
いい事なのか、悪い事なのか、心境は複雑だが……
なんにせよ、準備を整えなければ。
______________________
宿の部屋。秋山は考え事をしながら旅の準備をしていた。
コンコン
部屋のドアをノックされ、手を止める。
エリアさんかな?何の用だろう。
訝しく思いながらもドアを開ける。
「ッ! お前……何しに来た」
パッと下がって戦闘態勢を取る。二週間でこの反応速度と身のこなし、さすがは秋山と言った所だろう。
目の前にいるのは、忘れもしない……あの女――アズ=ナ=ブールだった。
「――私に敵意はないよ。どうか武器を引いてくれないかな?」
「……信じられると思ってんのか?」
「私ではアナタには勝てない。それに、今は暗殺の依頼は受けていない――ただ話をしに来たんだよ」
そう言って手をヒラヒラしている。
オレは、警戒を解かずに銃を構えたままだ。これ以上近づかれると銃で対応するのが難しくなる。無言で、近づくなと伝える。
それを汲み取ったのか、その場から動かずにアズ=ナ=ブールは喋りだした。
「アナタの知りたいことは、“カトレアの王都”に行けば何かわかるかもしれないよ。王都には古い文献が残っているって噂だからね」
こいつ、なんかキャラ変わってないか?こっちが素なのか?
「それをオレに教えるメリットは?まさか善意な訳はないだろ?」
オレがそう言うと、アズ=ナ=ブールはクスッと笑った。
改めて見るとやっぱり、綺麗な顔してるな。とか余計なことを考えてしまう。
「んー、お礼…かな? 私も依頼を受けただけだから謝りはしないけど、白金貨を貰ったからそのお礼の代りね」
Oh、そう言えば下心を練りこんで渡したんだった……忘れたいぜチクショー!
「……分かった、情報は感謝する」
完全に信じたわけではないが、わざわざ危険を冒してまで嘘を言いには来ないだろう。
目的地は“カトレア王都”にしよう。
「それから、アナタにこれからも情報を売りたいのだけれど、買ってもらえるかな?」
「必要なものなら買ってやるが、旅に出るつもりだがどうやって売りに来るつもりだ?」
付いて来られるのは勘弁だぞ。
「それについてはアナタの場所を把握するために、どこかの街に着いたらギルドに顔を出してほしいんだ。うちのギルドマスターが各ギルドに話を通しているはずさ。……“監視”も兼ねてね」
断ったら面倒くさそうだし……付いて来られるよりましか。
「分かった。そうしよう」
「じゃあ、私の仕事はそれを伝える事だから――また会おうね!」
と言うだけ言って消えていった。と言う訳で、何故か専属の情報屋が誕生した。
もう会いたくねえぇぇぇ!!
これから何だか色々面倒が起こりそうな気がして、頭を抱えたくなった。
――早いとこ準備して寝よう。
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