弓張月異聞 リアルチートは大海原を往く

Ittoh

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伊豆綺談

伊豆大島にて

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ぼぉーっとしていると、長い長い、夢を見ているようであった。
 勘当されて、九州の肥後へ行って、父が解官されたと聞いて、肥後より大慌てで京洛へ帰還すると、上皇の院宣を受けて父為義と共に、主上や平清盛、そして兄義朝と戦った。
清盛が郎党、伊藤忠清から射掛けられて外れると、
「清盛で不足なのに、貴様等ごときが相手になるかッ」
矢をつがえ、キリキリと身の丈より遥かに長い、弓を引き絞るようにして、射放つと伊藤忠清を大鎧ごと貫いて、弟忠直の袖鎧を刺し貫いた。
 戦と言うものは、いかに一人が強かろうが、それで戦に勝てるわけではない。結局のところ、俺は戦に敗れ、大切な恩人であった上皇様は配流となってしまった。





 講談師、見てきたように嘘を吐くでありますが、時に真実が入ってこその講談でもあります。
 この話は、日本のリアルチート代表、鎮西八郎為朝の綺談であります。鎮西八郎為朝は、河内源氏の流れ、源為義の八男であり、源氏頭領源義朝の弟でありました。身長七尺とあるので、210センチということになる。体重もおそらくは、三十貫から四十貫(100キロから150キロくらい)と思われる。左腕が右腕より長く、一丈五人張りの弓を引いた豪遊無双の武士もののふである。
 三寸厚(9センチ)の大盾を砕き、鎧武者を貫いて後ろの武者に突き刺さるような武士もののふでありました。
 平安末期のこと、武家が勢力を伸ばし、主上の後継や、貴族の争いに武家が加わることで、非常に殺伐とした時代になっていったのでありました。
 源為朝は、保元の乱で、崇徳上皇に付いて戦い、兄義朝や平清盛等に敗れて肘を抜かれて、伊豆へと配流となったのでありました。





 ぼぉーとしていると、長き夢から醒めたように過ごしていた。
「ここは、」
「どうしました。伊豆大島ですよ、ためともさん」
「あぁ、妙か。なんかとっても長き夢を見ていたようだ」
「都の夢ですか、ためともさんが大活躍されたという」
「ふん。結局は敗れて、肘を抜かれて、この大島に送られた」
「でも、あたしには、よかったですよ。ためともさんと逢えて」
伊豆大島に辿り着いた。島長でもあった、伊豆大島代官、藤井三郎太夫忠重が娘の妙に膝枕してもらっていた。
「うん。おれも、嬉しい、だから妙」
がばっと起き上がると、そのまま妙を押し倒して、ことに及んだ。あ、為朝はおっぱい魔人だったか。大きな爆乳をした胸乳おっぱいを揉みしだいて、柔らかくぷにぷにした感じを確かめながら抱きしめて、濡れぼそる女陰を突き抜いていった。
 何度か生きていることを確認するように、突き抜きアヘ顔を晒させて、気をやってしばらく倒れていた妙の髪をなでていると、ようやく気づいて
「もう、ほんとに、御天道さんも昇ってるのに、困ったためともさんだよ」
「大丈夫か、少し気をやりすぎたな」
「まぁ、腰はたたねぇ。少し休ませてけろ」
「わかった」
「前は、姫さんと一緒だったからな」
「あぁ、そうだな」
黒く長き艶やかな髪と、荒ぶる魂を持ったおなごであった。





 姫さんというのは、白縫姫のことであります。肥後の平忠国の娘、白縫姫。保元の乱で上皇が院宣を受けて、戦った為朝二十八騎が一人。槍を使いて兄義朝の手勢を三騎叩き斬った剛の姫である。逃げ落ちて、この伊豆大島まで追って来て出会えた姫である。この島で、為朝と出逢い、子を宿して産んだ後、産後の経過が悪く亡くなられたのであります。




 白縫姫の子一姫を、自分の子為頼と一緒に抱いて育ててくれたのは、妙だった。為頼の父親は俺だ。
「為朝様。よろしいでしょうか」
現実に、引き戻すように声がかかる。為朝に付き従ってくれた、忠義の士、紀平治である。八丁礫の紀平治は、印字打ちと呼ばれる、石打ちの名手である。
「どうした、紀平治」
とうしきの鼻に座礁した船がおります。
「なんじゃ、どこの船だ」
「かなりの大船ですね、唐船だと思います」
肥後で逢った頃は、五歳ほどであったが、今では二十歳を超えた、立派な若者となっていた。
「行くか、馬はいらん」
散乱していた、褌を取って締めて言った。





 鎮西八郎為朝という御方は、弓は得意なれど、騎馬は少し苦手でありました。これは、当時の日本で使われていた軍馬は小柄であったため、為朝の非常に大きな体躯を乗せて、自在に駆け回ることが、厳しかったというのがありました。
 また、和弓というのは構造上、威力を上げるために長さを必要としていたので、五人張りで一丈(3メートル)程の長さがありました。





妙の方に振り返って、
「妙は、まだ休んでいろ」
「はいさ、ためともさん」
「うん」
八丈の紬に、荒縄で帯を締めて、三尺五寸の太刀を挿して駆け出した。抜かれた肘は大分良くなっていたが、まだ五人張りの弓を引くことはできても、引き絞り狙うには厳しい状況であった。為朝の館からとうしきまでは、三里(12キロ)ほどなので二時間程となる。

 とうしきに着くと、遠目に見ても、でっかい大船であった。十三丈(39メートル)ほどはある船は、博多で見た、唐船に似た形で、三本マストに竹網の帆をひるがしていた。嵐にあったようで、主檣が折れて、弥檣と艫檣の帆をたたんでいた。出来る限り、突っ込まないように操船をしたらしく、左舷側後方が岩礁にあたって砕けていた。
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