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南海覇王為朝
ナン・マトールと交易圏
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講談師、見て来たように嘘を吐く。されど、真実混ざってこその嘘であります。
南洋に少し変わった遺跡がある。海に建てられた、石造建築群である。ミクロネシアにおける儀礼の中心地であったと史実では伝えられている。人工島を築き上げるように、巨大な石造建築が建てられていた。宗教的な権勢は、王権を凌ぐほどで、王権の停滞と歳出の増加をもたらしていた。百年を超える、水城のよう建てられていく建築は、美しくもあり、権力の象徴でもあったが、厄介な金食い虫でもあった。
トゥルーカの兄ムゥウォンは、祭祀の司ハルトゥによって強制的に民達を、ナン・マトール建設に駆り出されている状況に苛立っていた。既に90の人工島が完成し、外海との回廊も建設されている状況で、さらに多くの建物を建てようとする司ハルトゥが邪魔だったが、はっきりと口にすることはできなかった。
奴隷を多く必要とするため、四方の島に船を送っていた。
送った島の一つ、最強の戦士トゥルーカを王の戦士達と共に送り込んだ、西方の島で、敗れたのであった。弟は、強大な王が、壊せぬ武器を持って、西のテュルクに現れたと報告した。
ただ、西の王は、二度と攻めぬとあれば、友の証として、剣を贈るということで、鋼の剣が贈られた。
鋼の剣は、切れ味も鋭く、非常に美しい輝きを持った剣であった。
「トゥルーカよ。西の戦士は強かったのか」
「王よ、タメトモは強かった。俺が素手で勝てなかった。初めての相手だ」
「何故、敵はお前を殺さなかったのか」
「王。西の島は、神の島なれば、選ばれたものしか住まえぬと」
「神、、、嫌な響きだ」
司ハルトゥを思い出したムゥウォンが嫌な顔をするのを、トゥルーカが言い繋いだ。
「かれらは違う。鳥の人マケマケ、竜の人カマプアアが選ぶ」
「何。誠の神がいるのか、トゥルーカ」
「そうだ。神自身ではなく、神の使い「眷属」と言っていた」
「ならば、司ハルトゥを遣わそう。彼ならば、選ばれるであろう」
厄介払いもできるか、ムゥウォンの考えは、美しき水城となった、ナン・マトールを王家の館とすることであった。幾つかは、王家の祭壇として築き、王家の離宮として使用していた。離宮を本宮殿として、権勢をふるうことをムゥウォンは夢見ていた。
「トゥルーカ、護衛と使者として、ハルトゥと一緒に言ってくれるか」
「わかった」
王の命を受け、「西に神が舞い降り、神が上陸し、環礁全域を神域とした」このように司ハルトゥへ伝え、確かめるように求めたのであった。
王の命をハルトゥは、嫌そうに承知した。神がいるとなれば、自分の地位に陰りが生じるからである。
「偽物とは思いますが、確かめましょう」
一月の準備を行って後に、三艘の船が仕立てられ、西の島へと出発した。
南洋に少し変わった遺跡がある。海に建てられた、石造建築群である。ミクロネシアにおける儀礼の中心地であったと史実では伝えられている。人工島を築き上げるように、巨大な石造建築が建てられていた。宗教的な権勢は、王権を凌ぐほどで、王権の停滞と歳出の増加をもたらしていた。百年を超える、水城のよう建てられていく建築は、美しくもあり、権力の象徴でもあったが、厄介な金食い虫でもあった。
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奴隷を多く必要とするため、四方の島に船を送っていた。
送った島の一つ、最強の戦士トゥルーカを王の戦士達と共に送り込んだ、西方の島で、敗れたのであった。弟は、強大な王が、壊せぬ武器を持って、西のテュルクに現れたと報告した。
ただ、西の王は、二度と攻めぬとあれば、友の証として、剣を贈るということで、鋼の剣が贈られた。
鋼の剣は、切れ味も鋭く、非常に美しい輝きを持った剣であった。
「トゥルーカよ。西の戦士は強かったのか」
「王よ、タメトモは強かった。俺が素手で勝てなかった。初めての相手だ」
「何故、敵はお前を殺さなかったのか」
「王。西の島は、神の島なれば、選ばれたものしか住まえぬと」
「神、、、嫌な響きだ」
司ハルトゥを思い出したムゥウォンが嫌な顔をするのを、トゥルーカが言い繋いだ。
「かれらは違う。鳥の人マケマケ、竜の人カマプアアが選ぶ」
「何。誠の神がいるのか、トゥルーカ」
「そうだ。神自身ではなく、神の使い「眷属」と言っていた」
「ならば、司ハルトゥを遣わそう。彼ならば、選ばれるであろう」
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「わかった」
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王の命をハルトゥは、嫌そうに承知した。神がいるとなれば、自分の地位に陰りが生じるからである。
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