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南海覇王為朝
瘴気祓い1. ヤシガニが、魔物となる
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海の奥底に潜む漆黒の闇の中から、黒き瘴気の塊が海に浸み出していく。
「殺す、殺す、コロス、コロス、、、」
意識は、消えて、瘴気に囚われ、残骸の意志が荒れ狂う嵐のように凄び狂う。一匹の獲物を逃がした、ヤシガニの意識が、瘴気の渦で怒りに染まり、闇に堕ちる。後から見れば、ただそれだけのこと。怒りが震えるように闇に堕ちる隙間となって、荒れ狂う嵐となる。
膨れ上がる魔物の身体は、五丈を超える身体となって荒れ狂う。陽が昇り、瘴気が毒気となって身体を責め苛むように、魔物が暴れ出すのが、頂点となる。秋島の北岸で瘴気を纏って変化した魔物は、狂ううように暴れだした。
地を駆けて、木々を薙ぎ倒す。周囲に溢れる闇が、昼なお昏き瘴気を吐いて、殺気に纏い憑かれて暴れ狂い、バキバキぃ、ばきッ倒れる木が響く。
「「「「な、何」「なんだぁ」」」」
怯えるような村人の声が、重なり合う。
南方嵯峨、秋島の村に、五丈の巨大な黒き闇の魔物が、表出する。
弓の弦を鳴らす。ヴィオロンのように、指でつま弾き、震わせる。弦の鳴り響く音が鳴ると、黒き闇が止まる。音が止まると蠢めいて、音が鳴ると止まる。
「海へッ」
アディアの声が響き、村人達は、我に返ったように、海へと逃げ出していく。
「あ、アディア」
「く、来るなッ、凱琉。村の者達を逃せ、父の村だ」
アディアの声に、凱琉が断る。
「い、い嫌だ」
カーンカーン。カーンカーン。凱琉は、近くの家から鉄鍋を持ち出し金串で叩き、金属音が響く。複数の音が響いてて、魔物の動きが、止まる。止まってはいるが、動きたくてビクビクするように蠢いていく。秋島の村から、夏島の表宮まで、海を廻って五里(二十キロ)弱、ミヅチであれば、四半刻(三十分)あれば、往復できる。凱琉は、魔物を見ていた。巨大な海老のような身体で、大きな鋏脚を振るうと、椰子の木が挟み斬られて弓の弦が鳴るアディアの方へと投げ込まれた。
一瞬にアディアが飛び下がる時に、椰子の葉が弓に引っかかり、取り落としてしまう。拾いに戻ろうとするアディアを凱琉は、突き飛ばすようにして弾くと、挟脚が凱琉の右肩口を切り裂いた。
「ちぃッ」
「が、凱琉ッ」
アディアの叫びと、吹きすさぶ血に酔うように、魔物が突っ込んでくるのを、巨大な一間(1.8メートル)はある左挟脚を躱して、振り抜いて離れる左挟脚に、魔物が引く左挟脚に左張り手を左から踏み込んで叩きこんで、地面に叩きつける。小さなと言っても半間(90センチ)以上はある右挟脚が右腕より突き出されていくのを、左横っ跳びに躱して、左肩口から突進してぶちかます。五丈(15メートル)の巨体は、二百貫(750キロ)以上あるようで、凱琉の百貫(375キロ)を超える程度のぶちかましでは、あまり動かせず、逆に右挟脚を外に振り抜かれて、凱琉の方が飛ばされた。
二三回転がるようにして、近くの家に叩きつけられた。右肩に激痛が走る。
「ぐぅッ」
「凱琉ッ」
アディアが駆け寄って、凱琉を覆うように抱き寄せて、庇おうとすると、
「あ、アディア。逃げろ」
「い、嫌だ」
黒き闇の塊が、向かって来るのを見ながら、凱琉は、アディアを抱くように後ずさる。魔物が巨大な左挟脚を振り上げると、左挟脚の付け根に、斜め上方から飛んできた一分五尺柄七寸鏃が突き刺さるように叩き折った。二射目は、上から射下すように、右挟脚を突き抜くように地面に突き立て、三射目は、一直線に駆けるように、正面口脚から脳天を打ち抜くように突き立ち、魔物を後方へと押し倒した。
浮き上がる、頭から腹脚までを、連続して一分五尺柄七寸鏃が三射、突き立てるように刺さっていった。脳漿をぶちまけるように、魔物が崩れ落ちた。魔物の身体から、瘴気が沸きあがるように広がろうとする。
「カグラッ」
「おぉッ」
一個の火砕流のような塊から火焔の柱が吹きあがるように、魔物から沸き上がる瘴気を焼き祓っていく。
「殺す、殺す、コロス、コロス、、、」
意識は、消えて、瘴気に囚われ、残骸の意志が荒れ狂う嵐のように凄び狂う。一匹の獲物を逃がした、ヤシガニの意識が、瘴気の渦で怒りに染まり、闇に堕ちる。後から見れば、ただそれだけのこと。怒りが震えるように闇に堕ちる隙間となって、荒れ狂う嵐となる。
膨れ上がる魔物の身体は、五丈を超える身体となって荒れ狂う。陽が昇り、瘴気が毒気となって身体を責め苛むように、魔物が暴れ出すのが、頂点となる。秋島の北岸で瘴気を纏って変化した魔物は、狂ううように暴れだした。
地を駆けて、木々を薙ぎ倒す。周囲に溢れる闇が、昼なお昏き瘴気を吐いて、殺気に纏い憑かれて暴れ狂い、バキバキぃ、ばきッ倒れる木が響く。
「「「「な、何」「なんだぁ」」」」
怯えるような村人の声が、重なり合う。
南方嵯峨、秋島の村に、五丈の巨大な黒き闇の魔物が、表出する。
弓の弦を鳴らす。ヴィオロンのように、指でつま弾き、震わせる。弦の鳴り響く音が鳴ると、黒き闇が止まる。音が止まると蠢めいて、音が鳴ると止まる。
「海へッ」
アディアの声が響き、村人達は、我に返ったように、海へと逃げ出していく。
「あ、アディア」
「く、来るなッ、凱琉。村の者達を逃せ、父の村だ」
アディアの声に、凱琉が断る。
「い、い嫌だ」
カーンカーン。カーンカーン。凱琉は、近くの家から鉄鍋を持ち出し金串で叩き、金属音が響く。複数の音が響いてて、魔物の動きが、止まる。止まってはいるが、動きたくてビクビクするように蠢いていく。秋島の村から、夏島の表宮まで、海を廻って五里(二十キロ)弱、ミヅチであれば、四半刻(三十分)あれば、往復できる。凱琉は、魔物を見ていた。巨大な海老のような身体で、大きな鋏脚を振るうと、椰子の木が挟み斬られて弓の弦が鳴るアディアの方へと投げ込まれた。
一瞬にアディアが飛び下がる時に、椰子の葉が弓に引っかかり、取り落としてしまう。拾いに戻ろうとするアディアを凱琉は、突き飛ばすようにして弾くと、挟脚が凱琉の右肩口を切り裂いた。
「ちぃッ」
「が、凱琉ッ」
アディアの叫びと、吹きすさぶ血に酔うように、魔物が突っ込んでくるのを、巨大な一間(1.8メートル)はある左挟脚を躱して、振り抜いて離れる左挟脚に、魔物が引く左挟脚に左張り手を左から踏み込んで叩きこんで、地面に叩きつける。小さなと言っても半間(90センチ)以上はある右挟脚が右腕より突き出されていくのを、左横っ跳びに躱して、左肩口から突進してぶちかます。五丈(15メートル)の巨体は、二百貫(750キロ)以上あるようで、凱琉の百貫(375キロ)を超える程度のぶちかましでは、あまり動かせず、逆に右挟脚を外に振り抜かれて、凱琉の方が飛ばされた。
二三回転がるようにして、近くの家に叩きつけられた。右肩に激痛が走る。
「ぐぅッ」
「凱琉ッ」
アディアが駆け寄って、凱琉を覆うように抱き寄せて、庇おうとすると、
「あ、アディア。逃げろ」
「い、嫌だ」
黒き闇の塊が、向かって来るのを見ながら、凱琉は、アディアを抱くように後ずさる。魔物が巨大な左挟脚を振り上げると、左挟脚の付け根に、斜め上方から飛んできた一分五尺柄七寸鏃が突き刺さるように叩き折った。二射目は、上から射下すように、右挟脚を突き抜くように地面に突き立て、三射目は、一直線に駆けるように、正面口脚から脳天を打ち抜くように突き立ち、魔物を後方へと押し倒した。
浮き上がる、頭から腹脚までを、連続して一分五尺柄七寸鏃が三射、突き立てるように刺さっていった。脳漿をぶちまけるように、魔物が崩れ落ちた。魔物の身体から、瘴気が沸きあがるように広がろうとする。
「カグラッ」
「おぉッ」
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