弓張月異聞 リアルチートは大海原を往く

南海覇王為朝

瘴気の澱み、魔物の跳梁

　講談師、見て来たように嘘を吐く。されど、真実混ざってこその嘘であります。
  海は、溢れる廃棄されたモノが捨てられ、集まっていく場所である。文明がすすめば、浄化されることなく、漂う廃棄されたモノは、澱みの中に集まり蓄積されていく。
  瘴気に取り憑かれると、魔物となる。魔物とあやかしひとならざるものは、違う者である。ただ、あやかしひとならざるものが瘴気に取り憑かれて魔物となることもある。あやかしひとならざるものが瘴気に取り憑かれてなった、魔物を日ノ本では「禍津神マガツカミ」と呼ばれて、征伐や封印の対象となっていた。




　瘴気を祓い、魔物を倒し祓う。
　これを生業として、魔物を倒すと共に、あやかしひとならざるものを一緒に滅ぼしたのが、神殺しの蚩尤しゆうでありました。鋼の武器を使い、術を使い、あやかしひとならざるものを使役することで、魔物退治を仕事としていた蚩尤が、彼の国からあやかしひとならざるものを滅ぼすこととなった。
　人が争い、瘴気が生まれ、動物に取り憑き魔物となる。人に取り憑き魔物となる。魔物とは、瘴気に取り憑かれたものであり、魔物には意思は無くただ瘴気に突き動かされるように暴れ続ける。
「殺す、殺す、殺す、、、」
凄まじき怨念は、瘴気の澱みを引き上げるように溢れさせて、昼なお闇深き場所に、大きな澱みが廃棄された瘴気が少しづつ溜まっていった。そして、瘴気は、生き物に取り憑いて魔物となり、生き物に喰われることで、さらに取り憑く魔物となっていった。魔物は、闇に蠢いて、少しづつ溢れ出していく。
  日ノ本よりも大きなかの国では、数十万数百万の怨念が、溢れるような瘴気となって水に祓われるなかで、祓いきれず大海原に徐々に蓄積していった。

  結果として、光刺さぬ海の奥底には、瘴気の澱みに溢れて、魔物達を生み出す力となっていった。