琉球お爺いの綺談

Ittoh

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頼光四天王筆頭、綱

頼光四天王筆頭、渡辺綱 人は、暮らしのSkillを、あやかしに教わり奪う

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 西洋のギリシャ神話の中で、神々ティターンズのプロメテウスが、「火」を人間に与えたとされる。大陸では、伝承の中で伏儀と女禍は、世界と人を創造したとされ、あやかしひとならざるものミズチ衆の始まりともされている。炎帝神農は、焼き畑農法や薬樹を伝えた、医療と農耕の神とも伝えられる。炎を扱うあやかしひとならざるものの祖とも伝えられる。日ノ本では、テキヤの「神農道」として、今に伝えられている。神農の子蚩尤は、貉衆の祖とも伝えられる。蚩尤は、雌雄でもあり、雌雄同体のあやかしひとならざるものである。雌雄を併せ持つことで、あやかしひとならざるものの中で、四象の中心に位置する、黄帝の流れと同じ存在となっていた。

 蚩尤を倒すことで、人の血が支配の流れとなり、黄帝からが大陸の歴史が始まったこととなる。大陸における神話伝承から、歴史への転換点とされている。清朝末期に、黄帝紀元を巡って、年号を争ったが、皇紀と同じく、歴史の認識基準として、論争が継続している。孫文が中華民国の臨時大統領となった時、黄帝紀元4609年11月13日(1912年1月1日)を中華民国元年元旦として、黄帝紀元を過去のモノとした。暦を伝えた「堯」、治水を始めた「禹」の流れが、大陸に「文字」を生み出したのも、黄帝の流れである。



「火ってあやかしひとならざるものが、人に伝えたの、葛葉」

「そうじゃな、綱。人は、炎帝神農より、火を貰い、医薬と五穀を継承したのじゃ」

「五穀かぁ、葛葉。日ノ本では、大宜都比売神オオゲツヒメノカミが、素戔嗚に殺されて、伝えられたって言われているね」

「日ノ本でも、神を殺して、五穀を奪い、火を奪ったか、伝承であろうが、事実なのであろうな」

あやかしひとならざるものにとっては、良いのかな」

「そうじゃな。わらはは、人を嫌ぅたことは無いが、人を嫌うあやかしひとならざるものは多い。しかしの、綱、人を嫌って滅ぼされるのは、あやかし《ひとならざるもの》の方じゃ」

「そうなの、葛葉」

あやかしひとならざるものを、殺すのは難しいことではないし、どのように強いあやかしひとならざるものでも、人の手で殺すことができるからの。。。」

 葛葉は、言葉を繋ぐようにして、

「綱。あやかしひとならざるものは生きておる、死にとぅは無い。人に生きておることを認めてもらえねば、生きていけぬ。だからこそ、この日ノ本で、主上おかみと約定を交わして、眷属しんしとなったのじゃ」

「約定って」

「天平宝珠元年、日ノ本が生まれて、千年を超えたとして、上人様を日ノ本に迎えて、千年紀祝祭を開催したのじゃ」

「天平宝珠って何時くらい前なの、葛葉」

「250年ほど前になるかの」

「天平宝珠元年から千年後だと、750年後かな、この難波の町を、あやかしひとならざるものと一緒に暮らせる町にできるよ、葛葉」

「綱」

「人とあやかしひとならざるものが繋がり、子を残して一緒に暮らす町であれば、イジメや殺しは無くならないだろうけど、人とあやかしひとならざるものが暮らせる町にはなると思う」

「この難波のことか、綱」

「うん。俺は、この難波の町を護り、俺の子孫が、この町を護り続ければ、人とあやかしひとならざるものが暮らせる町にできる」

 言い切るように、言葉を繋ぎ

「血を繋ぎ、想いを繋ぐを、血統とするなら、人にとって永遠の命というのは、血統を護ることだ」

「ほんに可愛いのぉ、綱」

 子を癒すように、頭を撫でるように、葛葉の手櫛を受けながら、

「葛葉、そんなに子供じゃない」

「ほほほ、許せ、綱。妾《わらは》にとっては、綱は、何時までも変わらぬ、可愛いおのこじゃ」

 ほんわかした、雰囲気が、渡辺館を中心に、難波の町へと拡がっていくように、感じていた。
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