250 / 501
宵闇胡蝶綺譚:転生者は繋ぐ天下を治めた男、三好長慶
宵闇胡蝶綺譚:転生者は繋ぐ天下を治めた男、三好長慶 お風呂はやっぱり偉大です
しおりを挟む
湯屋御厨造りとも呼ばれる、館造りは、渡辺館だけでなく、屋敷造りに水流を組み入れた、流れとなっていた。今でいえば、最上流に台所を置いて御狐燈篭を設けて湯を造り、隣に風呂場を配置して、最下流に厠を設けていた。厠の排水は、樋箱で処理されて、排水溝へと流される。渡辺津の川湊から、大坂と呼ばれる、坂を登った場所に、渡辺館は建っていて、大坂館とも呼ばれていた。
湯船も結構広くて、3メートル幅に、長さ6メートルの湯船に、蓮と入っていた。湯女狐が二人で、鋳鉄製の御狐燈篭を使って、湯温の調整をおこなっていた。
金髪碧眼の渡辺蓮は、とっても綺麗だった。180センチくらいの背丈で、体格が良く、鍛え上げられているけど、豊かな胸乳に包まれるように抱かれていた。こっちの世界では、まだ数え12な俺は、120センチくらいで、翻弄されるみたいに、蓮の手で洗われてしまった。
二人には、広すぎるくらいの湯船につかっていると、蓮の姿は、本当に綺麗だった。
「綺麗だなぁ」
「ほほぉ、長慶の前世は、妾《わらは》のような女が好きであったのか」
「えっと、好きっていうか、前世だと様々な国から人が訪れていて、色んな肌の色や髪の色の人が歩いていたから」
「そうか、珍しゅぅは無いか」
「うん。たくさんって程じゃないけど、結構多かったよ。でも、蓮くらいに綺麗な女は、初めてだよ」
「嬉しいことを言ってくれるのぉ、じゃが、流石にじろじろ見られるのは恥ずかしいものじゃ」
蓮は、背中から抱きしめるように、俺を抱き寄せてきた。背中に大きな胸乳があたって、滾って来る感じが、今度は俺が非常に恥ずかしかった。
「ほんに、身体は幼いというのに、滾りが凄いモノじゃ。そこらの男では敵わぬものよ」
本来、渡辺惣官家は、難波斎宮院司家として、斎宮院に組み入れられる。祭祀が終わり、斎宮の任を離れ、女性の成人式である裳着の儀を経て、司家の精を受けて、次代の斎宮院を育むというのが、難波斎宮院の勤めであった。
渡辺惣官家の当主が女性の場合は、斎宮院の司家から選ばれた司が、蓮に仕えて、蓮との間に子を為すという。司家にしても、斎宮院にしても、時折、主上から内親王を迎え、親王を司に迎えることすら幾度かあったのである。特に、渡辺惣官家の当主が、女性の場合は、親王の司が下向することが多かったのである。蓮までに、二代女性当主が居て、二人とも親王の司を迎えて、斎宮院の血を繋いでいた。これは、三斎宮家どこも同じであり、宮家の中でも、非常に高い格式を持っていたのである。
三人目となる、蓮にも裳着を迎えた後、主上の末弟を、親王の司として迎えていて、睦合ったそうだが、大柄な金髪碧眼の蓮をあまり好まれていなかったらしい、蓮とは子が為せなかったそうだ。斎宮院の司として、裳着を終えた、斎宮との間に、斎宮補や司が生まれたことで、今は難波斎院に住んでいるそうだ。
「宮を嫌ってはおらぬし、宮も慈しんでくれるし、妾《わらは》を嫌ってはおらぬようじゃ。祥月の挨拶では、変わらずに慈しんでくれるしな」
「そ、そうなんだ」
「長慶。他の男に抱かれる女は嫌か」
「え。俺は、蓮の夫なんだよね」
「そうじゃ、妾《わらは》にとっては、大切な夫じゃ」
そのままギュッと抱きしめられてしまう。
阿波三好から、畿内に出た、父三好元長は、和泉の守護職、摂津と河内の守護代となり、摂津守を名乗るようになって、芥川に城を構えていた。難波の渡辺党は、和泉の松浦党と共に、三好元長に仕え、淡路を抑えることで、大阪湾を中心とする瀬戸内の東側を抑えたのである。応仁から始まる、足利将軍家の跡目争いは、様々な思惑が絡んで、激化の一途を辿って、戦国の世を生み出していた。
父元長も、そんな戦国に翻弄されるように、山科に本拠を持つ本願寺に裏切られ、攻撃を受けて殺された。理由のひとつには、父元長が、真宗高田派であったことに端を発する、宗教戦争であった。真宗高田派は、父元長が殺されたことに怒り、山科本願寺を襲撃し、ことごとく焼き払ったのである。なんだか、仇討ちの相手を、別の仇が討ってしまった感じだった。
風呂に入って、上がると厠が隣だと言うので行ったら、白漆喰で固定された陶器の溝に常時水が流れる、水流式の厠になっていた。サイカチ粉や灰も備えてあって、かなり清潔な造りになっていた。阿波三好の肥溜めに移すための、汲み取り式の厠に慣れていた俺は、衝撃を受けていた。
「すごいな、上下水道完備だ」
「なんじゃ、長慶、じょうげすいどうというのは」
「えっと、飲み水とかを上水、屎尿を流すのを下水って言うけど」
「ほぉ、清水を受けて、厠水に流すを、そう言うのかや」
「うん。でも、渡辺の家祖も知ってたと思うよ」
「そうか、ただ、家祖はあまり自分のことは書いておらぬ。葛葉様であれば、少しは知っておろうが、話が長くて苦手じゃ」
「話が長いって」
「家祖の話を始めると、止まらぬのじゃ。一晩中のろけを聞かされることもあったぞ」
「それは、きついかも」
蓮の祖先、渡辺党家祖は、渡辺綱。大江山の鬼退治くらいしか知らないけど、この世界の渡辺綱は、日ノ本であやかしを何人も嫁にした、武家の頭領として知られている。前世を記憶に持つ、胡蝶者として、子孫に伝えられたそうだ。
胡蝶は、漢詩の胡蝶之夢に語られる、夢で蝶になった男の噺だ。前世の記憶という形で、この世界では伝わっているらしい。
家祖は、この世界に、風呂の習慣を持ち込んでいた。阿波三好でも、狸炎を使うあやかし、金毘羅狸衆が居て、湯屋を造っていた。京洛や難波の町には、稲荷狐が湯女狐を勤める、杜湯が幾つか造られていて、一回六文銭で使えるらしい。
考えてみれば、狐火や狸炎のように、あやかしが炎を使えるから、冬場の暖房には阿波三好でも、「手持燈籠」が使われていた。湯屋御厨を作れる家であれば、薪や炭の消費は、少なくなるはずだった。
阿波三好でも、普通に「狸炎燈籠」が使われていたのに、普通だと思っていた。考えてみれば、とってもエコである。ただ、狐火や狸炎では、鬼火と異なり、火力が低いらしく、火力を高めるために、炭を一緒に使っていたので、気づかなかった。
湯船も結構広くて、3メートル幅に、長さ6メートルの湯船に、蓮と入っていた。湯女狐が二人で、鋳鉄製の御狐燈篭を使って、湯温の調整をおこなっていた。
金髪碧眼の渡辺蓮は、とっても綺麗だった。180センチくらいの背丈で、体格が良く、鍛え上げられているけど、豊かな胸乳に包まれるように抱かれていた。こっちの世界では、まだ数え12な俺は、120センチくらいで、翻弄されるみたいに、蓮の手で洗われてしまった。
二人には、広すぎるくらいの湯船につかっていると、蓮の姿は、本当に綺麗だった。
「綺麗だなぁ」
「ほほぉ、長慶の前世は、妾《わらは》のような女が好きであったのか」
「えっと、好きっていうか、前世だと様々な国から人が訪れていて、色んな肌の色や髪の色の人が歩いていたから」
「そうか、珍しゅぅは無いか」
「うん。たくさんって程じゃないけど、結構多かったよ。でも、蓮くらいに綺麗な女は、初めてだよ」
「嬉しいことを言ってくれるのぉ、じゃが、流石にじろじろ見られるのは恥ずかしいものじゃ」
蓮は、背中から抱きしめるように、俺を抱き寄せてきた。背中に大きな胸乳があたって、滾って来る感じが、今度は俺が非常に恥ずかしかった。
「ほんに、身体は幼いというのに、滾りが凄いモノじゃ。そこらの男では敵わぬものよ」
本来、渡辺惣官家は、難波斎宮院司家として、斎宮院に組み入れられる。祭祀が終わり、斎宮の任を離れ、女性の成人式である裳着の儀を経て、司家の精を受けて、次代の斎宮院を育むというのが、難波斎宮院の勤めであった。
渡辺惣官家の当主が女性の場合は、斎宮院の司家から選ばれた司が、蓮に仕えて、蓮との間に子を為すという。司家にしても、斎宮院にしても、時折、主上から内親王を迎え、親王を司に迎えることすら幾度かあったのである。特に、渡辺惣官家の当主が、女性の場合は、親王の司が下向することが多かったのである。蓮までに、二代女性当主が居て、二人とも親王の司を迎えて、斎宮院の血を繋いでいた。これは、三斎宮家どこも同じであり、宮家の中でも、非常に高い格式を持っていたのである。
三人目となる、蓮にも裳着を迎えた後、主上の末弟を、親王の司として迎えていて、睦合ったそうだが、大柄な金髪碧眼の蓮をあまり好まれていなかったらしい、蓮とは子が為せなかったそうだ。斎宮院の司として、裳着を終えた、斎宮との間に、斎宮補や司が生まれたことで、今は難波斎院に住んでいるそうだ。
「宮を嫌ってはおらぬし、宮も慈しんでくれるし、妾《わらは》を嫌ってはおらぬようじゃ。祥月の挨拶では、変わらずに慈しんでくれるしな」
「そ、そうなんだ」
「長慶。他の男に抱かれる女は嫌か」
「え。俺は、蓮の夫なんだよね」
「そうじゃ、妾《わらは》にとっては、大切な夫じゃ」
そのままギュッと抱きしめられてしまう。
阿波三好から、畿内に出た、父三好元長は、和泉の守護職、摂津と河内の守護代となり、摂津守を名乗るようになって、芥川に城を構えていた。難波の渡辺党は、和泉の松浦党と共に、三好元長に仕え、淡路を抑えることで、大阪湾を中心とする瀬戸内の東側を抑えたのである。応仁から始まる、足利将軍家の跡目争いは、様々な思惑が絡んで、激化の一途を辿って、戦国の世を生み出していた。
父元長も、そんな戦国に翻弄されるように、山科に本拠を持つ本願寺に裏切られ、攻撃を受けて殺された。理由のひとつには、父元長が、真宗高田派であったことに端を発する、宗教戦争であった。真宗高田派は、父元長が殺されたことに怒り、山科本願寺を襲撃し、ことごとく焼き払ったのである。なんだか、仇討ちの相手を、別の仇が討ってしまった感じだった。
風呂に入って、上がると厠が隣だと言うので行ったら、白漆喰で固定された陶器の溝に常時水が流れる、水流式の厠になっていた。サイカチ粉や灰も備えてあって、かなり清潔な造りになっていた。阿波三好の肥溜めに移すための、汲み取り式の厠に慣れていた俺は、衝撃を受けていた。
「すごいな、上下水道完備だ」
「なんじゃ、長慶、じょうげすいどうというのは」
「えっと、飲み水とかを上水、屎尿を流すのを下水って言うけど」
「ほぉ、清水を受けて、厠水に流すを、そう言うのかや」
「うん。でも、渡辺の家祖も知ってたと思うよ」
「そうか、ただ、家祖はあまり自分のことは書いておらぬ。葛葉様であれば、少しは知っておろうが、話が長くて苦手じゃ」
「話が長いって」
「家祖の話を始めると、止まらぬのじゃ。一晩中のろけを聞かされることもあったぞ」
「それは、きついかも」
蓮の祖先、渡辺党家祖は、渡辺綱。大江山の鬼退治くらいしか知らないけど、この世界の渡辺綱は、日ノ本であやかしを何人も嫁にした、武家の頭領として知られている。前世を記憶に持つ、胡蝶者として、子孫に伝えられたそうだ。
胡蝶は、漢詩の胡蝶之夢に語られる、夢で蝶になった男の噺だ。前世の記憶という形で、この世界では伝わっているらしい。
家祖は、この世界に、風呂の習慣を持ち込んでいた。阿波三好でも、狸炎を使うあやかし、金毘羅狸衆が居て、湯屋を造っていた。京洛や難波の町には、稲荷狐が湯女狐を勤める、杜湯が幾つか造られていて、一回六文銭で使えるらしい。
考えてみれば、狐火や狸炎のように、あやかしが炎を使えるから、冬場の暖房には阿波三好でも、「手持燈籠」が使われていた。湯屋御厨を作れる家であれば、薪や炭の消費は、少なくなるはずだった。
阿波三好でも、普通に「狸炎燈籠」が使われていたのに、普通だと思っていた。考えてみれば、とってもエコである。ただ、狐火や狸炎では、鬼火と異なり、火力が低いらしく、火力を高めるために、炭を一緒に使っていたので、気づかなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる