14 / 525
戦国歴史if
宵闇戦国草創異聞 #武士__もののふ__#は、武力による介入をおこなって利益を得る者である
しおりを挟む
難波湊から京洛京橋を中心とした川筋は、様々な縄張りが錯綜する地域であった。
難波湊から大輪田泊や岸和田港までの湾岸地域である。渡辺、和泉松浦、多田、細川、住吉大社、坐摩神社、信太稲荷社といった者達が、縄張りを主張していた。
淀川や大川、寝屋川といった、多くの川が集中する河内水系の湖沼帯である。渡辺、藤原、大内、信太稲荷社、これに新興の「悪党」楠や今里本願寺などが加わっていた。
京洛京橋や巨椋池を中心とした一帯から近江を含めた水系は、京洛町衆を含め、貴族衆、周辺諸豪族や国人、賀茂斎宮、上賀茂、下賀茂、伏見大社、延暦寺といった様々な勢力の利益が錯綜し、最も統制が取りにくい状況となっていた。
水系の武士は、水系を通る船の安全を保障するために、「掠り」と呼ばれる租税行為をおこなっていた。
平安期における荘園制度は、一つの権益に対して、複数の受益者が存在している状況であった。受益者の権利は、職によって規定された。荘園は、私財ではあったが、中央へ税を納めるためのシステムが存在していた。生産現場から、生産された商品を租税の形にして、中央まで流通させるシステムの担い手が職という受益者であり、システムを維持管理する機能として登場したのが、武士なのである。
悪く言えば、武士というものは、権益を持つ受益者から、権益からの利益を「掠めとる」ことを目的として構成された武力集団である。受益者から権益を獲得するために、武力でもって介入する集団という意味でもあった。
陸上であれ、水上であれ、武士の特徴は、受益者から利益を「掠めとる」者を意味していた。
陸上と水上の違いは、物流を維持するための技術水準が異なる点にある。陸上では、技術水準が低くても、モノを運ぶことは可能である。しかしながら、水上は、一定の技術技能が無ければ、目的地までモノを運ぶことができない。
川と海の違いも同じで、技術水準が川は低く、海が高いという違いにある。
武士は、受益者から利益を「掠めとる」ために、武装し武力介入する集団となり、武力介入する場所は、市場や港湾施設、街道、船、田や畑といった生産地、鉱山、水利設備、水産物、それこそありとあらゆる受益者が存在する場所に、武力介入をおこなっていったのである。
網野善彦氏が提唱した、「百姓が、必ずしも農民を意味しない」というのは、重要な視点なのだと思う。
社会が発達するにつれて、田畑や、漁や猟といった直接的な食料確保を生業とする者だけでなく、物を運ぶ仕事をする者、物を加工する者、道具を造る者、道具の材料を造る者、、、非常に多くの生きる手段を用いる者達が生まれていった。
これが本来の意味で言う、百姓の定義なのだと。
水系に住まう者達は、漁業、運搬、塩造り、商業、略奪、食品加工といった仕事を生業とする者達ということになる。
宵闇は、この考え方に基づいて描くこととしている。
ただ、明るい世界だけは無く、略奪を含めた「掠り」を得るための武力介入という視点が、武士には必要となります。現代的な感覚では、任侠映画に代表されるような雰囲気が、本来の武士が持っていた感覚だと推定されるので、描き方はそんな雰囲気を描きたいなぁと思いつつ、それだと理解されにくいのかなぁとも思ったりしています。
参考文献:
著:網野善彦,海と列島の中世,講談社学術文庫
著:黒嶋敏,海の武士団-水軍と海賊のあいだ-,講談社選書メチエ
難波湊から大輪田泊や岸和田港までの湾岸地域である。渡辺、和泉松浦、多田、細川、住吉大社、坐摩神社、信太稲荷社といった者達が、縄張りを主張していた。
淀川や大川、寝屋川といった、多くの川が集中する河内水系の湖沼帯である。渡辺、藤原、大内、信太稲荷社、これに新興の「悪党」楠や今里本願寺などが加わっていた。
京洛京橋や巨椋池を中心とした一帯から近江を含めた水系は、京洛町衆を含め、貴族衆、周辺諸豪族や国人、賀茂斎宮、上賀茂、下賀茂、伏見大社、延暦寺といった様々な勢力の利益が錯綜し、最も統制が取りにくい状況となっていた。
水系の武士は、水系を通る船の安全を保障するために、「掠り」と呼ばれる租税行為をおこなっていた。
平安期における荘園制度は、一つの権益に対して、複数の受益者が存在している状況であった。受益者の権利は、職によって規定された。荘園は、私財ではあったが、中央へ税を納めるためのシステムが存在していた。生産現場から、生産された商品を租税の形にして、中央まで流通させるシステムの担い手が職という受益者であり、システムを維持管理する機能として登場したのが、武士なのである。
悪く言えば、武士というものは、権益を持つ受益者から、権益からの利益を「掠めとる」ことを目的として構成された武力集団である。受益者から権益を獲得するために、武力でもって介入する集団という意味でもあった。
陸上であれ、水上であれ、武士の特徴は、受益者から利益を「掠めとる」者を意味していた。
陸上と水上の違いは、物流を維持するための技術水準が異なる点にある。陸上では、技術水準が低くても、モノを運ぶことは可能である。しかしながら、水上は、一定の技術技能が無ければ、目的地までモノを運ぶことができない。
川と海の違いも同じで、技術水準が川は低く、海が高いという違いにある。
武士は、受益者から利益を「掠めとる」ために、武装し武力介入する集団となり、武力介入する場所は、市場や港湾施設、街道、船、田や畑といった生産地、鉱山、水利設備、水産物、それこそありとあらゆる受益者が存在する場所に、武力介入をおこなっていったのである。
網野善彦氏が提唱した、「百姓が、必ずしも農民を意味しない」というのは、重要な視点なのだと思う。
社会が発達するにつれて、田畑や、漁や猟といった直接的な食料確保を生業とする者だけでなく、物を運ぶ仕事をする者、物を加工する者、道具を造る者、道具の材料を造る者、、、非常に多くの生きる手段を用いる者達が生まれていった。
これが本来の意味で言う、百姓の定義なのだと。
水系に住まう者達は、漁業、運搬、塩造り、商業、略奪、食品加工といった仕事を生業とする者達ということになる。
宵闇は、この考え方に基づいて描くこととしている。
ただ、明るい世界だけは無く、略奪を含めた「掠り」を得るための武力介入という視点が、武士には必要となります。現代的な感覚では、任侠映画に代表されるような雰囲気が、本来の武士が持っていた感覚だと推定されるので、描き方はそんな雰囲気を描きたいなぁと思いつつ、それだと理解されにくいのかなぁとも思ったりしています。
参考文献:
著:網野善彦,海と列島の中世,講談社学術文庫
著:黒嶋敏,海の武士団-水軍と海賊のあいだ-,講談社選書メチエ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる