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綱の庵
頼光が思惑
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渡辺党として、一家を建てるにあたって、土地が摂津国となるため、渡辺党の主人となるのは、源頼光様である。
金時は、頼光様からつけられた寄騎であった。
検非違使庁舎で、頼光様に、太極殿での件、杜屋での件を報告した。
頼光様は、難しい顔をされて、
「葛葉殿が件は、葛葉殿が良ければ、よかろう。だが、金時は許さぬ」
よ、頼光様っ。
頼光様に詰め寄って、
惚れている男と女なれば、何卒っ。
「綱。金時は、そなたの監視でもあるのじゃ。今のそなたは、あやかしにより過ぎておる」
わたしは、そんなことは、
「わかっておるが。それは、この頼光だけのことじゃ、清和源氏が流れ、多田一党からみれば、渡辺党は、一族に連なるが、嵯峨源氏が流れじゃ」
源氏が頭領としては、清和源氏の流れを組む、多田源氏一党からすれば、嵯峨源氏は分家クラスでしかない。その分家クラスが、主家に対抗する家門となるのは、問題であった。
「綱。一度、金時を儂に預けろ。我が猶子として、保昌の娘御に婿となれば良い」
つまりは、金時は、頼光が猶子となると。
「綱。儂は、そなたの初陣を葛城としたのを後悔しておる」
頼光様。
「颯の父は、この儂じゃ」
なっ。頼光様っ
「つまりは颯の夫であるそなたは、儂の婿でもある」
頼光様、、、
居住まいを糺して、頼光に向かい会う。
「どうした、綱。そんな、かしこまって」
何故に、葛城征伐を引き受けられたのですか。
あの隠れ里は、滅びの里であった。
「頼まれたのよ、葛城が長風にな」
頼まれた。
「確かに葛城は、滅びの里じゃ。おそらくは、ほっておいても、二百年もすれば里は残るまい」
頼光が言葉は、事実であったのだろう。土蜘蛛は、長生きする方とは行っても、百歳を超えることはほとんどない。
しかし、それならば、待って居ても、
「それでは、葛城一族のことを誰からも忘れられてしまうとな」
それは、
「滅びを待って、忘れ去れては、里を離れた葛城は、あやかしとしての衆を喪い、個々に滅びを迎えることとなる。それを避けたいとな」
里が滅びなければ、新たな里を拓くことができない。
「そなたの庵にせよ、桂川のカワラモノにしても、葛城を名乗っておるであろう」
は、はい。颯を若長として、葛城の土蜘蛛が流れと、
「それで良い。葛城はな、綱よ。かつて主上に従いて、上人の教えに従って薬樹を拓いた一族でもあった」
ならば、征伐とするはおかしいのではありませんか、
「権を巡る戦で敗れ、逆賊とされ、まつろわぬ民となったのだ」
それが、カワラモノなのですか
「はっはっは、綱。権に敗れ滅びた一族が、葛城だけと思うか」
いえ、
「カワラモノすべてが、葛城ではないが、桂川の者たちは、自分達を葛城と名乗ることで、颯が下へ集った」
頼光様、それは“まつろわぬもの”を民にするということですか、
「渡辺党が家人なれば、“まつろわぬもの”ではあるまい」
渡辺党は、嵯峨源氏が流れ綱が率いる一家です。主上に逆らうことはありません。
日本という国は、非常に多くの民が生きる国であり、戦に敗れ亡命した百済王を始めとして、彼の国を追われた人やあやかしが住まう国でもあった。
「のぉ、綱。儂は、かつて、一人のあやかしが姫に救われた」
救われた、、、
「そうじゃ。祟り神に襲われた太極殿で、主上を護れなんだ。主上を守ったのは、一人のあやかしであった」
それが、鷺姫。
五位を主上から賜り、女御となった。
「主上を愛し、死して尚、愛し抜いた姫であった」
延喜の格式に、追補が生まれたは、その後。鷺姫の菩提へ捧げた格式。
「人を母とすれば人、あやかしを母とすれば、あやかし」
頼光様、、、
頼光様から少し、涙上が溢れていた。
「あやかしはな、そなたに夢を見ておる」
夢ですか、、、
「あやかしが追われることなく暮らせる現世の夢じゃ」
それは、夢じゃありません。この綱と渡辺が血族、必ずや成し遂げましょう。
「綱。渡辺が血族、すべてを捧げる夢か」
はい、頼光様。一代でなせねば、二代、血が繋がり、夢を追い求める限りに、夢は現世となりましょう。
「晴明は、表立って動けなかろうが、彼の子等もまた追い求めることとなろう」
頼光様。この綱は、権を求めません。それは、道長殿や頼光様にお任せします。ただ、好きになった女と一家一門と共に暮らせることを望みます。
「そうか、、、ところで、綱。颯には、文を送ってある」
突然、頼光様が、話を変えた。
へっ、なんでしょうか、
「綱が、頼りにならねば、いつでも多田へ参れ。颯が子に一家を持たせるとな」
そ、それは、
「精進せぃッ、綱。今は、颯が婿は、その方じゃ」
は、はいッ
居住まいを、さらに糺すように、かしこまった、俺に、頼光様は、
「綱が、自分を見失うようなことがあれば、この頼光が斬って捨てるッ、良いな」
は、ははぁッ
平伏して、頼光様の命を受けた。
「明日は、秋の耳目じゃ。心して受けるが良い」
はッ。
講談師、見て来たように嘘を吐くでありますが、真実があっての嘘であります。
秋の耳目にて、渡辺綱は、坂田金時と共に、正八位の検非違使大志と共に、武家の名誉職である、主上が住まう内裏の警護を担当する、滝口の武士となったのでありました。
源頼光は、従五位の蔵人の検非違使佐となり、晴れて貴族の中の貴族である殿上人となったのでありました。碓井貞光は、頼光の跡として、検非違使従六位蔵人大尉となった。玉藻様と結ばれた、卜部季武は、検非違使を外れ、伏見差配の斎宮寮従八位大属として伏見に入った。
金時は、頼光様からつけられた寄騎であった。
検非違使庁舎で、頼光様に、太極殿での件、杜屋での件を報告した。
頼光様は、難しい顔をされて、
「葛葉殿が件は、葛葉殿が良ければ、よかろう。だが、金時は許さぬ」
よ、頼光様っ。
頼光様に詰め寄って、
惚れている男と女なれば、何卒っ。
「綱。金時は、そなたの監視でもあるのじゃ。今のそなたは、あやかしにより過ぎておる」
わたしは、そんなことは、
「わかっておるが。それは、この頼光だけのことじゃ、清和源氏が流れ、多田一党からみれば、渡辺党は、一族に連なるが、嵯峨源氏が流れじゃ」
源氏が頭領としては、清和源氏の流れを組む、多田源氏一党からすれば、嵯峨源氏は分家クラスでしかない。その分家クラスが、主家に対抗する家門となるのは、問題であった。
「綱。一度、金時を儂に預けろ。我が猶子として、保昌の娘御に婿となれば良い」
つまりは、金時は、頼光が猶子となると。
「綱。儂は、そなたの初陣を葛城としたのを後悔しておる」
頼光様。
「颯の父は、この儂じゃ」
なっ。頼光様っ
「つまりは颯の夫であるそなたは、儂の婿でもある」
頼光様、、、
居住まいを糺して、頼光に向かい会う。
「どうした、綱。そんな、かしこまって」
何故に、葛城征伐を引き受けられたのですか。
あの隠れ里は、滅びの里であった。
「頼まれたのよ、葛城が長風にな」
頼まれた。
「確かに葛城は、滅びの里じゃ。おそらくは、ほっておいても、二百年もすれば里は残るまい」
頼光が言葉は、事実であったのだろう。土蜘蛛は、長生きする方とは行っても、百歳を超えることはほとんどない。
しかし、それならば、待って居ても、
「それでは、葛城一族のことを誰からも忘れられてしまうとな」
それは、
「滅びを待って、忘れ去れては、里を離れた葛城は、あやかしとしての衆を喪い、個々に滅びを迎えることとなる。それを避けたいとな」
里が滅びなければ、新たな里を拓くことができない。
「そなたの庵にせよ、桂川のカワラモノにしても、葛城を名乗っておるであろう」
は、はい。颯を若長として、葛城の土蜘蛛が流れと、
「それで良い。葛城はな、綱よ。かつて主上に従いて、上人の教えに従って薬樹を拓いた一族でもあった」
ならば、征伐とするはおかしいのではありませんか、
「権を巡る戦で敗れ、逆賊とされ、まつろわぬ民となったのだ」
それが、カワラモノなのですか
「はっはっは、綱。権に敗れ滅びた一族が、葛城だけと思うか」
いえ、
「カワラモノすべてが、葛城ではないが、桂川の者たちは、自分達を葛城と名乗ることで、颯が下へ集った」
頼光様、それは“まつろわぬもの”を民にするということですか、
「渡辺党が家人なれば、“まつろわぬもの”ではあるまい」
渡辺党は、嵯峨源氏が流れ綱が率いる一家です。主上に逆らうことはありません。
日本という国は、非常に多くの民が生きる国であり、戦に敗れ亡命した百済王を始めとして、彼の国を追われた人やあやかしが住まう国でもあった。
「のぉ、綱。儂は、かつて、一人のあやかしが姫に救われた」
救われた、、、
「そうじゃ。祟り神に襲われた太極殿で、主上を護れなんだ。主上を守ったのは、一人のあやかしであった」
それが、鷺姫。
五位を主上から賜り、女御となった。
「主上を愛し、死して尚、愛し抜いた姫であった」
延喜の格式に、追補が生まれたは、その後。鷺姫の菩提へ捧げた格式。
「人を母とすれば人、あやかしを母とすれば、あやかし」
頼光様、、、
頼光様から少し、涙上が溢れていた。
「あやかしはな、そなたに夢を見ておる」
夢ですか、、、
「あやかしが追われることなく暮らせる現世の夢じゃ」
それは、夢じゃありません。この綱と渡辺が血族、必ずや成し遂げましょう。
「綱。渡辺が血族、すべてを捧げる夢か」
はい、頼光様。一代でなせねば、二代、血が繋がり、夢を追い求める限りに、夢は現世となりましょう。
「晴明は、表立って動けなかろうが、彼の子等もまた追い求めることとなろう」
頼光様。この綱は、権を求めません。それは、道長殿や頼光様にお任せします。ただ、好きになった女と一家一門と共に暮らせることを望みます。
「そうか、、、ところで、綱。颯には、文を送ってある」
突然、頼光様が、話を変えた。
へっ、なんでしょうか、
「綱が、頼りにならねば、いつでも多田へ参れ。颯が子に一家を持たせるとな」
そ、それは、
「精進せぃッ、綱。今は、颯が婿は、その方じゃ」
は、はいッ
居住まいを、さらに糺すように、かしこまった、俺に、頼光様は、
「綱が、自分を見失うようなことがあれば、この頼光が斬って捨てるッ、良いな」
は、ははぁッ
平伏して、頼光様の命を受けた。
「明日は、秋の耳目じゃ。心して受けるが良い」
はッ。
講談師、見て来たように嘘を吐くでありますが、真実があっての嘘であります。
秋の耳目にて、渡辺綱は、坂田金時と共に、正八位の検非違使大志と共に、武家の名誉職である、主上が住まう内裏の警護を担当する、滝口の武士となったのでありました。
源頼光は、従五位の蔵人の検非違使佐となり、晴れて貴族の中の貴族である殿上人となったのでありました。碓井貞光は、頼光の跡として、検非違使従六位蔵人大尉となった。玉藻様と結ばれた、卜部季武は、検非違使を外れ、伏見差配の斎宮寮従八位大属として伏見に入った。
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