百々五十六の小問集合

百々 五十六

文字の大きさ
74 / 652
世界の半分を貰った勇者

第一話 魔王が世界を征服した

しおりを挟む
人類は物事を二つに分けたがる。
犬派か猫派か
攻めだ受けだ
文系とか理系とか
右だ左だ
タケノコなのかキノコなのか
俺か俺以外か

だから俺も二つに分けたかった。
そしてその二つの片翼を担いたかっただけなんだ。



俺は今、机の上に並べられた神のタワーを見て絶望している。



―――――――――――――



俺は勇者のサティー。
数年前まではしがない村人だった俺だが、協会に突如勇者と認定されて、魔王を討伐するたびに生かされた。
たくさんの仲間と協力して、俺たちは、謁見の間まで魔王を追い詰めたのだ。
しかし、俺はそこで魔王がした提案に乗ってしまった。
魔王が言った「俺が世界を征服した暁には世界の半分をくれてやろう。具体的には今の人類の生存圏のあたりを丸々くれてやろう」という言葉に乗ってしまった。
俺は苦しかった魔王討伐の旅を終え、魔王軍に客人として迎え入れられた。
もちろん仲間たちも一緒に迎え入れられた。
仲間たちも、世界の半分を一緒にもらいたいと言ってついてきたのだ。
それからは贅沢三昧の日々だった。
人間の生存圏では食べられなかったような絶品の料理が毎食出てきた。
俺たちはどうやら、人間の王様よりも豪華な食事にありつけているらしい。
それに魔王は俺たちに特に何か指示するわけでもなく、俺たちは自由気ままに過ごした。
ここ何年かの辛い日々を巻き返すかのごとく連日はっちゃけて過ごした。
魔王側の人に言えばいくらでもお小遣いをもらった。
従軍の命令をされて同族同士で殺し合いをする展開なども特になかった。
それに、魔王を討伐するために、散々魔族を殺してきてしまった俺たちを魔族の人たちは本当にやさしく受け入れてくれた。
差別されるわけでもなく、罵詈雑言を浴びせられるわけでもなく、ただただ気の合うやつらを見つけて肩を組んで酒を飲んだ。
そんな好待遇で迎え入れられた俺たちは、魔王軍の人類振興には直接的には加担せずに過ごした。
そして、魔王と対峙してから3年後である今年、ついに魔王が完全にこの世界を掌握した。
つい先月、最後の人間の国である正教国コースキーが滅ぼされたのだ。
最後に滅んだ国が俺たちを魔王討伐の旅に旅立たせた正教国コースキーだと知った時は考え深いものがあった。はじまりの地が人間にとっての終わりの地となったことにじんと来たものだ。



そして、世界征服の祝賀パーティが終わった今日、俺たち勇者パーティーは魔王城に呼び出された。
これが俺たちに出された最初の指示だった。それくらい俺たちは、ここ三年自由に過ごしていたのだ。
魔王城に登城し、謁見の間で再び俺たちは正装で対峙した。
特にひざまずくこともない。
なぜならば俺たちの方が魔王よりも強いからだ。
直接戦ったことはないが、絶対に俺たちの方が強い。
何故かというと、俺たちと初めて対峙した魔王は腰が引けていて、ぶるぶると震えて怯えていたのだ。
多分この魔王は、頭脳型だと思う。
そんな適当なことを考えていたら、全員が謁見の間にそろったようだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...