キメラスキルオンライン

百々 五十六

文字の大きさ
94 / 121
1章 スタートダッシュ

ネギ牛丼大盛りネギトッピング ※リアルの短めの話 読み飛ばし可

しおりを挟む
 視界が切り替わる。
 いつものVRカプセルの中だな。
 VRカプセル内の機械っぽさをみて、現実に戻ってきたと思った。
 そんなことを考えているうちに、VRカプセルが開かれた。
 いつもの天井。
 毎度同じことを思いながら、体を起こす。
 VRカプセルから出ると、とりあえず体をほぐす。
 最新技術で長時間VRカプセルの中に入っていても体が凝らないようになっているらしいが、つい体をほぐしてしまうな。
 そうやって柔軟体操をしていると腹が鳴った。

 ぐぅうう

 体が腹が減ったと言っているようだ。
 誰にも聞かれていないと分かっていても、少しだけ恥ずかしいな。
 そんなことを考えながらつぶやいた。

「飯食べなきゃなぁ」

 ご飯かぁ。
 どうしようかな。
 とりあえず、食べるのは決定事項だな。
 前の食事から、12時間以上空いているからな。
 どうしようかな。
 何を食べようかな。

「昼も近いしな」

 朝食だけじゃなくて、ブランチとして食べるのも良いかもしれないな。
 またログアウトしてくるのも面倒くさいし。
 まぁ、まずは何を食べるかを決めてからだよな。

「何食べようかな」

 冷蔵庫の中身って何かあったかな。
 いや、ちょうどからになったんだった。
 俺は、どちらかというと、中身が空になってから買いに行くスタイルだから、たまにこういうことがあるんだよな。
 そうなると、何かパパッと作って食べるというのは無しだな。

「冷蔵庫の中は、ほとんど空だったな」

 じゃあ、冷蔵庫の方に入っている冷凍の弁当を食べようかな。
 あれはまだまだ入っているはずだし。
 でもなぁ、昨日もあれを食べたんだよな。
 なるべく間を開けながら食べたいんだよな。
 飽きないためにも。

「冷凍庫には、冷凍の弁当があったな」

 そうなってくると、やっぱり何か作るってことになっていくのかな。
 でもなぁ、そうなると、買い出しに行かないといけないんだよな。
 スーパーに食材を買いに行かないと何だよな。

「何か作るなら、スーパーに買い出しに行かないとだな」

 それ以外の手段だと、外食があるな。
 外食か。
 外食かぁ。
 最近していないな。
 と言うか、今月は、外食していないんじゃないかな。
 スーパーへの買い出し以外家にこもりっぱなしだったし。
 久ビリに外食っていうのも有だな。
 なんかピンときたし。

「後は、外食という手もあるな」

 とりあえず、候補を3つ出せたな。
 ここからどうやって絞っていくのかが問題だけどな。

「冷凍庫の弁当を食べるのか、スーパーに買い出しに行った後自分で作るのか、外食をするのか」

「選択肢はこの3つだな」

 どれが良いだろうか。
 うーん、かなり悩む。
 食べるのは好きだけど、食べることにそこまでの興味と関心がないんだよな。
 だから、こういうときに悩んじゃうんだよな。
 低いところで並んでしまうから。
 俺は顎に手を当てて考える。

「どれにしようかな」

 ピンときたし、外食にするか。
 こういうときは、直感に頼るに限るんだよな。
 結局どれでもいいのだから。
 俺は、胸を張って言った。

「最近、外食に行っていないし、外で食べてくるか」

 外に出るのか。
 そうなると、今の服装だとダメだな。
 今の服装は完全な寝間着だからな。
 そう思いながら言った。

「よし、じゃあ着替えるか」

 俺はパパッと適当に選んだ服に着替えて家を出た。
 2度3度と鍵をかけたことを確認した後に、俺は、近所の牛丼屋に向かって歩き出した。
 外食と行ったら、牛丼屋。
 なんとなく、そんな気分だったので、遠くまで行かずに牛丼屋に行くことにした。
 チェーン店の牛丼屋は良いよな。
 すぐに出てくるし、味も一定だし。
 まぁ、ここら辺は、あまり飲食店がないから、ちょうど良いのが牛丼屋ぐらいしかないんだよな。
 朝からパンケーキとか、インドカレーはさすがにキツいもんな。
 そう思っているうちに牛丼屋にたどり着いた。
 ドアを押して、店に入る。
 入り口に近い位置にいた店員が言った。

「いらっしゃいませ」

 それに続いて店内の店員が声をそろえて言った。

「「「「いらっしゃいませ」」」」

 あぁ、いつもの牛丼屋だな。
 ここの牛丼屋、挨拶だけはラーメン屋並みにしっかりしているんだよな。
 それが面白くて通っている面もあるんだよな。
 最近はいけてなかったけど。
 挨拶を聞いて、牛丼屋に来たなぁと感じていると、店員さんが言った。

「1名様ですか?」

 俺は首を縦に振りながら答えた。

「はい」

 店員さんは、カウンター席を指して言った。

「そちらのカウンター席にどうぞ」

「はい」

 俺はそう返事をした後、すぐにカウンター席に向かった。
 いつまでも入り口にいては、入ってくる人にも出て行く人にも迷惑をかけるからな。
 俺は、席に着き、ホッと一息ついていると、店員さんが言った。

「注文が決まりになりましたら、お声がけください」

「はい」

 俺は、気の抜けた声で返事をした。
 今日はどんなメニューかな。
 そう思いながら、メニューを開く。
 期間限定メニューもやっているのか。
 今回は止めておこうかな。
 久しぶりの、牛丼屋だし、いつもの一番好きなやつから入ろうかな。
 俺は、パパッと注文を決めて言った。

「注文お願いします」

 店員さんは、ささっと駆けつけて言った。

「ご注文ですね。今お伺いします」

 俺は、メニューを見ながら注文をした。

「ネギ牛丼の大盛りネギトッピングを1つください。以上です」

「ネギ牛丼大盛りネギトッピングを1つですね」

 店員さんは、すらすらとそう繰り返すと下がっていった。
 あの店員さんは、前も見たことがあるな。
 1ヶ月前から変わっていないんだろうな。
 平日朝の微妙な時間からこうやって牛丼を食べるのはかなり贅沢だな。
 学校に行っていたり、会社に行っていたりしたら出来ない贅沢だよな。
 なんとなく、前よりも物事をポジティブに捉えられるようになってきた気がするな。
 俺も少しずつ変われているのかもな。
 そんなことを考えていると、ネギ牛丼大盛りネギトッピングが運ばれてきた。

「こちらネギ牛丼大盛りネギトッピングになります」

 牛丼をおくと、店員さんは去って行った。
 俺は、店員さんの背中を見送った後、牛丼と向き合う。
 俺は両手を合わせて言った。

「いただきます」

「うまっ」

 俺は、それから夢中で牛丼をかき込んだ。
 やっぱりこれがうまいんだよな。
 これが、ゲームの中で食べられないかな。
 そうしたら、ずっとこれを食べているかもしれないな。
 そんなことを思っているうちに、ネギ牛丼を完食した。
 俺は、空になったどんぶりを見ながら両手を合わせて言った。

「ご馳走様でした」

 俺は、伝票をもって、レジに向かった。
 伝票を渡すと、店員さんが言った。

「ネギ中丼が1点で、684円になります」

「ギ、゛うぅ゛ん」

 危なかった。
 無意識に「ギルドカードで」と言いそうになった。
 ギリギリ咳払いでごまかすことが出来た。
 危ない危ない。
 キメラスキルオンラインに慣れすぎて、全ての会計をギルドカードでの決済にしようとしていた。
 俺は、冷静になって改めて言った。

「カードでお願いします」

「カードですね、こちらにタッチお願いします」

 俺は自分のクレジットカードをタッチさせる。
 ふぅ、なんとか普通に決済することが出来た。
 危ない危ない。
 これは、ゲームの弊害だな。
 気をつけていかないといけないな。

「レシートになります」

 俺は、ヒヤヒヤしながら、レシートを受け取った。
 レシートを受け取ると、俺は店の出口に向かう。
 俺が店を出ようとしたところで店員の1人が言った。

「ありがとうございました」

 それに合わせて、他の店員も一斉に言った。

「「「「ありがとうございました」」」」

 牛丼屋なのに、こういうところは、牛丼屋らしくないんだよな。
 そう思いながら俺は外に出た。
 俺は、スマホで時刻を確認した。
 まだ、ログアウトから40分しか経っていないのか。
 体力回復の2時間までまだまだ時間があるな。

「まだ40分ぐらいしか経っていないのか」

 2時間外にいないといけない訳じゃないけど、時間はあるな。
 どうしようかな。
 家に戻って、キメラスキルオンラインをやろうかな。
 それとも、今の内に外でやっておくべき事を済ませようかな。
 うーん、せっかく着替えて外に来たんだし、買い出しぐらい行っておくか。

「帰り道にスーパーがあるし、そこで買い物していくか」

 俺は、家と牛丼屋の間にあるスーパーへと向かった。
 スーパーに入りとりあえず買い物かごを手に取った。
 この所作もかなり様になってきたんじゃないかな。
 そんなことを思いながらつぶやいた。

「何を買おうかな」

「とりあえずまわるか」

 俺はとりあえずスーパーをいつものようにまわった。
 なんとなく良さげなものをどんどんとかごに入れていく。
 特に、お金とかは気にしていない。
 おいしそうなもの、日持ちのするもの、気になったものをかごに放り込んでいく。
 まぁ、ここは普通のスーパーだから、1人分でこんなことをしていてもそこまでの額にはならないんだよな。
 そう思いながら会計をした。

「合計で3412円になります」

 まぁ、こんなもんだよな。
 いつもぐらいだな。
 俺はカードを手に取って言った。

「カードで」

 今回は、気をつけていたからちゃんと言えた。
 さすがに2回連続で良い間違えをしそうになるなんてことはない。
 さすがに俺はそんなにドジではない。

「こちらにタッチお願いします」

「レシートとクーポンです」

「ありがとうございます」

 俺は、買ったものをマイバッグにつめて、帰路についた。
 スマホで時刻を確認すると、ちょうどいいぐらいの時間になっていた。

「よし、じゃあ、まっすぐ帰るか」

 俺は、マイバッグを片手に、家に向かった。
 この道を歩くのも久しぶりだな。
 そんなことを考えているうちに家に着いた。

「ただいまー」

 当然誰からも返事がない。
 そんなことはわかりきってはいるが、少し寂しさを感じるな。

「冷蔵庫、冷蔵庫」

 俺は、冷蔵庫に向かい、買ってきたものを冷蔵庫に入れていった。
 何個か、こんなの買ったっけというものがあるのもいつも通りだな。
 冷蔵庫に買ってきたものを詰め終えると言った。

「じゃあ、良い感じの時間だし、キメラスキルオンラインの世界に戻るか」

 俺は部屋に戻ってきた。
 そして、VRカプセルの中に入る。
 俺はテンション高く、キメラスキルオンラインを起動した。

「よし、起動!」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キメラスキルオンライン 【設定集】

百々 五十六
SF
キメラスキルオンラインの設定や、構想などを保存しておくための設定集。 設定を考えたなら、それを保存しておく必要がある。 ここはそういう場だ。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

異世界帰りの最強勇者、久しぶりに会ったいじめっ子を泣かせる

枯井戸
ファンタジー
学校でイジメを受けて死んだ〝高橋誠〟は異世界〝カイゼルフィール〟にて転生を果たした。 艱難辛苦、七転八倒、鬼哭啾啾の日々を経てカイゼルフィールの危機を救った誠であったが、事件の元凶であった〝サターン〟が誠の元いた世界へと逃げ果せる。 誠はそれを追って元いた世界へと戻るのだが、そこで待っていたのは自身のトラウマと言うべき存在いじめっ子たちであった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

10秒あれば充分だった

詩森さよ(さよ吉)
ファンタジー
俺、黒瀬透は親友たちと彼女とともに異世界へクラス召喚に遭ってしまった。 どうやら俺たちを利用しようという悪い方の召喚のようだ。 だが彼らは俺たちのステータスを見て……。 小説家になろう、アルファポリス(敬称略)にも掲載。 筆者は体調不良のため、コメントなどを受けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...