キメラスキルオンライン

百々 五十六

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1章 スタートダッシュ

2日目朝睡眠 ダイジェストの夢 ※リアルパートのため読み飛ばし可 ※短め

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「父さん」

「何だ?」

「宝くじ当たった」

「え?」

「え?!」

「いくら当たったんだ?」

「12億」

「12億?!」

「運がよすぎて、明日死ぬかもしれないね」

「そうだな。とりあえずどうしよう」

「どうしよう」

「冷静になったら、その金はお前の金だから、父さんがどうこうすることではないな」

「そうだね」


 目の前の父は、段々とフェードアウトしていった。
 気がつくと、1人、暗闇で俺は立っていた。
 ただ1人ひたすらに悔やむ。

「あの時、宝くじなんかが当たったせいで」

「何でだよ」

「何で、不幸も一緒に連れてくるんだよ……」


 気がつくと、家の玄関にいた。
 目の前には、父と母の姿がある。
 2人とも楽しそうで、釣られてこちらまで楽しくなりそうな雰囲気がある。
 そんな中、なぜここにいるのか分からなくて、ただひたすら戸惑っている俺。

「久しぶりに連休がとれたから、父さん達旅行に行ってくるな」

「父さん……」

「私たちがいない間も、チャンと大学に行くのよ。サボっちゃダメよ」

「母さん……」

「お土産は、いっぱい買ってくるからな」

「ちょ」

「変なもの買わないでくださいね」

「ちょっと」

「じゃあ、行ってくる」

「待って」

「行ってきます」

「まってよ」

 出て行った父と母は、景色ごとフェードアウトしていった。
 また俺は1人になった。
 暗闇にただ俺1人がぽつんと立っている。
 あぁ、なんであのとき、両親を止めなかったんだろう。
 あの時、また会えると信じて疑わなかったんだろう。
 あの時、もっと話しておかなかったんだろう。
 心から後悔しながら言った。



「父さん、母さん、なんで……」

「何で、あの時、俺は、何で……」

「何で……」

「何で……」


 気がつくと、俺は、家の中にいた。
 玄関を出て買い物に行こうとしているタイミングだった。
 ふと外から声が聞こえてきた。
 俺は、扉の前に立ちその言葉を聞いた。

「あそこのうち、両親が旅行中になくなったらしいわよ」

「確か、追突事故なんですって。トラックとの」

「大変よね。子供いたでしょ? その子はどうなったの?」

「その子は、もう成人していたから、誰かに引き取られたとかではないみたいよ。それに、あそこのうちは」

「そうね、あそこのうちは、あまり親戚とうまくいっていなかったみたいよね」

「大変ね」

「大変ね」


 声は景色とともに自然とフェードアウトしていった。
 俺はまた、1人暗い空間に立っていた。
 あのときの怒りがこみ上げてくる。
 あのときの悲しみがこみ上げてくる。
 あのときのむなしさがこみ上げてくる。
 感情を抑えることせず、ただ苦しんだ。

「父さん、母さん、なんで……」

「何で、父さんと母さんなんだよ……」

「何で……」

「何で……」


 気がつくと、俺は大学にいた。
 大学の学食で食事をしてた。
 誰かと一緒に食事を取ることはせず、1人で黙々と。
 すると、少し離れた席から、こちらをチラチラと見ながら話している集団がいた。
 そいつらの声がやけに鮮明に聞こえてくる。

「あいつ、今、親の遺産が入ってきて、めっちゃ金持っているらしいぞ」

「マジ?! じゃあ、なんか誘ってみようぜ」

「それ、あいつに金出させようとしているだろ」

「当たり前だろ。金は、持っている人が出すものだ」

「確かにそうだな。ちょっと声かけてみようぜ」

「親が死んだってなったら、メンタル的に不安定だろうし、案外チョロいかもな」

「そうかもな」


 俺はまた、あの空間に1人で戻ってきていた。
 あのときの怒り、あのときのむなしさ、あのときの感情が鮮明によみがえる。
 精神的に不安定な状態に戻った俺は、気持ちのままに言った。

「あぁ、なんで急にこいつら声をかけてくるんだよ……」

「何で、不幸なやつをさらに不幸にしようとするんだよ」

「何で……」

「何で……」


 気がつくと、俺は、町を歩いていた。
 買い物に行く途中であることがなんとなく分かった。
 俺は、スーパーに向かって歩く。
 その途中で、同じ大学のあいつを見かけてしまった。
 そいつらがすれ違うときに話していた会話がやけに鮮明に最後までやけに正確に聞き取れた。

「あいつ、大学辞めたらしい」

「そうなの? もしかして、俺達のせい?」

「さすがにそれはないだろ」

「そうだよな」

「入った遺産がデカくて、大学とか行かなくても良いぐらいなのかもな」

「そうだな。多分そうに違いない」

「俺達は、善意で声をかけてあげただけだもんな」

「何か責任を取らないといけないようなことをしていないもんな」

「あいつの話はもうやめようぜ。飯がまずくなる」

「そうだな。やめだやめ」


 俺はまた、何もないただくらいだけの空間に戻ってきていた。
 この空間では、自分の体すら存在していないように感じる。
 そんな空間の中で、あのときの感情がよみがえる。
 俺は、感情のままに言った。

「何でそんな他人事なんだよ……」

「おまえらのせいなのに……」

「何で……」

「何で……」


 気がつくと俺は、また、ドアに手をかけた状態になっていた。
 その状態で、やけに鮮明に外の声が聞こえる。
 あぁ、あの人の声だ。
 近所の、あの人の声だ。
 そう思いながら外の会話を聞いた。

「あそこのうち、遺産がすごかったんですって」

「そうなの? それなら少しぐらい分けてほしいわね」

「今のうちに恩を売っておいたら、いいものくれるかもしれないわね」

「そうね。あのうちの子には優しくしておきましょう」

「いっぱいお金があるなら、少しぐらい分けてくれても良いのにね」

「お金はあっても、ケチよね」


 また、何もない空間に戻ってきた。
 ここは一体どこなんだろうと疑うことはない。
 ただ、あのときの感情、あのときの記憶を思い出し、そのときのように怒りをぶつける。
 ぶつける相手もいない中で。

「何でそんなことを言われないとけないんだよ……」

「何で、人の金を狙うんだよ……」

「何で……」

「何で……」


 気がつくと、俺は家の前にいた。
 そこで、1人の男に声をかけられた。
 1度親戚の集まりであったことがある程度の面識の男。
 しかも、その集まりで、養親のことを悪く言っていた男だ。
 そいつが、なれなれしく話しかけてきた。

「親戚の××だけど」

「あいつら死んだんだって」

「今大変なんだろ?」

「あいつらの、遺産が入ったんだろ?」

「子供には管理が難しいと思うから、俺が管理してやるよ」

「だから、遺産全部出せ」


 気がつくとまた、戻ってきていた。
 あの何もない空間に。
 あのときの怒りだけをもって。
 俺は、涙を流しながらきれた。
 なぜか分からないが、悔しくて仕方がなかった。
 あの当時以上の気持ちを爆発させて言った。

「誰だよお前」

「人の不幸で金を儲けようとしやがって」

「今まで、うちの両親を苦しめたくせに」

「何で、今になって……」

「何で……」


 気がつくと自室にいた。
 右手にスマホをもって、だらだらとソファに座っている。
 スマホの画面を見て、惰性で買っていた宝くじが当たっていたことを知った。

「なんとなく惰性で買っていた、宝くじが当たった」

「6億」

 あの空間に行かず、この場で、情緒が急に不安定になった。
 あの空間でするような怒りの爆発が、自室で起こった。

「こんな金いらないよ……」

「この運があるなら、なんで、なんで父さんと母さんは……」

「何で……」

「何で……」


 気がつくと、あの何もない空間にいた。
 今のタイミングなのかな。
 俺は、情緒が不安定なままだ。
 ただ、何かに対しての怒りは消え、恨みは消え、寂しさとむなしさだけが残った。
 その状態で、どこかに手を伸ばしながら言った。

「父さん、母さん、いつ帰ってくるの?」

「何で? 何でまだ帰ってこないの?」

「いつ帰れるの?」

「何で?」

「何で?」
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