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第二十六話
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「明日には、この町を出発する。荷造りをしておいてくれないかな。場所は君の故郷だ。」
「え!?ということは、妖精の草原ですか!?」
「うん。長老に話がある。」
妖精の長老。
オードの中の記憶に在る、穏やかな笑みを浮かべる老人。
その人物には、遥か昔に一度謁見して以来だった。
その後。……これほど会わずにいられるとも思わなかったが。
「?どうした?」
長老の名を口にした瞬間に、セロは顔面を蒼白にしてしまった。そんな様子に、オードは気遣わしげな視線を向ける。
「長老…。長様は、今、病で臥せっているんです…。」
「え?」
「私は、長様を救うために妖精術を習いにここまできたんです。」
オードはカイルに視線を向けた。
カイルもまた、妖精の草原のことは管轄外だったらしく、青い顔色をしてセロの言葉を待っていた。
「長様は、私の育ての親で…。私のことをずっとかばってくれた大切な人だったんです。でも…倒れてしまって…。」
妖精術士を必死になって探した。
だが、妖精王に異変が起きて以来、妖精術士は王都で国自体を守ることに必死になっており、頼ることができなかった。
やっと見つけたのがオードだった。
「長老の病気を治すために、君はここまできたのか?」
黙って頷くセロ。その様子を見て、深く息をついた後、オードは険しい表情をして、カイルを見た。
「長老が倒れたとなれば、国がどんなに危機的な状況にあっても、王都から妖精術士が派遣されるはずだろう?彼には生きていてもらわなければ困るのだから。」
「えぇ。その通りです。でも、なぜそのことが伝わってこなかったのか…。」
「長様が、王都に連絡することを拒んだからです。」
倒れた日。
多くの妖精が顔色を変え、王都へ連絡するよう手配する中、苦しみながら長老は言った。「もういいのだ」と。
―――この異変は、もう止められないでしょう。止められる術士は、いなくなってしまった。もし、今助かったとしても死ぬのが少し伸びるだけ。…術士の方々の手を煩わせてはなりません。―――
この言葉に、なぜかセロ以外の妖精全員が納得して、看病はするものの、妖精術士の助けを呼ぼうとはしなかった。長老が倒れて以来、続々と妖精たちが病に伏し、消えていったが、それでも術士を呼ぼうとはしなかったのである。
「だから、私自身が、妖精術を勉強して長様を救おうと思ったんです。私の治療なら、受け入れてくれるのではないかと思ったから…。」
「なるほど。…さすがは妖精。このままだと、世界の終わりが近いということがわかっていたようだね。」
「そうですね。でも、私はまだ終わらせたくありません。どんなことをしても…。」
セロの話に対して、オードとカイルは意外と冷静に対処していた。
そして、カイルの言葉に、オードも深く頷き、それからセロに向き合う。
「まだ長老に息はあるんだね?では、さっそく行って、治してさしあげよう。今全てを放棄して亡くなられてはこまる。」
「兄上、馬をご用意しましょうか?」
「あぁ、とびきりいい馬を頼む。」
うつむいたセロの肩を叩きながら、オードはカイルの言葉に、深く頷いた。
こうなってしまっては、時間がない。すぐにも出発しなければ。
「セロ、すぐに出発するよ。旅の準備をしなさい。」
「え?」
「長老は、必ず俺が助ける。任せてくれ。」
「兄上にかかれば、死出の旅路に出ていようとも連れ戻してくれますよ。それだけの力の持ち主ですから。」
「だから、元気をだして。」と、カイルが優しい笑顔を浮かべて言う。
肩に触れてくる暖かい手の主を見ると、同様に優しい笑顔を浮かべていた。
「ありがとう、ございます。」
セロは、これまでの間、心のどこかで張り詰めていた糸が切れたような気がした。
安堵の心で深く頭を下げ、礼を述べた時、二人の男がどういう表情をしていたのか。
その表情を、セロは見ることができなかった。
「え!?ということは、妖精の草原ですか!?」
「うん。長老に話がある。」
妖精の長老。
オードの中の記憶に在る、穏やかな笑みを浮かべる老人。
その人物には、遥か昔に一度謁見して以来だった。
その後。……これほど会わずにいられるとも思わなかったが。
「?どうした?」
長老の名を口にした瞬間に、セロは顔面を蒼白にしてしまった。そんな様子に、オードは気遣わしげな視線を向ける。
「長老…。長様は、今、病で臥せっているんです…。」
「え?」
「私は、長様を救うために妖精術を習いにここまできたんです。」
オードはカイルに視線を向けた。
カイルもまた、妖精の草原のことは管轄外だったらしく、青い顔色をしてセロの言葉を待っていた。
「長様は、私の育ての親で…。私のことをずっとかばってくれた大切な人だったんです。でも…倒れてしまって…。」
妖精術士を必死になって探した。
だが、妖精王に異変が起きて以来、妖精術士は王都で国自体を守ることに必死になっており、頼ることができなかった。
やっと見つけたのがオードだった。
「長老の病気を治すために、君はここまできたのか?」
黙って頷くセロ。その様子を見て、深く息をついた後、オードは険しい表情をして、カイルを見た。
「長老が倒れたとなれば、国がどんなに危機的な状況にあっても、王都から妖精術士が派遣されるはずだろう?彼には生きていてもらわなければ困るのだから。」
「えぇ。その通りです。でも、なぜそのことが伝わってこなかったのか…。」
「長様が、王都に連絡することを拒んだからです。」
倒れた日。
多くの妖精が顔色を変え、王都へ連絡するよう手配する中、苦しみながら長老は言った。「もういいのだ」と。
―――この異変は、もう止められないでしょう。止められる術士は、いなくなってしまった。もし、今助かったとしても死ぬのが少し伸びるだけ。…術士の方々の手を煩わせてはなりません。―――
この言葉に、なぜかセロ以外の妖精全員が納得して、看病はするものの、妖精術士の助けを呼ぼうとはしなかった。長老が倒れて以来、続々と妖精たちが病に伏し、消えていったが、それでも術士を呼ぼうとはしなかったのである。
「だから、私自身が、妖精術を勉強して長様を救おうと思ったんです。私の治療なら、受け入れてくれるのではないかと思ったから…。」
「なるほど。…さすがは妖精。このままだと、世界の終わりが近いということがわかっていたようだね。」
「そうですね。でも、私はまだ終わらせたくありません。どんなことをしても…。」
セロの話に対して、オードとカイルは意外と冷静に対処していた。
そして、カイルの言葉に、オードも深く頷き、それからセロに向き合う。
「まだ長老に息はあるんだね?では、さっそく行って、治してさしあげよう。今全てを放棄して亡くなられてはこまる。」
「兄上、馬をご用意しましょうか?」
「あぁ、とびきりいい馬を頼む。」
うつむいたセロの肩を叩きながら、オードはカイルの言葉に、深く頷いた。
こうなってしまっては、時間がない。すぐにも出発しなければ。
「セロ、すぐに出発するよ。旅の準備をしなさい。」
「え?」
「長老は、必ず俺が助ける。任せてくれ。」
「兄上にかかれば、死出の旅路に出ていようとも連れ戻してくれますよ。それだけの力の持ち主ですから。」
「だから、元気をだして。」と、カイルが優しい笑顔を浮かべて言う。
肩に触れてくる暖かい手の主を見ると、同様に優しい笑顔を浮かべていた。
「ありがとう、ございます。」
セロは、これまでの間、心のどこかで張り詰めていた糸が切れたような気がした。
安堵の心で深く頭を下げ、礼を述べた時、二人の男がどういう表情をしていたのか。
その表情を、セロは見ることができなかった。
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