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様子の変化

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人間はなんのために生まれてくるのだろう。

ただ意味もなく生まれ、生きて、死んでいく。


私はそんな人生まっぴらゴメンだ。
私は私らしい人生で染め上げたい。

…でも、死にたくないと願ってしまう。


「エリ、おはよ~っ!」
エリ「おはよう、カホ!」


今日もいつも通りの一日が始まっていく。

「朝」とか「時間」とかどこの誰が決めたんだか。
朝の時間もっと増やしてくれれば、もっとゆっくり寝られるのに。



カホ「そうかなぁ~でもそしたらエリ夜更かししちゃうんじゃない?」

エリ「ん……。確かに。でも昼長くしたら授業も延びそうじゃん?それは勘弁だなあ」

「よぉよぉ、二人で何話してんだ?」

エリ「おー、リョータ。リョータこそなに?こんなお昼時に一人で??」

リョータ「うっせぇボッチなんだよどうぞ仲間に入れてくださいっ!」

エリ「くっはっはっ、ばっかでぇー!」

カホ「エリー、笑い方怖いよー。…面白いけど」

リョータ「おまっ、カホまでぇ?!俺に味方はいないわけ!?」


他愛ない、ありふれた日常会話。
口から溢れた言葉は意識してるわけでもなく、次の瞬間には忘れている。


エリ「………痛ッ…」

カホ「うん?どうしたの?」

エリ「いや、なんか最近あたま痛くて…。おかしいなー、いつも昼頃には無くなるんたけど」

リョータ「ふ~ん、もしかしたら調子悪いのかもな。無理すんなよ?」

エリ「ん、ありがと。…まあそんな激痛ってほどじゃない軽めのなんだけど…。」


私とカホとリョータは幼馴染み。ちっさいころからずーっと遊んできて、心から信用できる友達はこの二人だけだ。


…だからこれからも、「ずーっと」この三人の時間が続くんだろーなって思ってた。



エリ「ぁ~っ、部活疲れたなあ…。早くオフロ入ってご飯食べたい」

いつものように、スカートのポケットから家の鍵を取り出す。


エリ「…っあ!」

チャリーン。

エリ「やば、落とした…よっこらしょ」


辺りは暗いけど、玄関についてる明かりで足下は見える暗さ。

光が反射してキラリと光る鍵に手を伸ばした。

エリ「…あれ」

指先がうまく動かせない。

エリ「……??え、何?…」

手が小刻みに震えて、痙攣けいれんのようなものを起こしている。
鍵が上手く握れない。

エリ「んっ…。…っもう!なんなの…!?」

私が玄関前でうんうん格闘していると、不思議な顔をした弟が詰め寄ってきた。

弟「……姉ちゃん、何してんの?」

エリ「え、あ、おかえり。…いやなんか鍵が取れなくて…」

弟「…?…―――ホラ」

横からスッと手をいれ、造作もなく鍵を取った弟。

エリ「あ、ごめん……ありがと…」


「何してんだか」そういった雰囲気で弟は先に家の中へ入っていった。


エリ「……今日は、早めに寝ようかな…。」

普段不自由なく動かせていた手が、いきなり使いづらくなった事へのもどかしさと多少の怒りで、その日はいつもより三時間早く布団に入った。


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