いらない物語(続・最初のものがたり)

ナッツん

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目の前にキラキラした宝石のような
スイーツをどんどん並べていくツバサくん。

こんなに食べられるの?

気持ち悪くなるって!

でもツバサくんは止まらない。
笑顔で、でも夢中で口に運ぶ。

「ねぇ、これもおいしい!
なあな、これ食べてごらんよぉ」

かわいい!

私の事なんて見てないじゃん、
目の前のスイーツしか目に入ってない!
かわいいなぁ。

そうだね、食べるか、
もう、吐いてもいいや。
今は全部忘れよう。

白い皿を持ち店内をチェックした。

南国風の店内は原色の花と、ジャングルをイメージさせる木々で華やかだ。

真ん中にドーンとそびえ立つチョコレートマウンテンには、子ども達が群がってる。

それにしても、スイーツって芸術だな。

フルーツのカット1つとっても、本当、細かくて驚きだ。

すごくキレイ。

それにみんな、幸せそうだ。
笑顔で満たされた顔してる。

すごい力だな。

あ、ツバサくんってスイーツっぽいんだ。

そんな事を考えられるくらい、心が落ち着いてきた。

正気に戻った。

ふと、緑色のムースを見つけた。
丸くかわいい形。
その上にちょこんと、オレンジ色の物が乗ってる。

なんだろ、これ。

「ほうれん草と人参のムースです。
上に乗ってるのは人参で、砂糖とレモン汁で煮てあるんですよ。
少し塩気もあるチーズベースのムースで
新作なんです。いかがですか?」

シェフの格好をしたお兄さんが、
教えてくれた。

「私、甘いの、実は苦手で。
でもこれなら食べられるかもしれない。」

そう言う私に、ニッコリと営業スマイルをしてくれたお兄さんは、お勧めスイーツをたくさんお皿に乗せてくれた。

「これね、甘党の彼女に付き合わされる
彼氏の為に僕が作ったの。
だけど、女の子の方が甘いの苦手って
パターンもあるんだね。
うん、今後は、そういう視点でも考えてみようかな」

そう言われたら断れないから、乗せられるまま皿を持って、席に着いた。

ツバサくんが私の皿を見て驚く。

「なぁな、すごいねぇ。」

うん、食べるよ、今日は!

「いいね、いいね」

ほうれん草と人参のムースは衝撃的だった。

「おいしい!何これ!すごい!」

いい塩加減で、でも甘くて、おいしい。

というか、あのお兄さん神!

乗せてくれたケーキ、みんなおいしい!

ヤバイよ!

心が満たされる。

スイーツって、ツバサくんって神だ。

「ねぇ、決めつけなくて良かったでしょ。」

うんまぁ、決めつけてはないんだけどね。

でも来て良かった。

「あ、ツバサくん、相談って何?
何かあった?」

口いっぱいのケーキを、
必死に飲み込むツバサくん。

全く、かわいいなぁ。

なんか、本当、かわいい。

「ううん、ない、ウソ」

え?

ちょっと待って。
超、かわいいんだけど!

あーツバサくん。

また、あなたを好きになりたいよ。

「なぁなの方にあるんじゃないかなって。
あるでしょ、話したい事?」

言われてドキッとした。

本当に、何か胸に刺さったような
痛みがした。

また勇磨を思い出して、重い気持ちになった。

「ほら、また、そんな顔して。
工藤と何があったの?」

うー。

「なんで、勇磨?」

ニッコリ笑うツバサくん。

でも手は止めない。
もうお皿、ほとんど空じゃん!

おいしいのか、かわいいなぁ。

また心が癒される。

彼女だったら、いつも癒されて、こんなにツライ気持ちには、ならないのかもしれない。

いいなぁ、香澄ちゃん。

「だって、なぁなをそんな顔にさせるのは
工藤だけでしょ。
どうしたの?何があったの?」

そんな屈託のない笑顔で見ないで。
私の中、ドロドロだから。

勇磨を思うとドロドロが溢れるから。

「言ってよ、俺ってそんなに頼りない?
なぁなの力になりたいんだ」

ツバサくん。

だけど言ったら、
ツバサくんだって引くよ、きっと。

私ともう友達でいたくないって思う。

勇磨が私を離したように。

また涙だ。

あーイラつくな、私。

黙って立ち上がったツバサくんが、温かい飲み物を持って来てくれた。

てっきりブラックコーヒーかと思ったら、ホットチョコレートだった。
   
甘っ。

なんだ、コレ。

思わず笑っちゃったじゃん。

もう、ツバサくんって。

本当、また好きになりたい
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