6 / 11
6
しおりを挟む甘すぎるホットチョコレートを、少しずつ飲みながら話し始めた。
不思議、甘すぎなのに、これはこれで癒される。
ツバサくんは、食べる手を止めて聞いてくれた。
「ふーん。よく分かんないや」
また、吹き出しちゃったよ!
なんだよ、自分から話を聞くって言ったのに!
分かんないって。
もうっ
かわいい。
「違うよ、なぁなの言ってる事は分かるよ。
俺も同じ事思った事あるし。
でも、なんで、それがダメなの?」
え?
「だって。重いじゃん。負担じゃん。」
勇磨しかいない私は重荷だ。
「重荷だとダメなの?」
無垢な瞳で見つめるツバサくん。
ダメだよ。
だって、ちょっとの事で訳が分からなくなって、感情的になって、疑って、嫌なこと言って、傷つけて、いじわるして。
逆効果なのも分かってる。
どんどん嫌われてウザがられて
相手にしてもらえないのも分かってる。
なのに、やめられない。
ウザイのやめられない。
きっと私に何もないからだ。
勇磨しかないから。
だから、手に入った幸せを逃したくなくて、
必死であがいて自滅だ。
勇磨だって、きっと嫌だよ、もう。
疲れてる。
だったら私より大人で落ち着いてて、
清楚でかわいくて、優しい山下先生がいいに決まってる。
「それは違うな」
あ、れ。
前もそんな事いってたな、ツバサくん。
また言い切ってる。
「工藤はさ、別に大人の女性が好きって
言ったんじゃないと思うよ。
その先生の事も眼中にはないと思うな。
一般論だよ。俺だって大人の女性って
聞くとちょっとザワつくもん。」
そう言ってちょっと照れる。
ザワつくんだ。
かわいい。
「あとね、わざと、なぁなと反対のこと、
言ったんだと思うよ。」
え?何の意味があって?
もう、ツバサくんの話ってぶっ飛んでる。
「かわいいは、反対じゃないけどね。
でも、そうだな、わざと言ったと思う。
俺だって香澄ちゃんに、同じこと、言っちゃいそうだもん、気を惹きたくて」
ふっ。
そんな解決ある?
全くツバサくんって。
悪意の世界で生きてる私と違うね。
「なぁな、その、先生が、工藤を気に入ってるのはあるかなって思うけど、工藤はなびかないよ、絶対。
なぁなより先に誰かが同じ事しても、好きになったりはしない。
なぁなだから、好きになったんだよ。
もっと言えば、なぁなが工藤のファンクラブにいたとして、初めは拒絶しても、徐々に好きになってたと思う。」
まさか、そんな事。
わざと笑わせてくれてるのかな。
天然だとしたら、
超おもしろい発想なんだけど!
でも、笑う私に構わず続ける。
その内容にまた泣きそうになった。
「なぁなは特別なんだよ。
自信持ちなよ。
工藤しかなくていいじゃん。
自分がなくてもいいじゃん。
俺だってないよ。
余裕あるなんて、変だよ。
それ、好きじゃないんだよ。」
そんな、事ないって。
ないんだよ、ツバサくん。
だって、勇磨。
ツバサくんと2人でいるの、許した。
前はあんなに嫌がったのに。
もう、どうでもいいんだよ、私の事なんて。
勇磨の中で変わっちゃったんだと思う。
目の前で大きなため息をついて、
自分の髪をかきむしるツバサくん。
「はぁ、そうなるよね。
まぁ、そうだよね。
おかしいよね、あの工藤だもんね。
やっぱり、俺じゃダメだな。
本人に聞きなよ。
もう、俺、充分時間稼ぎしたしね。
たぶん、もう来るよ。」
え、それ、どういう?
「あ、ほら、来た!」
ツバサくんが立ち上がって手を振る。
振り返って、入り口に勇磨が立っているのが見えた。
「なんで、ツバサくん。」
慌てた。
だって会いたくない。
今はやだ。
心の準備してから。
「だから、決めつけないの。
ちゃんと話しな。
いいんだよ、わがまま言っても。
押し付けても。
男はさ、嬉しいの。
頼ってくれたら、すごく嬉しいんだよ」
ニッコリ笑うツバサくん。
「でも、勇磨は」
そのまま私の手をぎゅっと握った。
「手、冷たっ」
笑ってからまたぎゅっと握る。
「大丈夫。
あいつは何も変わってないから」
背後に勇磨の気配を感じて、
体が硬直した。
怖い。
「ツバサ、その手、離せ。」
瞬間、ツバサくんは両手をあげて笑う。
「ねぇ、変わってないでしょ。」
「は?何言ってんだ?
お前、次、ナナに触ったら…」
勇磨の言葉を最後まで聞かず、無理やりハイタッチをして
「じゃあ交代ね。あとは2人で仲良くね」
ツバサくんは帰って行った。
「なんだ、アイツ」
状況を飲み込めない私は、黙って勇磨について店を出た。
前を歩く勇磨は何も話さない。
なんで黙ってるんだろう。
何で来てくれたの?
私と話をする為に?
わざわざツバサくんに時間稼ぎまで頼んで
ああ、そうか。
勇磨なら、分かるか。
私が合宿まで乗り込んで騒ぐ事。
先生にあたる事。
先生を、守りた、かっ、た?
ダメだ、涙出そう。
このまま踵を返して逃げたくなる。
怖い。
私、フラれるの、かな。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる