いらない物語(続・最初のものがたり)

ナッツん

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遊歩道の木々に、
ブルーのイルミネーションが
輝いている。

キレイだな。
さっきも見てたんだけど不思議。
同じ景色なのに
勇磨がいると違って見える。

勇磨越しの世界は最強だ!

抱きしめられて体がどんどん温まる。

「ナナ、あったかくなってきた。
不安だと体が冷えるの、何で?
指先もキンキンになってさ、やめて欲しいんだけど。」

冗談っぽく、でも真剣な眼差しで言う。

「え、いや、それはみんなそうなんじゃ?」

首を傾げる勇磨。

「他の奴の事は知らない。
だけど、男はさ、目の前で女の子が冷たーくなってたら温めたくなるの!
だから、ナナはダメ。」

冷たーくって!
何だよ、それ。
勇磨だけでしょ。
というか、さー。
勇磨から離れて、ニヤけてる顔を睨んだ。

「じゃあ、勇磨も、私以外の子がキンキンに冷えてたら温めるわけ?
それを男だからって理由にされたら、納得いかないんだけど!」

私の反論にケラケラと笑う。

「確かに!でも、断言できんな。
雪山で遭難して、死にそうな子とかなら、
話は別だけど。
でも俺はナナだけだな。
ぎゅっとして温めるのはナナだけ。
魔性的な魅力のお姉さんとか?
立ち居振る舞いが素敵な大人の女性とか?」

そこまで言って、片眉を上げて私を見る。

煽ってるんだな、って分かった。

「女子大生とか?先生とか?
俺にメリットがある人だとしても、俺は騙されない。
友好的を装っても心まで持って行かれない。
ナナを超える子なんていない。絶対。」

絶対って。

何故、言い切れる?

ツバサくんみたい。

「ツバサの事は忘れろ!全く。
ナナは俺にとって、最強なんだ。
ナナはさ、俺しかないって、好きって言ってって、俺を腑抜けにするのに、すぐに他の男に持ってかれるし、俺の目の前で他の奴と絡むし、露出の多い服着るしな。
怒る俺をエロイ奴みたいに言う。
なのに頭の中は俺でいっぱいなんだろ。
で、勝手に悩んで別れようとする。
それでいて、こっそり好きでいるんだよね。
もう、俺はさ、そういうのに全部、持ってかれんだよ。
目が離せないの、マジで。
ムカツクんだけど、心配でかわいくて、意地悪したくなって、泣かしたくて、でも笑わせたくて、たまんないんだよ。」

なんだよ、もう。
何の話?
なんか、さっきから、バカップル。

「まぁ、そうだな。
今日の俺たちは、完全に痴話喧嘩を
ダラダラとしてるだけだな。
ドラマなら、え?これ、いる?って回。
でも、ダラダラとイチャイチャしてさ、
どれだけ大切か、好きかって伝え合わないと、俺達また間違えちゃうからさ。」

まぁ、確かに。

私もどんどん、勇磨が好きになる。
昨日より今日。
今日より明日。
もう右肩上がりだ。

いいや、もう、深く考えない。

勇磨の事は勇磨しか分からない。

勝手に想像しない。

そう決めたんだ。

山下先生が必要か決めるのは勇磨。
合宿が必要か決めるのも勇磨。
行って欲しくないと思うのは私。
私のために諦めて欲しくないと思うのも私。

だけど、相手が本当にどう思ってるかは
聞かないと分からない。
勝手に決めつけたらダメなんだ。

私が、勇磨を好き、それだけだ。

それだけが私の真実だ。

「何?またツバサ?」

ふっ。

「ハズレ!」

「じゃあ何?」

目の前のイルミネーションがぼやける。
幸せ過ぎてぼやける。

「なんで、イルミネーションって、冬だけなのかなって。
いつも見たいなぁってさ」

ベンチに深く座り直し、
大きく足を開く勇磨。
優しく笑って両手を広げた。

「ほら、おいで」

ドキドキしたまま、勇磨の前に立つ。

そのまま手を引かれ、
クルッと体勢を変えられる。

勇磨の足の間に入り、
後ろから抱きしめられる形で着地した。

肩を包むように私の前で腕を交差して
自分も私の首元あたりに顔を埋める。

勇磨に包まれる。

密着が、ヤバイってー。

なんだっけ、コレ。

あー、バックハグってヤツ!

でも、暖かい。

ふわふわする。

「こうやって見るものだからだよ。
寒い中、こうやってぎゅっとして見るものなの、知らなかった?」

喋らないでよ、息がかかる!

唇が首にあたるんだよ、バカ!

もう、ドキドキが最高潮で、心臓がどうにかなりそう。

「あれ、ナナちゃん、緊張してんの?
固まってる。かわいい」

ワザと唇があたるように話してる!

バカにした!

もう、普通、こんなの、緊張するじゃん!

なんで、勇磨ってこうなの!

「あれ、今度は怒ってるんだ。忙しいね」

うー。

もう、バカ!

「もう、やだ!離して、バカ!」

「だめ」

バカ!

「そんな理由なら、どんな季節だっていいじゃん、バカ!」

喋んな、バカ勇磨!
うー。

「バカはそっちだな。
夏にこんな事したら、これじゃあ済まなくなる。」

「は?なんで、何?」

またぎゅっとして、そのまま首筋にゆっくりキスをした。

体が硬直する。

何、今の?

「じゃあ夏になったら、またこうして検証してみるか。
お子ちゃまなナナにも分かるよ。」

そう言ってケラケラ笑う。

絶対、悪い事だ!

「だってナナは、コートの上から触るのは嫌なんだもんね。
手袋だって、嫌だろ?
直接、俺に触られたいって、さっき言ってたよね?」

違っ、そんな事言ってないし、
そんな意味じゃないの!

「まぁ、いいじゃん。
ナナは俺しかない。
俺もナナしかない。
だけど、お互いがいたら、最強になる。
それで、いいじゃん。」

確かに、そうだね。
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