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悪魔のささやき②
しおりを挟む今日もツバサくんに会える。
メールを開くと
―おはよう、なぁな。今日も公園で待ってるね―
嬉しい。
でも香澄ちゃんは今、どう思ってるんだろう。
彼氏が他の女の子と会う約束をしてるなんて。
ちょっと心が痛んだけど見ないフリをした。
勇磨を思うと心がチクチクする。
きっと怒るだろうな。
約束、破っちゃったから。
勇磨に会うのが怖かった。
だから、バスケ部が試合で公欠って聞いて安心した。
良かった。
これで安心してツバサくんに会える。
放課後、走って公園に向かった。
まだ来てないや。
アジサイの花の写メを撮った。
雨上がりのアジサイはキレイだな。
「お前はおばあちゃんか」
いきなり声をかけられ振り返ると勇磨だった。
なんで?
ドキっとした。
「勇磨、どうしたの?試合は?」
ニッコリ笑ってピースする。
勝ったんだ!
おめでとう!
「お!サンキュー。で、
おばあちゃんはここで何をしてるの?」
おばあちゃんじゃないし。
「えっと、散歩かな」
私の様子に不審がる。
「ナナ、俺がそんな嘘に気が付かないとでも?」
だよね。
「あの、ちょっと、人と待ち合わせ」
ふーん。とますます不審な目つきになる。
「あ、そう。」
上目遣いに睨みをきかす。
もうダメだと思った時にツバサくんが大きな声で私を呼んだ。
「なぁな!おーい。なぁな、お待たせ」
息を切らして走ってくる。
そんなに走らなくても。
かわいいなぁ。
思わず顔がほころんだ。
そんな私を眉を寄せて見る勇磨。
怖い。
「あれ、工藤もいたんだ。」
勇磨が不機嫌になる。
「いたら悪いのか」
そんな事、言ってないのに。
勇磨ってヤダ、怒りっぽい。
「ううん、別に。これから、なぁなんちに行くんだよ。
あ、工藤があげたピンクの貝殻、大事に飾ってあったよ」
ますます不機嫌になり黙り込む勇磨。
怖い。
なんで怒るんだろう。
家に呼ばない約束はしてない。
だけど何でだろう。
だけど、後ろめたい。
「ツバサの彼女はお前が他の女の部屋に行くのはいいのか?」
そう言って睨む。
「うん、どうかな。なぁなだからいいんじゃないかな。
ねぇ、なぁな」
うん、うん。
そう、いいよ。
「友達だからいいと思う」
私の言葉に勇磨がキレた。
「は?どこに高校生になって友達だからって、
男を部屋にあげる女がいるんだよ。
そんな女は節操がない。俺はそんな女は嫌いだ」
私もキレた。
「私とツバサくんは別なの。
もう中学の時からずっとこうして来てるの。
部屋に上がるのも悩み相談するのも、
ハグするのも自由にしてきてるの。
自由にさせて。勇磨に決めて欲しくない」
勇磨が黙り込む。
傷つけたってそう思った。
何に傷ついたか、それは分からなかったけど、でも今の勇磨は深く傷ついてる。
間に入ったツバサくんが困り果て空気を変えようと必死だ。
「なぁな、怒らないで。
なんかほら、楽しい事とかさ、思い出してよ」
うー。
ツバサくんって。
「ごめん、勇磨。もう行く」
ツバサくんの手首を掴んで引っ張った。
勇磨の目が怖い。
「ナナ、俺との約束、簡単に破るんだな」
ボソっと呟く勇磨。
ズキズキする。
勇磨の目から今は逃れたい。
私のずるい気持ちを見透かされるから。
でも勇磨って何なんだろう。
私だって欲しいものがある。
ずるくても何でもいい。
でも、私の罪悪感が勇磨を見ると倍増する。
今はどうしてもツバサくんと一緒にいたい思いを捨てきれない。
ツバサくんの手首を握ったまま、家へ急いだ。
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