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悪魔のささやき③
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部屋に入りドアを閉めた。
「なぁな、まだ怒ってるの?」
ううん、違うよ。
大丈夫。
「ごめん、ごめん。大丈夫だよ」
動揺を隠せずにいた。
「なぁな」
ツバサくんの手が肩に乗った。
ドキッとした。
勇磨に怒られるな、そんな風に思って自分が嫌になる。
約束ばっか、させるからだ。
だから何しても罪悪感しかない。
今、こうして2人で部屋にいて、
最高に幸せなのに、ツライ。
香澄ちゃんへの後ろめたさも、もちろんある。
分かってる。
「こんな時、どうやって女の子を慰めたらいいか、分かんないや。
工藤に聞いておかないとな」
なんで、今、勇磨の事を言うかなぁ。
本当にツバサくんって。
ちょっと笑いが込み上げた。
「あ、なぁな、笑った。」
喜ぶツバサくんに、私も少し元気になった。
やっぱり私、ツバサくんが好きだ。
「なぁなはさ、工藤の事、嫌いなんだね。」
え。
昨日とは逆の質問。
また笑った。
「え、なんで?」
「うんと、ケンカするから。なぁな、すごく怒るからさ。
俺には怒らないでしょ。というか、なぁなが怒るのってあんまりないよね」
そっか、そうだね。
でもね、ツバサくん。
私、本当はいつも怒ってた。
いつもいつも心の中で怒ってたんだよ。
勇磨といるようになって、心の中から外に出ちゃったけど。
バカ、俺にも隠せよって笑われそうだね。
思い出しただけで泣き笑いみたいな顔になる。
どうしたんだ、私。
「勇磨の事は…嫌いじゃないよ。大好きだよ。
だけど時々、すごく腹が立って押さえられなくて、
ケンカになるんだ。
ケンカするとすごく悲しくなってさ、
仲直りするとすごく嬉しい」
本当の事だ。
本人には言いたくないけど。
ツバサくんは首をかしげる。
「じゃあ俺となぁなとは違うね。
俺はなぁなとケンカしたくないもん」
そうだね。
ツバサくんとはケンカにならないね。
「相性いいんだね」
そういう罪な事を言うところ、かわいい。
だけど、その言葉にまた私の中の悪意が、
広がって止められなくなった。
「香澄ちゃんとは?ケンカになるんだよね」
聞いてみた。
ちょっとツラそうに頷く。
「うん。すぐ怒るんだよ。俺が女の子と話してるだけで。
好きなのは香澄ちゃんなのに、別の子が好きなのか?
って聞くし、無視したりするしね。
どうしたらいいのかな」
好きなんだ、香澄ちゃんの事。
でも、相性悪いよ。
好きなのも勘違いだよ。
別れなって。
「好きだったら相手の気持ち、理解しないとね。
一方的に怒ったり無視するのはよくないし、
本当に好きなのかなって思っちゃうよ。」
だから別れなっ。
ドクドク音を立てて体中を悪意が駆け巡る。
「メールも電話も無視されて」
だから別れなって。
「それはないね。本当に好きなら、
連絡するはずだよ。
しないって事は好きじゃないんだよ」
だから、別れろ!
「うん、そうだよね。相手の気持ち、理解しないとね。
なぁなの言う通り、自分から、何度も連絡してみるよ。」
え。
悪意の流れが止まる。
体が一気に冷える。
なんで、そうなるの?
どうしてそう思う?
ツバサくんってどういう耳をしてるの?
「やっぱ、なぁなだな。本当に優しいね。なぁなといると安心する」
なんだろう。
ツバサくんって。
無垢なの?バカなの?
イライラする。
私がこうして今、あなたを心の中でディスってる事、気が付かないでしょ。
勇磨なら1発で気がつくのに。
勇磨にだったら言えるのに。
別れて欲しい。
また私の所に戻ってきて。
私が面倒見るから。
私の中でタガが外れる音がした。
「なぁな、まだ怒ってるの?」
ううん、違うよ。
大丈夫。
「ごめん、ごめん。大丈夫だよ」
動揺を隠せずにいた。
「なぁな」
ツバサくんの手が肩に乗った。
ドキッとした。
勇磨に怒られるな、そんな風に思って自分が嫌になる。
約束ばっか、させるからだ。
だから何しても罪悪感しかない。
今、こうして2人で部屋にいて、
最高に幸せなのに、ツライ。
香澄ちゃんへの後ろめたさも、もちろんある。
分かってる。
「こんな時、どうやって女の子を慰めたらいいか、分かんないや。
工藤に聞いておかないとな」
なんで、今、勇磨の事を言うかなぁ。
本当にツバサくんって。
ちょっと笑いが込み上げた。
「あ、なぁな、笑った。」
喜ぶツバサくんに、私も少し元気になった。
やっぱり私、ツバサくんが好きだ。
「なぁなはさ、工藤の事、嫌いなんだね。」
え。
昨日とは逆の質問。
また笑った。
「え、なんで?」
「うんと、ケンカするから。なぁな、すごく怒るからさ。
俺には怒らないでしょ。というか、なぁなが怒るのってあんまりないよね」
そっか、そうだね。
でもね、ツバサくん。
私、本当はいつも怒ってた。
いつもいつも心の中で怒ってたんだよ。
勇磨といるようになって、心の中から外に出ちゃったけど。
バカ、俺にも隠せよって笑われそうだね。
思い出しただけで泣き笑いみたいな顔になる。
どうしたんだ、私。
「勇磨の事は…嫌いじゃないよ。大好きだよ。
だけど時々、すごく腹が立って押さえられなくて、
ケンカになるんだ。
ケンカするとすごく悲しくなってさ、
仲直りするとすごく嬉しい」
本当の事だ。
本人には言いたくないけど。
ツバサくんは首をかしげる。
「じゃあ俺となぁなとは違うね。
俺はなぁなとケンカしたくないもん」
そうだね。
ツバサくんとはケンカにならないね。
「相性いいんだね」
そういう罪な事を言うところ、かわいい。
だけど、その言葉にまた私の中の悪意が、
広がって止められなくなった。
「香澄ちゃんとは?ケンカになるんだよね」
聞いてみた。
ちょっとツラそうに頷く。
「うん。すぐ怒るんだよ。俺が女の子と話してるだけで。
好きなのは香澄ちゃんなのに、別の子が好きなのか?
って聞くし、無視したりするしね。
どうしたらいいのかな」
好きなんだ、香澄ちゃんの事。
でも、相性悪いよ。
好きなのも勘違いだよ。
別れなって。
「好きだったら相手の気持ち、理解しないとね。
一方的に怒ったり無視するのはよくないし、
本当に好きなのかなって思っちゃうよ。」
だから別れなっ。
ドクドク音を立てて体中を悪意が駆け巡る。
「メールも電話も無視されて」
だから別れなって。
「それはないね。本当に好きなら、
連絡するはずだよ。
しないって事は好きじゃないんだよ」
だから、別れろ!
「うん、そうだよね。相手の気持ち、理解しないとね。
なぁなの言う通り、自分から、何度も連絡してみるよ。」
え。
悪意の流れが止まる。
体が一気に冷える。
なんで、そうなるの?
どうしてそう思う?
ツバサくんってどういう耳をしてるの?
「やっぱ、なぁなだな。本当に優しいね。なぁなといると安心する」
なんだろう。
ツバサくんって。
無垢なの?バカなの?
イライラする。
私がこうして今、あなたを心の中でディスってる事、気が付かないでしょ。
勇磨なら1発で気がつくのに。
勇磨にだったら言えるのに。
別れて欲しい。
また私の所に戻ってきて。
私が面倒見るから。
私の中でタガが外れる音がした。
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