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誕生日②
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テスト終わりの放課後は、久々の部活で活気があった。
いいなー青春っぽい。
「私も部活に入れば良かったなー」
その言葉に勇磨は振り向いて笑う
「だけどお前、運動神経ないじゃん!
体育委員なのに笑えるよな。
バスケのシュート教えた時も引いたなぁ」
ひどっ!
だけど反論できない!
「でも、体は柔らかいの!」
爆笑したままの勇磨。
「本当かよ、脂肪で柔らかいんじゃないの」
そう言って私の二の腕を触る。
「なんだよ、筋肉ないじゃん、ぷにぷに」
ひどすぎる!
腕を払って睨んだ。
「ごめん。ごめん」
でも、まだ爆笑してる。
「木下!」
校門近くで声をかけられた。
木村くんだ。
そのまま駆け寄って来て私の首にバサっと、
何かをかけた。
驚いて見ると、それはキャンディが繋がれたネックレスだった。
そのキャンディを見てすぐに分かった。
「木村くん、これ」
木村くんは片手を挙げて、
勇磨にごめんと断りながら続けた。
「誕生日おめでとうだって。
全く、お前ら俺を使い過ぎだからな。」
お礼を言う前に木村くんは走って行った。
背中を見送りながら、
鼓動が早くなるのを感じてた。
一気にツバサくんの笑顔が心に広がった。
「あはは、何これ、作ったのかね」
取り繕う言葉が揺れる。
ツバサくん。
これはダメだよ。
パインキャンディが1つ1つラッピングされ
リボンで繋がれてる。
なんで、こんな。
人がせっかく忘れようとしてるのに。
フタをした思いが溢れ出るのを感じた。
ネックレスをぎゅっと掴んで立ち止まった。
勇磨は何も言わない。
気を取り直さないと。
「もう、本当に。
ツバサくんってなんだかなって感じ」
上手く笑えてるんだろうか。
「いくら、コレ、好きだからってネックレスにしなくてもね」
「こーゆうの売ってるのかな、作ったりしないよね」
なんか言って勇磨。
声が震える。
黙って私を見ていた勇磨は、
私の頭に手を置いて優しく言った。
「もう、いいよ、ナナ。行って来いよ。
やっぱ、敵わねーなー。
俺、部活行くわ、また明日な」
何も言えずに見上げる私の髪を、
くしゃくしゃにして勇磨は走って行った。
その背中にぎゅっとなる。
勇磨!
私、また勇磨を傷つけた。
行って来いよって、どこに?
ネックレスを握る。
ふと、その中にメッセージを見つける。
―誕生日おめでとう、なぁな!―
ただそれだけなのに。
なんてことない言葉なのに。
その言葉に体が突き動かされた!
気がついた時には走ってた。
走って走ってツバサくんの学校の前まで来ていた。
息を整えて校舎を見上げる。
ツバサくん。
会いたい。
流れる生徒達の波にツバサくんを探す。
見つけられず時が過ぎていく中で、
少し冷静になった。
私、ここに来てどうしょうというのか。
まだ好きだって言う?
諦められないって言う?
ぎゅっと目を閉じた。
違う。
ツバサくんも私もそんな事を望んでない。
いつかまた友達に、そう願ってる。
今、会ったら困らせる。
ツバサくんを困らせたくない。
笑っていて欲しい。
どこをどう歩いて来たのか記憶がないまま、
いつもの公園のベンチに座ってた。
良かった、また困らせないで。
気がつくと涙が出てた。
あーあ、また泣いちゃった。
―1人で泣くな―
勇磨の声が聞こえる気がした。
そうだね、もう泣くのはやめよう。
ツバサくんとまたいつか、友達になりたい。
ふと携帯が目に入り、
チカの作ってくれた動画を思い出した。
「見てみるか」
動画を再生した。
優しい曲が流れる。
(初めての恋に心踊る幼い日々 、何もかもがキラキラしていた。)
中学時代の私の写真が、
次から次へと流れる。
ツバサくんの姿を見てる私。
ツバサくんと笑顔でポーズしてる写真 。
体育祭 遠足、ツバサくんの横で笑ってる私。
初めは保護者みたいに。
いや、姉かな。
最終的にはストーカーみたいになってたかな。
卒業式 涙を堪えて
ツバサくんと握手してる私
そーだ、私ってツバサくんの前では泣かなかったし、友達の前でも泣いた事なかった。
勇磨の前で初めて泣いた時は、
その後、ものすごく恥ずかしかったもんな。
(新しい日々にあなたを忘れてしまえたらいいのに。会えない分だけ恋しさも募る。私だけ進めない)
高校生になった私の写真が流れる。
入学式 チカと行った遊園地 。教室 球技大会 。
勇磨と教室で談笑してる写真。
勇磨と帰る後ろ姿。
チカ、いつ、こんな写真を撮ったのかな。
思わず笑みがこぼれる。
(薄れる想いに怖がらないで 。新しい恋がすぐ近くにあるのに)
チカのメッセージが記されていた。
「誕生日おめでとう、なな。新しい恋を、早く見つけて」
最後の写真は観覧車
あれ、これはこの前、勇磨と乗ったやつ!
勇磨に意地悪されたんだったな。
だけど夕陽がきれいだった。
次に勇磨が映った。
動画だ。
え、なんで勇磨が?
「ナナ、誕生日おめでとう。
誕生日の日にまた夕陽を一緒に見れたら、
俺は黙って待てる気がする。
なんて冗談だよ。
ナナはナナのままで好きにしていいんだ。
友達だからとか相手を困らせるとか
考え過ぎて自分を抑えなくていいんだよ。
好きなら奪っちゃえよ。
俺は応援する」
勇磨。
勇磨は何でもお見通しだな。
私がまだツバサくんを消せないのも。
でもツバサくんに迷惑かけたくないって思ってるのも。
勇磨の優しさに甘えて流されてる事も。
自分を抑えなくていい、好きなら奪っちゃえよ、
その言葉で逆に自分の気持ちに気付いた。
私、奪うなんて出来ないな。
今更、そんな事できないし、そこまでの勇気もないし、
勇気があるないの問題じゃない。
私の中でツバサくんの事は納得してる。
告白できてちゃんと失恋して納得した。
時々心が動くけど、
どーしても欲しいのとは違うカタチになってる。
ずっと片思いしてたから終わりにするのが怖かった。
好きだって心が慣れて、
新しい一歩が踏み出せないでいた。
私が1番望んでいるのはツバサくんの幸せだ。
笑顔を守りたかった。
私がたくさん笑わせてあげたかった。
だけど、もうおしまい。
これからは香澄ちゃんに笑顔にしてもらえばいい。
私も私の為に笑顔でいたい。
はぁー私、何してるんだろ。
この動画、すごくいい。
チカに感謝だ。
今、したい事が頭に浮かぶ。
私が私のために笑顔になるには。
学校に行こう。
勇磨を引っ張って観覧車に乗るんだ!
それで本当にツバサくんの事は終わりにしよう。
私はまた学校まで逆戻りで走った。
今日はものすごく走る日だな。
いいなー青春っぽい。
「私も部活に入れば良かったなー」
その言葉に勇磨は振り向いて笑う
「だけどお前、運動神経ないじゃん!
体育委員なのに笑えるよな。
バスケのシュート教えた時も引いたなぁ」
ひどっ!
だけど反論できない!
「でも、体は柔らかいの!」
爆笑したままの勇磨。
「本当かよ、脂肪で柔らかいんじゃないの」
そう言って私の二の腕を触る。
「なんだよ、筋肉ないじゃん、ぷにぷに」
ひどすぎる!
腕を払って睨んだ。
「ごめん。ごめん」
でも、まだ爆笑してる。
「木下!」
校門近くで声をかけられた。
木村くんだ。
そのまま駆け寄って来て私の首にバサっと、
何かをかけた。
驚いて見ると、それはキャンディが繋がれたネックレスだった。
そのキャンディを見てすぐに分かった。
「木村くん、これ」
木村くんは片手を挙げて、
勇磨にごめんと断りながら続けた。
「誕生日おめでとうだって。
全く、お前ら俺を使い過ぎだからな。」
お礼を言う前に木村くんは走って行った。
背中を見送りながら、
鼓動が早くなるのを感じてた。
一気にツバサくんの笑顔が心に広がった。
「あはは、何これ、作ったのかね」
取り繕う言葉が揺れる。
ツバサくん。
これはダメだよ。
パインキャンディが1つ1つラッピングされ
リボンで繋がれてる。
なんで、こんな。
人がせっかく忘れようとしてるのに。
フタをした思いが溢れ出るのを感じた。
ネックレスをぎゅっと掴んで立ち止まった。
勇磨は何も言わない。
気を取り直さないと。
「もう、本当に。
ツバサくんってなんだかなって感じ」
上手く笑えてるんだろうか。
「いくら、コレ、好きだからってネックレスにしなくてもね」
「こーゆうの売ってるのかな、作ったりしないよね」
なんか言って勇磨。
声が震える。
黙って私を見ていた勇磨は、
私の頭に手を置いて優しく言った。
「もう、いいよ、ナナ。行って来いよ。
やっぱ、敵わねーなー。
俺、部活行くわ、また明日な」
何も言えずに見上げる私の髪を、
くしゃくしゃにして勇磨は走って行った。
その背中にぎゅっとなる。
勇磨!
私、また勇磨を傷つけた。
行って来いよって、どこに?
ネックレスを握る。
ふと、その中にメッセージを見つける。
―誕生日おめでとう、なぁな!―
ただそれだけなのに。
なんてことない言葉なのに。
その言葉に体が突き動かされた!
気がついた時には走ってた。
走って走ってツバサくんの学校の前まで来ていた。
息を整えて校舎を見上げる。
ツバサくん。
会いたい。
流れる生徒達の波にツバサくんを探す。
見つけられず時が過ぎていく中で、
少し冷静になった。
私、ここに来てどうしょうというのか。
まだ好きだって言う?
諦められないって言う?
ぎゅっと目を閉じた。
違う。
ツバサくんも私もそんな事を望んでない。
いつかまた友達に、そう願ってる。
今、会ったら困らせる。
ツバサくんを困らせたくない。
笑っていて欲しい。
どこをどう歩いて来たのか記憶がないまま、
いつもの公園のベンチに座ってた。
良かった、また困らせないで。
気がつくと涙が出てた。
あーあ、また泣いちゃった。
―1人で泣くな―
勇磨の声が聞こえる気がした。
そうだね、もう泣くのはやめよう。
ツバサくんとまたいつか、友達になりたい。
ふと携帯が目に入り、
チカの作ってくれた動画を思い出した。
「見てみるか」
動画を再生した。
優しい曲が流れる。
(初めての恋に心踊る幼い日々 、何もかもがキラキラしていた。)
中学時代の私の写真が、
次から次へと流れる。
ツバサくんの姿を見てる私。
ツバサくんと笑顔でポーズしてる写真 。
体育祭 遠足、ツバサくんの横で笑ってる私。
初めは保護者みたいに。
いや、姉かな。
最終的にはストーカーみたいになってたかな。
卒業式 涙を堪えて
ツバサくんと握手してる私
そーだ、私ってツバサくんの前では泣かなかったし、友達の前でも泣いた事なかった。
勇磨の前で初めて泣いた時は、
その後、ものすごく恥ずかしかったもんな。
(新しい日々にあなたを忘れてしまえたらいいのに。会えない分だけ恋しさも募る。私だけ進めない)
高校生になった私の写真が流れる。
入学式 チカと行った遊園地 。教室 球技大会 。
勇磨と教室で談笑してる写真。
勇磨と帰る後ろ姿。
チカ、いつ、こんな写真を撮ったのかな。
思わず笑みがこぼれる。
(薄れる想いに怖がらないで 。新しい恋がすぐ近くにあるのに)
チカのメッセージが記されていた。
「誕生日おめでとう、なな。新しい恋を、早く見つけて」
最後の写真は観覧車
あれ、これはこの前、勇磨と乗ったやつ!
勇磨に意地悪されたんだったな。
だけど夕陽がきれいだった。
次に勇磨が映った。
動画だ。
え、なんで勇磨が?
「ナナ、誕生日おめでとう。
誕生日の日にまた夕陽を一緒に見れたら、
俺は黙って待てる気がする。
なんて冗談だよ。
ナナはナナのままで好きにしていいんだ。
友達だからとか相手を困らせるとか
考え過ぎて自分を抑えなくていいんだよ。
好きなら奪っちゃえよ。
俺は応援する」
勇磨。
勇磨は何でもお見通しだな。
私がまだツバサくんを消せないのも。
でもツバサくんに迷惑かけたくないって思ってるのも。
勇磨の優しさに甘えて流されてる事も。
自分を抑えなくていい、好きなら奪っちゃえよ、
その言葉で逆に自分の気持ちに気付いた。
私、奪うなんて出来ないな。
今更、そんな事できないし、そこまでの勇気もないし、
勇気があるないの問題じゃない。
私の中でツバサくんの事は納得してる。
告白できてちゃんと失恋して納得した。
時々心が動くけど、
どーしても欲しいのとは違うカタチになってる。
ずっと片思いしてたから終わりにするのが怖かった。
好きだって心が慣れて、
新しい一歩が踏み出せないでいた。
私が1番望んでいるのはツバサくんの幸せだ。
笑顔を守りたかった。
私がたくさん笑わせてあげたかった。
だけど、もうおしまい。
これからは香澄ちゃんに笑顔にしてもらえばいい。
私も私の為に笑顔でいたい。
はぁー私、何してるんだろ。
この動画、すごくいい。
チカに感謝だ。
今、したい事が頭に浮かぶ。
私が私のために笑顔になるには。
学校に行こう。
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