最初のものがたり

ナッツん

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私達のものがたり

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後夜祭も盛り上がって終わった帰り道。

勇磨と並んで歩いた。

手を繋いでくれた。
こういうのが嬉しい。

今は手を繋ぐだけでドキドキして、
どうやって繋いで、
離すときはどうしたらいいのか。

離さないと通れない時はどうするのか、
その後どうするのか。

そんな事で頭がいっぱいだけど、
そのうち自然と繋げるのかな。
当たり前みたいに。

「ナナ、髪、ガタガタ」

そう言って髪に触れる。

「アヤノに切ってもらったからね。
アヤノって美容師になりたいんだよ」

そう言う私に笑う勇磨。

「美容師になりたい人に、
切ってもらうってなかなかだよ」

確かに。

「でも何で切ったの?
ツバサの為に、伸ばしてたんじゃないの?」

また、意地悪言う!

そりゃそうなんだけど、でも、バカ!

「何か言い訳しろよ、
ここで黙られたら傷つく。」

バカ!

爆笑する私にスネ顔の勇磨。

「だって、
伸ばしたきっかけは、
勇磨の言う通りだもん。」

ムッとした表情をする勇磨。

自分から言っておいて全く!

「ナナは俺がいるのに、
すぐツバサに構うもんなぁ。
ちょっと彼女とケンカしたくらいで、
ホント油断できない。」

冗談か本気か分からない調子で言う。

「勇磨が嫌ならもうしないよ。
前にも言ったじゃん。
勇磨が嫌な事はしないって。
私は勇磨が…」

そこで、ちょっと照れた。
あんまりにも勇磨が見つめるから。

勇磨が私の目を覗き込む。

「勇磨が何?」

もうーバカ!

「好き」

その言葉にぎゅっとしてくれた。

「俺も好き」

優しくキスをしてから、にっこりと笑う。

「俺さ、すごく驚いた。
ナナ、踊れるんだな。
かなり鈍臭くて体育とかもダメなのに、
あんなにカッコよく踊れるんだもんな。
運動神経とは違うのかなぁ。
でも、応援するよ。
ナナの夢と目標なんだよね。
これからもアイツらと踊るんだろ」

私は驚いて勇磨を見上げた。

え、いいの?

嬉しい!

「うん。続けたい。」

勇磨は大きなため息をつく。

「はぁ、続けたいか、やっぱり」

え?

え?

どういう事?

「俺、今、
カッコ付けて理解ある男風にしたけど、
本当は嫌なの。
なんだよ、あれ、トモとの絡み。
あいつワザとやってねぇか。
ナナにベタベタ触って、ムカツク!」

後ろで爆笑が響く。

振り返るとトモとアヤノだ。

2人、手を繋いでる。自然だ。

「分かった?だって、面白いんだもん。
アイドルくん、本当にガキ」

トモがまた煽る。

アヤノがやめなよってなだめる。

勇磨が炎上する。

「ふざけんな。どうせ俺はガキだよ。
ねぇ、アヤノさん、嫌じゃないの?
彼氏が他の女の子とあんなの」

アヤノが首を傾げて笑う

「うん、ヤダって言うか、
私がトモとペアになれるくらい、
上手くなりたいって思うよ。
今はナナミには勝てないから。
単純に2人のダンスに惹かれるし、
最高だと認めてる。
でも勇磨くんが、
ヤキモチ妬くって言うのも、
最高の褒め言葉だよね。
それくらい情熱的って事だもん」

うん、アヤノの言う通り。

これは表現だ。

でも勇磨は納得いかない。

彼氏も彼氏なら彼女も彼女だな、
と呟いてる。

「本気で好きになる事はないの?」

勇磨が聞いた。

「それは分かんない。
ないともあるとも言えない。
でもそんなの、ダンスに限んないよな。
色んな所でパートナーってあるし、
お前がしっかり捕まえときゃいいんじゃない。
俺はアヤノに、
しっかり心を捕まえられてるからね」

もっともな事を言われて勇磨は凹む。

かわいいなぁ勇磨。

「まぁ、俺は、
勇磨がヤキモチ妬くのが楽しいから、
ガンガン行っちゃうけどね。
次の曲でもパートナー組んで、
見せつけてやろうぜ。
弾みでキスしちゃったらごめんね」

また煽る。

勇磨には冗談が通じない。

「俺、笑えない」

小さくなってかわいい。

「あーおもしろいっ。じゃあまたな」

散々、掻き回して2人は去っていった。

「ナナ、俺、ツライ」

そう言って側のベンチに座りこんで凹んでる。

「ゆーま」

私の両手を取って引き寄せる。

「アイツがナナにキスしたらどうしよう」

あー

これはもしかして。

「ねぇ、本当は凹んでないでしょ」

そう言う私にもっと凹んでみせる。

「ううん、俺、傷ついた。
ダンスとか言ってれば、
俺が何も言えないと思って。
ねぇ、ナナマーマ」

やっぱり。

そう言って私に抱きつき腰に手を回す。

仕方ないなぁ。

勇磨の髪に顔を埋め、
背中や髪を撫でる。

「あったかい」

そう言って胸に顔を埋める勇磨。

「ちょっと、勇磨!」

腰に回した手が強くて体を離せない。

「いーじゃん。これくらい。ケチ」

ケチとかそういう問題?

もう、勇磨のバカ。

必死に逃れようと体をよじった。

両膝で私の足をガシッと挟んでるから、
全く抜けられない。

「ナナちゃんがイヤイヤすればする程、
俺、天国なんだけど」

わぁ。

勇磨の顔に胸を擦り付ける感じになってた!

もうっ。

動けない。

「ねぇ、ナナ、
あの超、短いピンクのドレス着てさ、
俺だけに踊ってよ」

変態が加速してる。

「変態」

口を尖らせる。

「ナナちゃんは、その変態が好きなんでしょ」

今日の勇磨は突き抜けてる。

「どうしたの、勇磨。今日はキモイよ」

私の悪口にも動じない。

「キモイのも好きでしょ」

まぁそうなんだけど。

「ナナ、
俺もう何回も言ってるけど、
ナナが好きだ。
本当に好きなんだ」

うん、知ってる。

勇磨を抱きしめる。

「私も大好き。」

最高に素敵な笑顔を私に向ける。

「うん、伝わった。
今日のステージでお前がずっと、
勇磨が好きー!って叫んでる気がした」

うわっ怖っ。

伝わってたんだ。

すごいっ。

でも。

勇磨が好きだ。

こんなに人を好きになるなんて。

誰かが私を好きになってくれるなんて。

好きな人が好きになってくれるだけで自信になる。

優しくなれる。

毎日が輝いて生きてるって感じる。

勇磨に会えて良かった。

だから絶対に諦めない。

ずっとそばにいたい。

勇磨の為とか、
勇磨の笑顔の為とかじゃなくて、
私が私の為に諦めたくない。

わがままになっても。

「ねぇ勇磨。覚悟してね。
私、勇磨を逃がさないからね。
勇磨だけは誰にもあげないし、離れない。」

私の目を見て笑う勇磨。

「怖ぇー。ストーカーだな。
でも俺もお前を逃がさないからな」

2人で笑う。

これから先もケンカしたり、
ヤキモチ妬いたり、
気持ちが離れる事もあるかもしれない。

だけど勇磨、
私はきっとずっと勇磨が好き。

勇磨がいるから私は私でいられる。

安心して自分を表現できる。

勇磨しかいない。

断言できる。

最初で最後の1人だ。

15で会えた!

それだけで私の人生は成功だ!

そこで、ふと思う。

これって。こういうのって。

「ねぇ、
こういう感じって最終回っぽくない?
なんかハッピーエンドっぽい。」

勇磨が顔を上げて私を見る。

「へぇ、ナナ、そんなに今、幸せなの?
感無量って感じ?」

なんだ、それ。

片眉を上げ、また悪い顔つきになる勇磨。

「お前、これで終わると思ってんの?
バカだなぁ。これからだよ。
俺を誰だと思ってんだよ!
ナナが想像もできないような、
スリルとアクションと、
甘い甘いラブストーリーをあげる。」

バカだなぁ、勇磨って。

「スリルとアクションってなんだよ!」

そのまま両手を伸ばし、
私の頬を引き寄せてキスをする。

長い長いキス。

え?うそっ。

まだ、するの?

長いっ!

息が!

勇磨の力が強くて離れられない。
息苦しくなる。

やめてよ、もう、無理。

「いつも、息、止めるからだよ。
でも、キスだけでも、
結構スリルあるでしょ。」

バカ勇磨!
キスの仕方なんて分かんないもん。

「終わらないよ。最終回なんてないの。
俺たちはまだ、始まったばかりだろ、
初回だよ。
期待しててね、ナナちゃん。
いっぱいいっぱいドキドキさせてあげる。
もっともっと過激で、
もっともっと泣けるほどに、
深い物語をあげるから。」

ヤバイ!勇磨!

想像しただけでドキドキだよ。

なんだ、これ。

確かに最終回じゃない!

まだまだ続く!

やった!

これから私、どうなっちゃうの?

「勇磨!好き!」
「俺も好きだよ、ナナミ」

え、いきなりナナミって、呼ばないでよ。
ドキドキしちゃったじゃん!

慌てる私に爆笑する勇磨。

「ナナをドキドキさせんの、
超、簡単なんだけど!」

もうっ!

バカ勇磨!

これからも期待してるからね。
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