最初のものがたり

ナッツん

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特別編 プロローグ(勇磨sideー幼少期)

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思えば物心つく頃にはすでに人生イージーだと思っていたんだ。

常に特別扱いされていた。気がする、ではなく確実に特別扱いされていた。

それは俺に何か特別な能力があるとか、愛想が良くていい子だからといった理由でも親の権力でもない。

単に俺がかわいいからだ。
そのまま、言葉通りだ。

俺はかわいい外見の子どもだった。

親と買い物をしていても、夕方の殺気だった店内を、癒すほどのかわいさだ。

「かわいいね」なんて声かけられるレベルではない。

レジのおばさんがこっそり割引してくれる。
知らないおばさんがお菓子を買ってくれる。

なんて事は日常茶飯事で、断るのがうざくなった親が俺を連れ歩かなくなったほどだ。

そんなにかわいいと危険も伴いそうだが、
道を歩けば常に振り返られ、印象深い俺を狙う奴はいなかった。

人の目が集まりすぎるのだ。

保育園での生活も楽勝だった。

常に世話焼きな女達が俺の代わりに面倒な事をしてくれていた。
それを知っているだろう先生も微笑ましく見守るどころか、自ら率先して俺を特別扱いしてくれていた。

俺はただ笑って好きな事だけをしていれば良かった。

そんな俺の笑顔でまた女達が張り切ってくれる。

ただ、家の中では別だ。
家の中では特別にかわいい子ではなかった。

普通。

つまり、批判を恐れずにいえば
家族みんな美形だ。外見に恵まれている。

俺が外見を利用し生きやすく生活している根本には親の育て方がある。

親の背中を見て俺たちは育った。

姉と妹もだ。

あいつらは自分で何かをせずに生きているから(俺もだか)、家の中でも姫を貫き、俺を奴隷にしようとする。

父親は女には優しくしろ、と謎のポリシーで俺に圧をかけるから、家庭内でだけは女に頭が上がらない。

まぁでも外で何もせずに暮らしているから、
家であいつらに使われても苦ではなかった。

その当時の俺は自分の外見を武器に女達を上手く使って楽をしてた、面倒な事は全部、任せて俺はただ、好きな遊びを友達としていたんだ。

女達もまた俺にいいように使われて嬉しいんだからwin-winだと。

俺は男同士、気の合う仲間と1日中、鬼ごっこをしたり、ブロックをしていた。

一緒に遊ぶ仲間が合間に片付けや当番活動、掃除などをしていたとしても俺はそれらを女達がやるからと気にも留めず、ただ楽しんでいた。

そんな事が許されるのは、受け入れてもらえるのは幼児期の柔らかいうちだけだったと、思い知るのは小学校へ入学してからだ。
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