最初のものがたり

ナッツん

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特別編 プロローグ(勇磨sideー学童期)4

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「尊‥」

駆け寄り尊の肩に手を伸ばした。
瞬間、尊は俺の手を払った。
俺を見もしない。

「尊」

自然と声が強くなる。

やっと俺を見たその目は軽蔑、怒りに溢れていた。

まさか、誤解したのか。

ちゃんと説明をしなくてはいけないと分かった。
そうしたかった。

なのに。

「ねぇ、勇磨くん、尊くんにちゃんと言ったから、内緒で付き合うって約束、忘れないでね」

悪魔のように微笑んで俺に手を伸ばす。

黙れ、黙れ、黙れ。
邪魔をするな。

尊がいるのを知っていて俺を煽ったと気がついた。

気がつくと相澤の胸ぐらを掴んでいた。

「黙れ、誰がお前となんか」

相澤が恐怖で目をつぶっている。
構わないと思った。
殴っても構わないと。

実際に拳を突き上げていた。

その腕を尊に掴まれ、体ごと投げ飛ばされなければ、俺は殴っていた。

俺から解放された相澤が走って逃げていくのが見えた。

「勇磨、お前、最低だな。」

それだけ言って尊は相澤を追って行った。

1人残された俺は混乱していた。
何でこんなことになったんだ。

俺は尊の為を思って。
なんで、俺が最低なんだ。

分からない。
何が、俺の何が最低なんだ。

分からない。

何故、尊は相澤を追いかけたんだ。

恋を知らない俺には尊が相澤を信じて追いかける気持ちが全く分からなかった。

尊が親友の俺よりも相澤を信じる事が分からない、あれだけ俺を信じると言っていたくせにと思った。

尊に対して怒りを覚えた。

あいつの為にした事なのに。
あんな奴、相澤にいいように使われたらいい。

あんな奴、こっちから絶交だ。
明日、謝ってきても絶対に許さない。

バカな俺は、信じていたんだ。
尊は絶対に俺を見捨てないと。

頭を冷やして俺に謝ってくると。

だけど何日経ってもそんな日はやってこなかった。

やってきたのは、俺が嫉妬に狂って相澤に手を挙げようとしたのを尊が助けた。
それがきっかけで相澤と尊が付き合ったというストーリー。

相澤と尊は付き合った。

もう、知らないと思った。
勝手にやってくれと。

俺が信じていたアイツはもういない。

女にうつつをぬかし、真実が見えない奴はバカだと。
俺はバカとは付き合わない。
尊がどうなろうと知らない。

幼かった俺は尊に向き合う事をしなかった。
裏切られたと思い、アイツの気持ちに気がつけなかった。

大事な友達だったのに、もっと話すべきだった。

だけど、そんな事はもっとずっと後に思う事で、その時の俺は心を閉ざすしかできなかった。

尊との事が噂になり、他の奴らも俺に好きな人を取られたとか、身に覚えのない事まで言われるようになり、俺の周りから人がいなくなった。

それもいいと思った。

ついでにうるさい女もみんな無視した。

元凶は女だ。

アイツらにいい顔したからこうなった。
もう関わらない。

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