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高校時代

「慰めて」

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外ではセミがうるさく鳴いている、夏の暑い日だった。

久しぶりに春樹が僕の所に来た。


「付き合え!!」


一瞬ドキリとしたが、春樹が突き出した右手には、2本のコーラ瓶が入った袋が握られていた。

「やけ酒?」

「やけコーラだよ!!見りゃ分かんだろ!!」


以前のように、ベットにもたれて並んで座る。
違うことといえば、テレビは真っ暗のままだ。

どこで仕入れたのか知らないが、春樹は瓶のコーラを、まるで一升瓶でも抱えた酔っ払いのような、ひねくれた持ち方をしていた。

そして、ぽつりぽつりと心の内を話し始めた。


「なんか、思ってたのと違ったんだって。俺」

春樹は独り言のように続ける。

「優しくしてたと思うんだけどなぁ…物足りないとか言われちゃって」

「エッチも何回かしたけど…下手くそ、って言われてさ?そんなん初めてなんだから分かんねーよ…」

だんだん、春樹の声が震えてきた。

「俺、そんなにダメだったんかなぁ…」



「ダメな訳ないだろ!!」



僕はつい、声を荒らげてしまった。

「春樹は良い奴だ、僕が一番知ってる!優しいのも、春樹のいい所だ!それを物足りないとか言うんなら、こっちから願い下げだよ!!」

僕の春樹をいとも簡単に奪っておいて、こんなに傷付けてから、返品?
僕は心底腹が立っていた。
腸が煮えくり返るとは、こういうことか。


「…願い下げかぁ、ははっ…」

珍しく大きな声を出した僕に、少し驚いた様子の春樹は、声こそ震えていなかったが、無理に笑っているようにも見えた。


「尚也、怒ってくれてありがとう…」

春樹はそう言ってくれたけど、でもまだ好きなんだ…、と小さく付け加えた。

僕の胸がチクンと痛む。
そんなサイテーな女、さっさと忘れたらいいのに。
憤りと共に、そこまで春樹に想われる元カノが羨ましくて、妬ましい…。

僕がギリギリと怒りを抱え込んでいるところに、珍しいもじもじと申し訳なさそうに春樹が顔色を伺ってきた。

「今からキモいこと言うぞ?」

「春樹はAV持ってきた時からキモいから慣れてる」

「おまっ…今それ言う!?余計言いにくいわ!」

「だから慣れてるから大丈夫だって」

春樹は強ばっていた顔が綻び、深呼吸をしてから真剣な顔でこう言った。


「俺のこと、慰めてほしい…」


僕も真剣な顔でコクンと頷いた。

それから、コーラをグビグビッと飲んだ。
やけコーラだ。
僕は今から春樹の慰みものになる。
でもいいじゃないか、春樹のモノに触れられるんだ。
夢にまで見たあの顔を、間近で見られるんだ。
何を悲しいことがある?
むしろ喜ぶべきだ!

そう言い聞かせながら、涙が出そうなのをぐっと堪え、バチンと両頬を叩いて気合いを入れる。


「腰抜けにさせてやるからな、覚悟しな!」


―――


いつもは横並びだけど、今日だけは向かい合って座る。
春樹はあぐらをかいて、ベットにもたれ、腕で顔を隠している。

顔…見せてくれないのかな。
やっぱり、春樹も僕が相手じゃ恥ずかしいか。
僕としては、今更なんだけどな…。


「始めるよ?」

「…うん」


まずは、ズボンの上からそっと触れてみた。
まだ、柔らかい。
それもそうか、オカズも何も無いからね。
僕は、ズボンの上からスリスリと撫でて、徐々に硬くなっていく春樹にどんどん顔が熱くなっていくのを感じた。


これじゃぁ、僕の方が先にガッチガチになっちゃうよ…。


ゆっくりと触っていると、少しずつ硬度を増してきた。
カチャカチャとベルトを外して、まだ完全に勃ち切ってはいないモノを取り出して優しく握り込む。
まだふわふわと柔らかく、それでいてとても熱を持っている。

春樹のモノを触れる日が来るなんて、思っていなかった。

僕は、その愛おしいモノを優しく、ゆっくりと上下に動かす。
すると、また少しずつ硬度を増していき、先端の小さな口からは、キラリと光る透明な先走り。

それを親指に取って、くるくると先端に塗りこんでいく。
いつも春樹がしているように。
だからだろうか、 腕で隠れきれていない口元から、少し荒い吐息が漏れてきた。

あの、少しだけ開かれた、色っぽい口元から。
僕の施す刺激で春樹が熱い吐息を漏らしている。
もう…頭がおかしくなりそうだ。

親指での刺激を続けながら、上下運動を激しくしていくと、春樹のソレはもうガチガチに硬く、反り返っていた。

僕の興奮も、もうとっくに限界を突破していた。

向かい合ってあぐらをかいていた僕は、ゆっくりと体勢を崩し、頭を下げていく。
そして、先走りでテラテラと光るその先端を、ぱくりと口に咥えこんだ。


「んっ、はぁっ…!?尚也!?」

春樹にとってはまさかの展開だっただろう。
隠していた腕をどけて、真下にいる僕を見た。それに対して、僕は春樹をまっすぐに見上げた。
赤く火照った頬、驚き見開かれた目、そして…あの快楽に耐えて歯を食いしばる、苦悶の表情。
これらを与えているのは全部、僕だ。

「ひにひないで」

口に含んだまま「気にしないで」と言ったが伝わっただろうか。
僕はそのまま、じゅるじゅると唾液を含ませた口内で、春樹を犯していく。
硬く尖らせた舌先で、鈴口をつつき、少し広げてチロチロと中まで刺激する。

「あぁっ、はぁっ、はぁっ…」

春樹の吐息が、声に変わっていった。

「ここが好きなの?」
僕は春樹が先っちょ好きなこと、知ってるよ。

「…うん」
まさか返事が来るとは思わなかった。でも認めてくれたんなら、期待に応えたくてしつこくしつこく攻めたてた。


次に、口をすぼめて唇でカリ首に引っかかるよう、小刻みに頭を上下に動かしてみた。

「あぁっ、あっ、あっ…」

じゅるじゅると卑猥な音を立てながら、僕は一心不乱に吸い上げた。

「あぁっ、イクッ、イクッ…!!」

僕を引き剥がそうとする春樹に抵抗して、しっかりと腰に手を回してしがみつき、絶対に口を離そうとはしなかった。


「ダメっ、まゆっ、出るって…!!」


…『まゆ?』


そのすぐ後、春樹は僕の口の中に欲望の全てを吐き出した。

なんとも苦いソレを飲み干して、恐る恐る春樹を見上げると、また腕で顔を隠していた。
色っぽく半開きになった口元だけが見えていて、肩で、全身で、ゼェハァと呼吸をしていた。


…今の春樹は、あの時の僕と同じだ。
顔を隠していたのは、恥ずかしいからじゃない。目の裏に残る『まゆ』を見ていたんだ。
最初っから僕のことなんて見ていなかった。僕の与えた刺激と快楽は、全て『まゆ』から与えられたもので…。

自分にも心当たりがあるだけに、春樹を責めることもできない。

「春樹、未練タラタラじゃん…」

そう言うだけで精一杯だった。
僕は春樹の特別になれたと思っていたけど、とんだ勘違い野郎だ。

やっぱり、ただの慰みものだった。

それでも、こっそり覗いているだけだった春樹に触れることができた優越感は捨てきれなかった。

「またさ、つらくなったら言ってよ。いつでも慰めてあげるから…」

もう、僕は『まゆ』でもなんでもいいからさ。春樹の特別な存在でい続けたいからさ…。

「ありがとう…でも今日でおしまいにするよ。ほんと、サンキューな…」

まだ顔を隠している春樹の腕の隙間から、一筋の涙が頬に伝っていった。
その涙の意味が僕には分かるから、もうどうするのが正解なのか全然分からなかった。

ただその日は、落ち着くまで黙って春樹の傍にいた。
僕にできることは、それくらいしか無かったから…。
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