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eスポーツ部誕生
9 出会い1
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速人は昨日作ったポスターを鞄から取り出した。カラープリンターで印刷したA4サイズのコピー用紙4枚をつなぎ合わせたものだ。我ながらよくできたと思う。しかし、このポスターを掲示しただけで簡単に集まるとは思えない。
昨日の電算部と今日の教室での反応を思い出すと、たった5名の部員を集める事が至難の業のように思えてくる。
ポスターを持って教室を出て、下駄箱の近くにある掲示板まで行き画鋲で留めた。斜めになってないかと確認していると、何となしに右後ろからの視線を感じた。
振り返ってみると、金髪で耳にいくつもピアスを付けている、目つきの悪い男子がこっちを見ていた。苦手なタイプだ。速人はそう思い身構えた。
すると金髪の生徒はゆっくりと近づいてきた。やばい、絶対何か因縁を付けられると思ったとき、笑顔で話しかけてきた。
「おみゃーさん、この部活の関係者か?」
想定外に穏やかな口調で話しかけてきた。
緊張のあまり少し声が裏返りぎみに
「そう、昨日校長先生から許可を得て、募集を開始したところです」と答えた。
「ふ~ん、ゲームはLoLだけか?」
「はい、LoLで全国高校生大会を目指しています」
「ストVやらんのか?」
「ストV? ……あっ! ストリートファイターの事ですか?」
「そうそう、俺はストVをガチでやっとるんだがね。大会に出た事もあるしよ。ストVやれるんだったらすぐに入部するわ」
名古屋弁丸出しの口調だった。祖母のしゃべり方によく似ている。恐らくお年寄りと暮らしているんだろうと速人は思い、自分も祖母と暮らしているので一気に親近感が増した。
「ストリートファイターの高校生大会ってないよね? ごめん、校長から全国大会を目指のが条件と言われているんだ」
「なんやつまらんなぁ。俺、一年三組の多田野翔、翔って呼ばれとる。ストVできるようになったら声かけてちょ」
そう言うと翔は離れていった。
せっかく初めての部員が入りそうだったのに「残念」と思っていると、こちらを眺めている女子に気が付いた。小柄でおとなしそうな子だ。
もしかして入部希望者かもしれない。思い切って声をかけた。
「ひょっとしてeスポーツ部に興味ある?」
「あっ、え、えぇ……」
「ちょっと説明聞いてくれない?」
そう言うと、彼女は小走りで近づいてきた。このチャンスを逃してなるものかと精一杯の笑顔を作り部活について説明をした。
掌に隠れそうな小さな顔に不釣り合いな大きな目。少し茶色がかった瞳で微動だりせず速人を見つめている。速人の説明にうなずきもせず、ただじっと見つめていた。
「あの……、聞いている?」
こらえきれず速人は聞いた。
「あっ、はい……」
何やら、うわの空のような返事だ。
ひょっとして、この子は世に言う『不思議ちゃん』ではないのかと速人は思った。
昨日の電算部と今日の教室での反応を思い出すと、たった5名の部員を集める事が至難の業のように思えてくる。
ポスターを持って教室を出て、下駄箱の近くにある掲示板まで行き画鋲で留めた。斜めになってないかと確認していると、何となしに右後ろからの視線を感じた。
振り返ってみると、金髪で耳にいくつもピアスを付けている、目つきの悪い男子がこっちを見ていた。苦手なタイプだ。速人はそう思い身構えた。
すると金髪の生徒はゆっくりと近づいてきた。やばい、絶対何か因縁を付けられると思ったとき、笑顔で話しかけてきた。
「おみゃーさん、この部活の関係者か?」
想定外に穏やかな口調で話しかけてきた。
緊張のあまり少し声が裏返りぎみに
「そう、昨日校長先生から許可を得て、募集を開始したところです」と答えた。
「ふ~ん、ゲームはLoLだけか?」
「はい、LoLで全国高校生大会を目指しています」
「ストVやらんのか?」
「ストV? ……あっ! ストリートファイターの事ですか?」
「そうそう、俺はストVをガチでやっとるんだがね。大会に出た事もあるしよ。ストVやれるんだったらすぐに入部するわ」
名古屋弁丸出しの口調だった。祖母のしゃべり方によく似ている。恐らくお年寄りと暮らしているんだろうと速人は思い、自分も祖母と暮らしているので一気に親近感が増した。
「ストリートファイターの高校生大会ってないよね? ごめん、校長から全国大会を目指のが条件と言われているんだ」
「なんやつまらんなぁ。俺、一年三組の多田野翔、翔って呼ばれとる。ストVできるようになったら声かけてちょ」
そう言うと翔は離れていった。
せっかく初めての部員が入りそうだったのに「残念」と思っていると、こちらを眺めている女子に気が付いた。小柄でおとなしそうな子だ。
もしかして入部希望者かもしれない。思い切って声をかけた。
「ひょっとしてeスポーツ部に興味ある?」
「あっ、え、えぇ……」
「ちょっと説明聞いてくれない?」
そう言うと、彼女は小走りで近づいてきた。このチャンスを逃してなるものかと精一杯の笑顔を作り部活について説明をした。
掌に隠れそうな小さな顔に不釣り合いな大きな目。少し茶色がかった瞳で微動だりせず速人を見つめている。速人の説明にうなずきもせず、ただじっと見つめていた。
「あの……、聞いている?」
こらえきれず速人は聞いた。
「あっ、はい……」
何やら、うわの空のような返事だ。
ひょっとして、この子は世に言う『不思議ちゃん』ではないのかと速人は思った。
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