恋にあやとり

宮瀬

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「僕が、人気者・・・?」
正確に言えば人気なのは亜弥の方なのだが、今までそういう対象として扱われたことのない僕の頭の中は混乱していた。僕は亜弥とは違って、人見知りで目立たなかったし、学校でも仲のいい人が数人いるくらいで、いつも教室の端の方で固まっているようなタイプだった。果たしてそんな僕に亜弥の代わりが務まるのか、今更ながら不安になる。でも、ほんの少しだけ、この状況に楽しんでいる自分がいるのも本当だった。言うなれば、頻繁に亜弥と入れ替わっては両親達を困らせていた昔に戻ったような気持ちだ。


寮室に戻ると、東堂が先に戻ってきていたらしく部屋に明かりがついていた。先ほど谷口に言われた言葉で頭がいっぱいになっていたけど、そうだ。部屋に戻る前に東堂と何を話せばいいかとか、もっと考えておくべきだった。扉が閉まると、一気に気まずさが押し寄せてくる。

「・・・」
「・・・」

何やら勉強していたらしい東堂は、此方を一瞥したものの、何を言うでもなく視線を戻した。気軽に挨拶するような仲ではないことは分かっていたが、これほど険悪な雰囲気であるなど想像していなかった。亜弥ならこんな時どうするか考えてみるが、彼はこんな気まずさなんてものともせず我が道を通すタイプだ。きっと今のような状況にいたとしても、顔色一つ変えずにさっさと自分の世界に入ってしまうだろう。
早々に会話することは諦め、重苦しい空気から逃れるようにバスルームに直行する。まだ時間は早いが、お風呂に入って寝てしまえば互いを気にすることもない。


「寝るの?」

風呂から上がり一人ぬくぬくとしていると、突然東堂に話しかけられた。

「う、うん」
「・・・そう」

なんだろう、すごく怪訝そうな顔をしている。何かあったのだろうか。すでにうとうとしていた脳味噌では思考がどうしても散漫としてしまう。すぐにでも眠ってしまいたくて寝返りを打つ。これ以上話すことはないという僕なりのサインだ。でも、東堂はそれを察してはくれなかった。何の信頼関係も得られていないであろう亜弥と東堂であれば、当たり前のことかもしれないが。

「熱でもあるんじゃないの」
「え?」

熱なんてあるはずない。確かにいつもより少しだけ寝る時間は早いかもしれないが、それだって慣れないことをしているからである。でも、亜弥は夜更かしとか平気でしていたんだろう。実家にいた頃も、徹夜でゲームしたとか言って日中眠そうにしていたことがあったことを思い出す。寮生活でもそれを続けていたとすると、同室の東堂としては迷惑極まりないだろう。

「別に、熱なんてない」

せっかく話しかけてくれたのに、そっけなく返すことしかできないのが心苦しい。東堂は僕の返事を聞くと、ふうんとだけ言った。会話はそこで終わってしまった。
彼は先ほどまで続けていた勉強を終わらせることにしたようだった。部屋が暗くなり、サイドランプの橙色がぼんやりと灯った。きっとまだ途中だったはずなのに。言葉にはしないが、亜弥を気遣ってくれたのかもしれない。

東堂は、すごくいい人だと思う。嫌いな相手にも気遣いできる人なんてなかなかいないだろう。やはり亜弥の兄としていつかお詫びしないといけない。

仄暗い明かりに導かれるように、僕はいつの間にか眠りに落ちていた。

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