古塔の魔女は異世界人

宮瀬

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こんな高待遇あっていいのだろうか。至れり尽くせりで逆に怖くなってしまうほどである。元より出不精で人見知りしがちな私にとって、辺境地という言葉は非常に魅力的でしかなかった。
そして、木箱の横に添えられていた本はどうやらこの世界で暮らしていくために必要な知識が簡潔にまとめられている所謂説明書のようだ。この国の地図や文化、物価なども記されていたので、これなら街に出ても無事に買い物ができそうである。この異世界転移、少々過保護すぎではないだろうか。

「ここまでされると何だかゲームでもしている気分になってくるな」

おそらく私の他にこの世界に転移した人にも同じような価値の物が与えられていると考えられるが、自分は確かに運が良いと思う。最初から雨風を凌げる家を手に入れられるし、今のところ外敵に脅かされる心配もない。いつか春野達と合流できたらいいとは思うが、人付き合いがあまり得意ではない私にとって自分のペースで状況を受け入れることができるこの環境はこれ以上ないくらいの贈り物だった。

「うーん、何をすればいいんだ?」

やるべきことは沢山ある。そもそもこの部屋から一歩もでていないのでここが一体国のどの辺りに位置しているのかも分からないし、そもそも元の世界に帰れるのだろうか。そこまで考えたところで、ぐううと腹から気の抜けた音が鳴った。

「お、おなかすいた・・・」

今現在最も差し迫っているのは食料問題のようだった。
どうにも腹の虫が収まりそうもなかったので、まずこの建物を探索することにする。気前よく家をくれるほどなのだ、きっと1日分の食料くらいは用意されているはずである。

部屋から出るとすぐ目の前に螺旋階段があった。どうやらここは塔の最上階らしく、階下への階段が続いている。とりあえず1階まで降りたところで、この塔が13階建てであることに気づいた。正直もう一度最初の部屋に戻る体力はない。そして、一番印象的なのが膨大な本の数である。世界中の本を集めたのではないかと言うほどの数の本が、壁に埋め込まれた棚に収納されているのだ。地上に降りる途中で何部屋か覗いてみたものの、その全てが本で埋め尽くされていた。
そして、肝心の台所は確かに存在していた。1、2階は居住スペースになっているようで、キッチンのほかに浴室や寝室が兼ね揃えられていた。殆ど1、2階で生活が完結しそうなのはありがたい。食料も2週間ほどは裕に贅沢できるほど保管されており、目下の心配事は解消されたことになる。
「パンにチーズ、卵もある。景気づけにちょっと豪華にしちゃおうかな」
先ほどから鳴り止まない腹と高鳴る胸を押さえつつ、食事の用意を始めた。

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