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ハルが去ってから早1週間が経った。あれから私はひたすら魔法薬を作る勉強をしたり、庭で魔法の練習をしている。簡単に言ってしまえば敷地内から一切外に出ていない引きこもり生活を送っているのだが、これもいち早くギルドの依頼をこなせるようになるためである。作業机を囲むようにして様々な魔法器具や書物が積まれているが、決して整理整頓ができていない訳ではない、決して。今朝、なんとか一番初歩の魔法薬を作ることに成功した私は上機嫌で出来たてほやほやの魔法薬を眺めていた。あまり報酬は高くないが、とりあえずはこの魔法薬を量産してギルドに納品しよう。小瓶に詰められたそれは薄い水色をしていて、少し揺らすと中で金色の粒子がキラキラと輝いている。所謂回復薬というものらしい。書物を読み漁り、1週間かけて初めて出来上がったそれに思わず口角が上がる。
「本当に魔法使いみたいなことしてるなあ」
幼い頃にこうした魔法の類に憧れたことはあったが、まさか将来の自分が実際に魔法が存在する世界に飛ばされて、魔女になるなど想像していなかった。つい先月まで制服を着て高校生活を送っていたはずなのに、今の私は長めのローブを身にまとい、まるで最初から魔女であったかのように、朝から晩まで“魔法漬け”である。
ーーーチリリン
一度休憩しようと立ち上がったとき、来客を告げるベルがなった。決して大きな音ではないはずなのに塔のどこの部屋にいても必ず聞こえる不思議なベルだ。この塔に住み始めてから、時々こうして何者かが訪れてくることがある。大抵は近くの村の住人が「魔女」に頼み事をしにくるか、そのお礼にお裾分けを持ってきてくれたりする。今回もそうだろうと、髪と目の色を変える呪文を唱えながら簡単に身なりを整え階下へ降りる。作業部屋は2階の端あるため移動が少々大変なのが難点である。来客がある度に髪と目の色を変えていたこともあり、すっかり身についたその呪文は私の一番の得意魔法である。
「はーい、今あけまーす」
少々間延びした声で訪問者に呼びかける。声に疲れが滲んでいるのはご愛嬌だ。果たして、ドアを開けた先に待っていたのは見知った村の住人ではなく、ある意味それ以上によく知る人物であった。
(は、春野くん?!)
すんでのところで叫び声を抑える。これは疲れが見せた幻想か、それともハルの時のようにいつの間にかそっくりな使い魔を生み出してしまっていたのだろうか。どうやら来客は一人ではなかったらしく、春野君の隣にいた人物が声をかけてくる。彼は騎士らしく、屈強な体つきで腰に剣を下げていた。
「突然の訪問、申し訳ない。俺たちは王都の騎士団から依頼されてやってきたのだが、魔女殿はどちらにおられるだろうか。」
「ええと、一応私が魔女ですが・・・」
目の前の人物は私が魔女であるとは思わなかったのだろう。私も同じ気持ちである。彼は少し目を見開いた後、気を取り直したように佇まいを直し話し出した。
「失礼。俺は騎士のアンドリューで、こっちのはユーリと申す。突然で申し訳ないのだが、魔女殿が有する膨大な書物の知識をお借りしたい。」
なるほど、彼らはこの塔にある本を借りにやってきたらしい。たしかにそこらの図書館よりも量があるもんなと納得する。春野君と思しき人物もいるし、もう一人も怪しい人物ではなさそうだと塔の中に案内する。しかし、この塔の全容は私も把握しきれていないのだ。住居区域を除いて自由に探してくれて構わないと伝えることにした。
それにしても、先ほどから春野君からの視線を感じる気がする。もしかして私が同じ転移者だと気付いたのだろうか。いや、話しかけてただの勘違いだったら恥ずかしすぎるが。正直「誰?初対面だよね?」などと言われてしまえば余裕で部屋に引きこもってしまう自信がある。一人で悶々としている間に、いつの間にかアンドリューさんの姿が見えなくなっていた。どうやら上の階に行ってしまったらしい。思わぬところで春野君と二人きりになってしまい鼓動が速くなるのを感じる。元の世界でもここまで至近距離で二人になることはなかったはずだ。
「小梨さん・・・だよね?」
「あ、えっと、春野くん・・・?」
「本当に魔法使いみたいなことしてるなあ」
幼い頃にこうした魔法の類に憧れたことはあったが、まさか将来の自分が実際に魔法が存在する世界に飛ばされて、魔女になるなど想像していなかった。つい先月まで制服を着て高校生活を送っていたはずなのに、今の私は長めのローブを身にまとい、まるで最初から魔女であったかのように、朝から晩まで“魔法漬け”である。
ーーーチリリン
一度休憩しようと立ち上がったとき、来客を告げるベルがなった。決して大きな音ではないはずなのに塔のどこの部屋にいても必ず聞こえる不思議なベルだ。この塔に住み始めてから、時々こうして何者かが訪れてくることがある。大抵は近くの村の住人が「魔女」に頼み事をしにくるか、そのお礼にお裾分けを持ってきてくれたりする。今回もそうだろうと、髪と目の色を変える呪文を唱えながら簡単に身なりを整え階下へ降りる。作業部屋は2階の端あるため移動が少々大変なのが難点である。来客がある度に髪と目の色を変えていたこともあり、すっかり身についたその呪文は私の一番の得意魔法である。
「はーい、今あけまーす」
少々間延びした声で訪問者に呼びかける。声に疲れが滲んでいるのはご愛嬌だ。果たして、ドアを開けた先に待っていたのは見知った村の住人ではなく、ある意味それ以上によく知る人物であった。
(は、春野くん?!)
すんでのところで叫び声を抑える。これは疲れが見せた幻想か、それともハルの時のようにいつの間にかそっくりな使い魔を生み出してしまっていたのだろうか。どうやら来客は一人ではなかったらしく、春野君の隣にいた人物が声をかけてくる。彼は騎士らしく、屈強な体つきで腰に剣を下げていた。
「突然の訪問、申し訳ない。俺たちは王都の騎士団から依頼されてやってきたのだが、魔女殿はどちらにおられるだろうか。」
「ええと、一応私が魔女ですが・・・」
目の前の人物は私が魔女であるとは思わなかったのだろう。私も同じ気持ちである。彼は少し目を見開いた後、気を取り直したように佇まいを直し話し出した。
「失礼。俺は騎士のアンドリューで、こっちのはユーリと申す。突然で申し訳ないのだが、魔女殿が有する膨大な書物の知識をお借りしたい。」
なるほど、彼らはこの塔にある本を借りにやってきたらしい。たしかにそこらの図書館よりも量があるもんなと納得する。春野君と思しき人物もいるし、もう一人も怪しい人物ではなさそうだと塔の中に案内する。しかし、この塔の全容は私も把握しきれていないのだ。住居区域を除いて自由に探してくれて構わないと伝えることにした。
それにしても、先ほどから春野君からの視線を感じる気がする。もしかして私が同じ転移者だと気付いたのだろうか。いや、話しかけてただの勘違いだったら恥ずかしすぎるが。正直「誰?初対面だよね?」などと言われてしまえば余裕で部屋に引きこもってしまう自信がある。一人で悶々としている間に、いつの間にかアンドリューさんの姿が見えなくなっていた。どうやら上の階に行ってしまったらしい。思わぬところで春野君と二人きりになってしまい鼓動が速くなるのを感じる。元の世界でもここまで至近距離で二人になることはなかったはずだ。
「小梨さん・・・だよね?」
「あ、えっと、春野くん・・・?」
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