カゴの中のツバサ

九十九光

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#4-4

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にしてトーク履歴削除して!』
 突然カナコから謝罪の文面がLINE上で飛んできた。頭を働かせる余裕のないツバサは無我夢中になって『わかりました』とだけ打ち込み、言われた通りにすぐに履歴を削除した。
 その日のLINEでのやり取りはそれだけだった。カナコはツバサの返信に既読をつけただけで、別のフォルダにこっそり保存していないかなどを問い詰めることはしなかった。すでに風呂に入ってパジャマに着替えていたツバサも、何かから逃げるように自分のベッドの中へと潜り込んだ。
 その日のツバサは、いつまでたっても寝付けなかった。布団の中で何時間横になっても、一向に眠気がやってきてくれなかった。性的なカナコの画像を見て、自分の身に起こった変化の理由など考える余裕もなく、訳の分からないことへの恐怖心がいつまでたっても自分の脳内に居座り続ける。気を紛らわそうと動画サイトでアニメを見たり、普段めったに開かない母親が買ってきた伝記に目を通したりしてみたが、頭の片隅には恥部を隠す気のないカナコの姿が張り付いていた。
 雨の音は次第に大きくなっていく。まるで取り返しのつかない罪を犯したツバサに投降を呼びかけるように、窓に打ち付ける雨粒の音はその音量を上げていった。
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