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#6-2
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の倍近い量の課題を勝手に付け足してくる。ツバサにとっての休日は、これらの尋常ではない量の仕事をこなすための日だった。今までのスパルタ教育の中で、この量をこなすこと自体は苦に感じなくなっていたが、ゆっくりと羽を休めるかと言えば、決して休めることはできなかった。
そんな日に家から飛び出し、どこか遠くへ出かけることができると考えただけで、ツバサの心は軽やかに踊りだしていた。今まではカナコからのLINEでしか知ることができなかった世界を自分の目で直接見に行けることが、楽しみで仕方なかった。
「ツバサくーん!」
そしてそのツバサに、老若男女が行き交う雑音だらけの空間でも透き通って聞こえる声が呼びかけてきた。ツバサがその方向に首を曲げると、私服を着たカナコがいた。
カナコの私服そのものは、彼女がLINEに送ってくる写真で何度か見たことはあった。しかし実際に自分の目で見てみると、いつもの決まった制服姿より似合っているように、ツバサには感じられた。クリーム色の大きめのチュニックの上から深い青色をしたデニムジャケットを羽織っており、黒いレーススカートから白い脛が見えていた。足には黒色のスニーカーが履かれており、安物に見えてくるその表面は、無駄に大金を積むことがファッションではないと言いたげに、光の反射を拒んでいた。長い黒髪は、普段とは違い髪留めで束ねられておらず、そのままの姿で彼女の肩にかかっていた。肩にはツバサのポーチより倍近く大きなショルダーバッグをかけており、財布とスマートフォン以外にも色々なものが入りそうだった。
「ゴメンね。待たせちゃった?」
「大丈夫だよ。今来たところ。」
申し訳ないという意思のあるカナコの言葉に、ツバサはベンチから立ち上がりながら気さくに答えた。会話だけなら完全に大学生以上の若者のそれだが、実際の会話の主は女子高生と男子小学生である。姉弟以外の関係など、二人を知らない赤の他人が見ても想像もつかないだろう。
二人はカナコを前にして、広場の横穴に該当する通路から地下鉄の改札へと歩いていく。目的地は地下鉄ナゴヤドーム前矢田駅すぐそばの、全国チェーンの大型ショッピングモール。今いる栄駅とは違い、ツバサが持つICカードと一体化した学生定期で行ける範囲外の駅である。カナコは二人分の切符を購入すると、1枚ツバサに渡して改札を通過した。ツバサも切符を改札に入れ、新鮮な気持ちで数分前に通ったばかりの改札に入りなおした。
そんな日に家から飛び出し、どこか遠くへ出かけることができると考えただけで、ツバサの心は軽やかに踊りだしていた。今まではカナコからのLINEでしか知ることができなかった世界を自分の目で直接見に行けることが、楽しみで仕方なかった。
「ツバサくーん!」
そしてそのツバサに、老若男女が行き交う雑音だらけの空間でも透き通って聞こえる声が呼びかけてきた。ツバサがその方向に首を曲げると、私服を着たカナコがいた。
カナコの私服そのものは、彼女がLINEに送ってくる写真で何度か見たことはあった。しかし実際に自分の目で見てみると、いつもの決まった制服姿より似合っているように、ツバサには感じられた。クリーム色の大きめのチュニックの上から深い青色をしたデニムジャケットを羽織っており、黒いレーススカートから白い脛が見えていた。足には黒色のスニーカーが履かれており、安物に見えてくるその表面は、無駄に大金を積むことがファッションではないと言いたげに、光の反射を拒んでいた。長い黒髪は、普段とは違い髪留めで束ねられておらず、そのままの姿で彼女の肩にかかっていた。肩にはツバサのポーチより倍近く大きなショルダーバッグをかけており、財布とスマートフォン以外にも色々なものが入りそうだった。
「ゴメンね。待たせちゃった?」
「大丈夫だよ。今来たところ。」
申し訳ないという意思のあるカナコの言葉に、ツバサはベンチから立ち上がりながら気さくに答えた。会話だけなら完全に大学生以上の若者のそれだが、実際の会話の主は女子高生と男子小学生である。姉弟以外の関係など、二人を知らない赤の他人が見ても想像もつかないだろう。
二人はカナコを前にして、広場の横穴に該当する通路から地下鉄の改札へと歩いていく。目的地は地下鉄ナゴヤドーム前矢田駅すぐそばの、全国チェーンの大型ショッピングモール。今いる栄駅とは違い、ツバサが持つICカードと一体化した学生定期で行ける範囲外の駅である。カナコは二人分の切符を購入すると、1枚ツバサに渡して改札を通過した。ツバサも切符を改札に入れ、新鮮な気持ちで数分前に通ったばかりの改札に入りなおした。
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