和製切り裂きジャック

九十九光

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#1-3

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本部捜査一課警部補の湯浅泰三は助手席で伸びをしながら、車を運転している同じく刑事の橋本隆に向かって持論を展開した。
「まあ、そうでしょうね」
 三十代の橋本は五十代の湯浅の発言に対して、無表情で運転に集中しながら簡単な返事をした。
 後部座席には捜査一課の刑事二人が座っていたが、彼らは何も言わなかった。正確には、橋本が湯浅の話をいきなり終わらせたせいで、発言のタイミングそのものを奪われていた。
 そのまま何一つ会話が起こらないまま、橋本が運転する車は平和公園南側で唯一の駐車場に停車した。そこにはほかの各種警察車両がすでに何台か到着しており、すでに物々しい雰囲気を醸し出している。車から降りた公務員の集団は、枯れて地面に寝ている雑草で舗装された道を歩き、問題の現場へと足を踏み入れた。
 遺体発見現場は新人や警察関係者以外には騒然とした状況だったが、湯浅たちには多少見慣れた光景だった。
 黄色の規制線の向こうで寝ている女の遺体は、第一発見者の女性が見た時とは違い、日が完全に昇って明るくなったことで、より多くの情報を視覚に向かって発信していた。遺体の首の断面からは細い管のようなものが引きずり出され、ビニールゴミのように水面に浮かんでいる。カラスが遺体から引っ張り出した食道だった。遺体近くの水場は流れ出した血で染まっており、水で薄めたうがい薬のような色合いになっていた。遺体の肌も、背面は血管内に血が溜まって真っ黒に染まり、腹部も麦茶のような色になっている。死後数日は経過している証拠だった。第一発見者への事情聴取は、規制線の外側で派出所の職員が行っていた。通勤、通学ラッシュと時間が被っていたおかげか、物珍しさからのやじ馬は一人もいなかった。
 湯浅がその事情聴取に加わるよう橋本に指示を出し、橋本はけだるそうに返事をして指示に従った。これを皮切りに、湯浅の指示が現場を飛び交い始めた。
 鑑識たちは現場検証などで指紋や毛髪などを探し始め、それが一通り終わると、遺体は司法解剖のために市内の法医学系の大学に運び込まれる。担当する監察医は、胃の内容物や体の表面に現れなかった傷、女性器内に残された精液などを血眼になって捜索する。各種カードや携帯端末が財布とともに見つからなかったため、身元をすぐに割り出すことはできなかった。だが名古屋市在住で現在連絡が取れない女性をしらみつぶしに当たった結果、遺体発見から三日後に判明した。
 首をはね、それを祭壇に置かれた生贄のように遺棄するという個人の思いが込められた殺し方から、捜査一課はこの事件を被害者に近しい人物による犯行と判断した。遺体が全裸で見つかっていることを考えれば、性的な暴行をされた可能性が高いことも予想できる。あとは被害者と関係があった男をしらみつぶしに当たれば、犯人はその中からすぐに見つかる。誰もがこの事件について、そう楽観的に考えていた。
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