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#4-5
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もかかるうえ、気温が十度を下回ることが当たり前の時期の我慢勝負だ。やってみればわかるがめちゃくちゃつらい。
そして、この張り込み作業に期待も何も感じることがなくなり、顔を朝洗う時みたいに無感情になり始めた六日目の朝七時十分。ついに奇跡は起こった。
この日も道中の自販機でホットココアの缶を購入してお供えの列に陳列。腰を下ろして手を合わせていた、その時である。
「あの……。もしかして高宮さんのお知り合いの方ですか?」
明らかに年を取ったおばさんの声が、私に後ろから話しかけてきたのだ。私が振り返ると、髪をブラウンに染めたおばさんと、ほとんどの髪の毛が抜けてなくなっているおじさんが花束を持って立っていた。二人ともどこか値段が張りそうなコートを羽織っており、足元は黒いヒールに革靴と、しっかりとした身なりをしていた。
「あ、いえ。私はこの近くに住んでる大学生で……」
立ち上がりながらそう言う私は、この二人が何者かわからなかった。『高宮さん』と言ったところを考えると、少なくとも被害者の家族ではないのはわかったが、それ以上のことはわからない。近所の住人だとしても、家の近所の事件現場へのお参りに正装をする必要性が感じられない。
そんな風に私が頭の中で二人の正体を探っていると、おばさんが言葉を続けた。
「私たち、この前の事件で亡くなった、的部の両親でして……」
なるほど、そういうことか。二つの事件は同一犯の可能性が高いから、同じ境遇の被害者遺族として山形からお参りに来たというわけか。
的部さんのお母さん曰く、いてもたってもいられなくなった二人は、深夜高速バスで名古屋までやってきて、すぐにこの一社の事件現場まで来たという。行動力のある五十代だ。
そして幸運というものは立て続けに起こるものらしい。
「皆さん……!」
私たち三人が声のするほうを向くと、手ぶらに安そうな上着を着た、中年を少し過ぎたくらいのおばさんが立っていた。この人は間違いなくこの近くに住んでいる人だろう。
「もしかして、高宮さんのお母さんですか?」
それまで一言も発しなかった的部さんのお父さんが、この近所のおばさんに質問した。すると質問されたおばさんが、両目に涙を溜めながら一回縦にうなずいて返事した。
二つの事件の被害者遺族が鉢合わせてしまった。しかもそんな小説みたいな偶然に、赤の他人の私が立ち会うことができてしまった。
私は一社の事件の被害者を知っている誰かであれば、最悪家族じゃなくてもいいと考えていた。それが願ってもいないことに、二つの事件の被害者遺族と同時に出会うことができたのだ。もう心の中では興奮しっぱなしでどうしようもない状態だ。できすぎているにも程があるくらいだ。「実はそこの曲がり角で打ち合わせてましたー!」と三人から言われ
そして、この張り込み作業に期待も何も感じることがなくなり、顔を朝洗う時みたいに無感情になり始めた六日目の朝七時十分。ついに奇跡は起こった。
この日も道中の自販機でホットココアの缶を購入してお供えの列に陳列。腰を下ろして手を合わせていた、その時である。
「あの……。もしかして高宮さんのお知り合いの方ですか?」
明らかに年を取ったおばさんの声が、私に後ろから話しかけてきたのだ。私が振り返ると、髪をブラウンに染めたおばさんと、ほとんどの髪の毛が抜けてなくなっているおじさんが花束を持って立っていた。二人ともどこか値段が張りそうなコートを羽織っており、足元は黒いヒールに革靴と、しっかりとした身なりをしていた。
「あ、いえ。私はこの近くに住んでる大学生で……」
立ち上がりながらそう言う私は、この二人が何者かわからなかった。『高宮さん』と言ったところを考えると、少なくとも被害者の家族ではないのはわかったが、それ以上のことはわからない。近所の住人だとしても、家の近所の事件現場へのお参りに正装をする必要性が感じられない。
そんな風に私が頭の中で二人の正体を探っていると、おばさんが言葉を続けた。
「私たち、この前の事件で亡くなった、的部の両親でして……」
なるほど、そういうことか。二つの事件は同一犯の可能性が高いから、同じ境遇の被害者遺族として山形からお参りに来たというわけか。
的部さんのお母さん曰く、いてもたってもいられなくなった二人は、深夜高速バスで名古屋までやってきて、すぐにこの一社の事件現場まで来たという。行動力のある五十代だ。
そして幸運というものは立て続けに起こるものらしい。
「皆さん……!」
私たち三人が声のするほうを向くと、手ぶらに安そうな上着を着た、中年を少し過ぎたくらいのおばさんが立っていた。この人は間違いなくこの近くに住んでいる人だろう。
「もしかして、高宮さんのお母さんですか?」
それまで一言も発しなかった的部さんのお父さんが、この近所のおばさんに質問した。すると質問されたおばさんが、両目に涙を溜めながら一回縦にうなずいて返事した。
二つの事件の被害者遺族が鉢合わせてしまった。しかもそんな小説みたいな偶然に、赤の他人の私が立ち会うことができてしまった。
私は一社の事件の被害者を知っている誰かであれば、最悪家族じゃなくてもいいと考えていた。それが願ってもいないことに、二つの事件の被害者遺族と同時に出会うことができたのだ。もう心の中では興奮しっぱなしでどうしようもない状態だ。できすぎているにも程があるくらいだ。「実はそこの曲がり角で打ち合わせてましたー!」と三人から言われ
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