和製切り裂きジャック

九十九光

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#5-1

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#5(三人称)


 名古屋市千種区星ヶ丘。東西に延びる県道の北側は、今まで紹介してきた一社や引山と大きくは違わない住宅地だが、南側の一部分からは百貨店や若者向けの新しい食文化の発信地が生まれている、古さと新しさが入り混じったエリアだ。最近では全国各地からニュース番組の取材班がやって来るようになり、東海圏以外にも少しずつ知れ渡るようになった場所でもある。
 もっとも、その理由は文化の発信地だからではなく、和製切り裂きジャック事件の最初の現場である平和公園のすぐ真南にあるからである。このような不名誉な理由で町の名が知れ渡ることには、地元愛の強い中年以上の住人の多くは不快感を持っていた。そして、そういった人々の支持を集めたいからなのか、純粋な地元愛からなのか、この時期の名古屋市内のテレビ局やラジオ局では、このエリアのグルメ特集が多く組まれていた。
 しかし月が変わり、二月十四日のバレンタインデーのチョコレート商戦も終わった最近では、この一帯にテレビカメラがやって来ることはなくなっていた。和製切り裂きジャックの仕業らしき、残酷な殺され方をされた遺体が出てこなくなったのだ。
 この間、愛知県警は和製切り裂きジャックの足跡を何一つ見つけ出せないでいた。中区にある繁華街の栄にまで範囲を広げて聞き込みを続けるも、役に立ちそうな情報は一つとして入ってこず、捜査は完全に停滞してしまっていた。
 メディアが取材をしなくなった理由も、この進展のなさにあった。まったく進展のない事件の話は、毎週同じロケ映像で放送を続けるバラエティ番組も同然であり、世間に流す意味がなかったのだ。
 そんなメディア構築が名古屋市民と日本中の人々から、あの凶悪なシリアルキラーの存在を忘れさせていた。
 そんな星ヶ丘の二月十六日の深夜一時に話は移る。
 この町の北側にあるマンション、そのすぐ横にある一般的な一軒家の敷地ほどの広さの小さな公園に、耳が隠れるくらいに髪を伸ばした背の低い一人の少年がやって来ていた。年齢は十四歳の中学二年生。黒地のジャンパーを着て防寒対策をした、仮に少年Aは、ブランコと砂場があるだけのこの公園で、ブランコに座って人を待っていた。
「いたいた」
「はえーな、あいつ。おーい、A」
 さらに二人の少年、BとCがそこに合流する。服装はAと大差がなく、野球部のBは昔ながらの丸刈り、Cは背の高いメガネの少年だった。
 二人に気づいたAはブランコから立ち上がり、ポケットに両手を突っ込み、寒がっているポーズで二人に近づいた。
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