和製切り裂きジャック

九十九光

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#7-3

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 しかし帰り道は、行きの時と違って様子がおかしかった。
 新興住宅の工事現場に差し掛かったところで、カラスの鳴き声を聞いたのだ。
 この辺一帯では夜中にゴミを捨てる人がいるため、カラスの活動時間も夜間に集中していた。暗闇に目が慣れてくると、カラスたちが工事現場に置かれた金属のカゴのゴミ箱に群がっているのが見えた。
 少し気味悪がりながら男がカラスの群れを横切ろうとすると、カラスたちは声を張り上げながら手近の電線に逃げていく。男は一度足を止めたが、すぐに前進を再開した。
 そしてすぐに、量販店で買った安い靴の裏がゴムのような感触の何かを踏んだ。手か足かの違いはあったが、小学生の頃に父がさばいた魚が持っていた内臓のような感触だった。
 何か恐ろしい感覚に襲われた男は、ゆっくりと工事現場のほうを、ついさっきまでカラスが群れていたほうに視線を向ける。中身は県道からのネオンの明かりでよく見えた。カラスも同じ理由で中身をついばむことができたことも同時に分かった。
 白髪頭の男の頭が、カゴの中いっぱいに入った廃材の上に乗せられていた。隙間にはバラバラにした男のものらしい手足が、詰め放題の袋の隙間に無理矢理ねじ込まれた根菜か魚のように差し込まれている。男の胴体は中身がなくなった一斗缶と何ら変わらないもののようにカゴの中に放り込まれており、カラスがついばみやすいように丁寧に腹を割いて五臓六腑が見えるようになっていた。腹の中身は内臓が本来の配置からだいぶかき混ぜられており、腹の中にあるべき長い蛇みたいな臓器はどこかになくなっていた。
 これを見た男は、大慌てでコートやズボンのポケットをまさぐってスマートフォンを探した。自宅に置いてきたことを思い出すと、足で踏んでいた大腸を蹴り飛ばして県道に戻り、手近な乗用車を止めて警察に通報させた。
 そして話は三月二日まで進む。男の通報から警察が捜査を開始し、現場から得られる情報を洗い出した頃だった。
 その日の湯浅は、自分のデスクに座って不機嫌そうな顔でデスクの上を見つめていた。デスクの上には彼の携帯電話が置かれているだけで、ノートパソコンの電源もつけていない。周囲の人間、特に若手は彼に声をかけられないでおり、お茶を出す者はおろか昨日の晩のうちに仕上がった報告書を出す者もいなかった。
「どうした、湯浅君」
 そんな湯浅に声をかけたのは、彼の同期の山下警部だった。
 仏頂面の湯浅と違い、表情通りの温和な性格の人物である。人を叱って伸ばす指導方針の湯浅に馴染めなかった若手をかばうこともあり、捜査一課では湯浅より人望のある人間でもあった。
 湯浅はそんな山下に対して、一回顔を合わせただけですぐにデスクの上に視線を落とした。何を考えているかが容易に想像できると言えば長所だが、ここまでくると協調性に難が出てくる短所だ。
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