和製切り裂きジャック

九十九光

文字の大きさ
88 / 166

#15ー6

しおりを挟む
ていたのだ。一課の人間たちからは、つい先ほどまで感じていた眠気が吹き飛んでいた。
そこに橋本が話を続けていく。
「先ほどの二つとも、特に高速道路の使用がつぶれた場合は、交通局のデータベースから該当の車両を持っている人物をしらみつぶしに確かめる。すべての軽トラック所持者の自宅と車両を捜査し、犯人につながる証拠を見つけ出す。皆さんにはここまでやる覚悟もしておいてください。
それと山下警部」
 突然名指しされたことで、山下の体が軽くはねた。
「これら捜査の指揮と、情報捜査課と交通局への連携願いをお願いします」
「あ、ああ。分かった」
 山下が壊れたおもちゃのように小刻みに頭を縦に振って返事をした。
 そして橋本は最後に、一課の刑事たち全体に向かってこう言った。
「和製切り裂きジャックは非常に頭の切れる犯罪者です。九件すべての犯行で何一つ証拠を残すことなく、三か月近く犯行を重ねてきました。そしてこういった犯行は、我々が逮捕するか犯人が死亡するまで、永遠に終わりません。敵は過去に例を見ないほど知的で、有力な手掛かりもありません。しかし我々が泣き寝入りするわけにはいきません。常識を疑い、犯人の思考を予想し、必ず次の犯行が起きる前にとらえなければなりません」
 ほかの人間たちの話術が、一発で相手を黙らせるスナイパーライフルだとすれば、今の橋本の話術は、手数と勢いで押しきる機関銃のような話術だった。一度狙いをつけられると話の主導権を取るのは困難だった。
 この演説の後、山下が立ち上がり、ほかの一課のメンバーを名指しして指示を出し始めた。それを受けた捜査員たちは、正気に戻ったように指示に従って動き始める。
 湯浅はこんな捜査一課をはじめて見たと感じた。今までの捜査一課は、起きた事件の捜査と、その捜査とは無関係な見回りや書類作成を並行して行う、身が入っていないやっつけ仕事のような勤め方をする者が大半だった。それが今は、全員が鶴の一声で自分の行動を決め、一つの事件解決のために力を注いでいる。自分の職場がここまで活気づいている様を、湯浅は今まで見たことがなかった。
「どこに行くんだ」
 湯浅は外に出ようとする橋本に声をかける。
「名古屋高速の本部に。監視カメラの映像提供の連絡はしておいたので」
 橋本はいつも通りの口調で返事をした。
「運転してやる」
 湯浅は迷うことなく彼についていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...