和製切り裂きジャック

九十九光

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#16-6

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い軽トラックも数台見られたが、それはこの病院の新棟設営工事のための工事車両だった。犯罪者が事務所の電話番号が印字された車なんか使うはずがない。
 まっすぐ進めなくなった私は、病院の外周を西側に進んだ。そこから最初にぶち当たった十字路を北に曲がり、今まで通りまっすぐ北に進むことにした。右手には医療センターが、左手にはより狭い道路の住宅地が見えた。和製切り裂きジャックが潜んでいそうな場所は、今進んでいるような、歩道と車道がこげ茶色のガードパイプで仕切られた片側一車線の明るい街灯の道ではなく、その左の狭くて静かで、時折トタンの壁が錆びて崩れている建物が見られる道だった。
 今の私はまるで猫だった。狭くて暗くて人通りの少ない場所に行きたがる猫だった。私は横断歩道まで行くことなく、通り過ぎる車に注意しながら道の途中で左の住宅地の中に進路を変え、そこから北へと進んでいった。
 この時の私が見たもの、聞いた物音、感じた感情は、おそらく全国どこの夜の住宅地でも体験できるものかもしれない。家々のカーテンは閉めきられ、平屋と二階建てと小さなアパートが入り混じって死角だらけになって、どうしても街灯が照らせていない箇所が複数生まれている、チープな肝試しができる空間になっている。私が待ち望んだ道だった。
 私は周囲の様子に気を配りながら、具体的な地名もよく知らないこの町の中を北へ向かって歩いていく。時刻は今現在夜の九時を過ぎていた。良識ある女の人なら、たった一人でこういう暗い道を歩こうとしない時間だった。ましてや今は正体不明の無差別殺人鬼が話題になっている。その傾向はますます強くなっているはずだ。
 私がこの道に入ってから人とすれ違うことは一度もなかった。どこまで歩いて行こうと、虫が集まる街灯が点々としている暗い道を、たった一人で北に向かうだけだった。
 でもやっぱり私は、この待ち望んだ道をひたすら進み続けることができることに、心の底から喜んでいなかった。この時の私は、おどおどしながら周囲を気にして、どこから何が飛び出してくるかを常に警戒しながら歩いていたと思う。池下の南側を歩き回っていた時と同じ心境だった。わざと人通りの少ない夜道を歩いて和製切り裂きジャックに会おうと行動しておいて、心のどこかでは、それが現実になってしまうことを怖がっていた。
 説明が難しかった。行動に移る前と後で、こんなにも気持ちにギャップが起きていることが不思議だった。ネット通販で取り寄せた服が思ったほど自分に似合ってなかったとか、その辺の感覚に近いような遠いような気持ちだった。なかなか会えないと何もかも投げ出して会おうとするのに、いざ会えるシチュエーションが目の前にやってくると、その気持ちが薄れてどこかへ流れていってしまう。頭の中で想像して夢に見るのはOKなのに、それを現実に再現させられるのは嫌がっている。
 私はわがままな人間だった。
 気がつくと私は走っていた。北に向かって進んでいることに変わりはなかったが、歩かずに走っていた。そして息が上がって思わずその場で立ち止まった時には、太い市街地の
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