和製切り裂きジャック

九十九光

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#20ー1

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#20(一人称)


 二〇一七年四月二十二日。テレビや新聞で流れるニュースは、どこかでながらスマホによる交通事故が起きたとか、どこかの国で大統領をめぐってトラブルが起きたとか、今まで通りの退屈な話に戻っていた。和製切り裂きジャック事件については、鈴木芳雄の近所の人たちが、「まさか鈴木さんちの息子さんが人なんか殺してるわけがないと思って通報できませんでした」とテレビカメラの前で語るのみになり、解決前までの報道関係者の熱はあっという間に沈静した(ただの強盗殺人を掘り下げて番組作るのは難しそうだから、無理もないと言えばそこまでだが)。
 この日私は、中区名古屋駅前にあるオフィスビルの一室に、新品のスーツを着てやってきていた。目的は今度こそ、就職活動である。
 和製切り裂きジャック事件が解決したことで、ママが本格的に就活をするように言ってくるようになったのだ。しかも、早い人なら四月の頭には内々定をもらっているという今の情勢をテレビニュースで知ったらしく、「あんたも早く動かないと社会人になれないわよ!」と、珍しく血相を変えて言ってきたのだ(そんな学生はごく少数だというのに)。そう言われてしまっては何もしないわけにはいかない。実家暮らしは食事作らなくていいね、と思われることが多いが、このように監視役がいるせいでサボることが一人暮らしより難しいのだ。
 それでこの日私は、空席がまだギリギリ残っていたところに滑り込む形で、地元のスーパーマーケットの会社説明会にしぶしぶやってきたのだ。
 周囲の学生は、皆一様にしわのないスーツに身を包み、席につくなり筆記用具を用意して、「御社が第一志望です」と言いたげに待機していた。きっとこういう人が、六月の経団連の面接開始前に内定をもらって、入社後もバリバリ頑張って成績を伸ばして出世していくのだろう。私とは正反対な人たちだ。
 いっそはっきり言っておこう。この私のパート、「この辺あなたのページがやたら少ない」と、出版社の担当にツッコまれたからしぶしぶ書いているだけで、別に読み飛ばされてもいいくらいのパートだ。そんなに書いてあることも重要じゃないし、この日私がどんな過ごし方をしていたかという補足のようなパートだ。不真面目で特に面白いドラマを起こせない女子大生に興味がなければ、さっさと次の増田レン氏のパートまで読み飛ばしてくれても構わない(こんな風に書くとまた後で担当から怒られそうだ)。
 この日の会社説明会では、この会社の経営における基本戦略が説明された。一言でまとめれば、できることは自分でやる。卸売りのシステムを自社内に作り、さらに商品の運搬も自社で所有するトラックでやる。メーカーが作るナショナルブランドよりも自社で作るプライベートブランドに力を注ぎ、最近は薬局やホームセンター、社員用のITシステム
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