和製切り裂きジャック

九十九光

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#21ー5

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 四日間音沙汰なし、家から出ている様子もなし。鍵のかかっていない部屋に入っても反応なし。普通の人間なら恐怖して当然の状況にもかかわらず、湯浅は顔色一つ変えていなかった。警察官としてこうした状況を何度も経験してきた賜物だとしか、氷川には想像できなかった。
 無言のうちに感心する氷川をよそに、湯浅はドアノブを手首で回して引いて開けた。
 その先には異常な光景が広がっていた。
 小さな洋風タンスがひっくり返っており、リビングの床全体に様々なものが散乱していたのだ。木製の椅子が一つ、コンセントとつながっていない延長コード、タンスから抜かれた引き出し、そこに入っていたらしい茶封筒や預金通帳、タンスの上にかぶせてあったらしい小さな水色の布、さらにその上に乗っていたらしい橋本と楓のツーショット写真に、彼女のものらしき位牌などが、リビングから足の踏み場を奪うようにぶちまけられていた。まるでこの場所でのみ大型の地震が発生し、物が揺れのショックで散らばったようにも見えた。だが地震と違うのは、ダイニングキッチンの奥にある食器棚のほうには何も異常がないことだった。
 ついこの間の話だった。湯浅はついこの間まで、現場をこのような形で荒らしていく連続強盗殺人犯を追いかけていたのだ。湯浅はこの部屋の荒らし方に、例の事件と似たものを感じ取っていた。
「な……! なんですかこれ!」
「……。何かあったんだろ」
 自分の後ろで大声を出す氷川に、湯浅は落ちついた声で分かりきった答えを返した。
「和室にはいなかったんですよね!」
 湯浅の背中から離れた氷川が、ダイニングキッチンの奥を覗き込みながら確認する。そこは冷蔵庫の動力源が動く波のない音が聞こえるだけで誰もいなかった。
「ああ。いなかった」
 湯浅は氷川の背中を見ながら答えた。
「警察呼んだほうがいいですよね!」
 氷川が振り返ると、湯浅はそこにはいなかった。彼が慌てて廊下に飛び出すと、湯浅は玄関手前、そこから見て左の壁にある、トイレのドアを開けて中を確認していた。
「警察はもう少し待ったほうがいい。事件性は高いが、まだ二人で無事を確認できないと決まったわけじゃない」
 そんなことを言う湯浅の後ろから、氷川がトイレの中を覗き込むと、そこには誰もいなかった。白いプラスチック製のふたが閉められた白い陶器製の便器があり、マットもトイレットペーパーも手荒いタオルも、以前自分が設置した状態のままで存在していた。
「いやいやいやいや! これどう見ても事件でしょ! リビングぐちゃぐちゃだったじゃないですか!」
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