和製切り裂きジャック

九十九光

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エピローグー1

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#エピローグ(一人称)


 そして時間を十一年後の二〇二八年に戻す。
「しっかし驚いたよ。遺族の人たち、ほとんど取材断らなかったもんね」
 増田氏のこの台詞に、「ホント。それだけこの事件を風化させたくないんでしょ」と、私は彼の左目の泣きぼくろを見ながら答えた。
 大輔君は大学卒業の六年後に好代ちゃんと結婚し、性を山本から角田に変えて東京に移り住んでいた。一年前に増田レンという名前でSF作家として去年デビューしており、奥さん思いの優しい男性作家という売り文句で、その年の人気作家に数えられた(本当にその年だけだったのだが)。ちなみに奥さんの好代ちゃんはこの時妊娠八か月で、勤め先を産休して実家に帰っている。
 和製切り裂きジャック事件はその年の下半期にはメディアに取り上げられなくなり、今から半年前にやった街頭インタビューでは、覚えてないと答えた人が九割を超えるまでに風化した。こうなった理由は二つあり、一つは、二人の和製切り裂きジャックが両方とも動機が薄っぺらすぎたこと。そしてもう一つは、同じ年の秋に神奈川の座間市で九遺体遺棄事件が起きたことだった。一応、座間市の遺体遺棄事件について説明すると、男性一人に女性八人を殺害してバラバラにして、遺棄したマンションの部屋の中で自分も住んでいたという、平成最後の猟奇殺人事件だ。こんなのが同じ年の後から起きたとなれば、ただの強盗殺人にストーカーから発展した殺人事件なんか忘れ去られて当然と言えば当然だ。
 こんな状況だったからこそ、被害者遺族たちはこの本の取材に協力的な人が多かったのだ。というかこの、『絶対にあの事件を風化させてはならない』という遺族会の人たちの思いがなかったら、こんな無名な事件のノンフィクションなんて採算取れないと、出版社が企画を受理しなかったとすら思える。
 まず、最初の被害者、的部美鈴の両親は、日本のマスメディアの報道の仕方、SNSへの悪質なコメントに異を唱える活動をしていた。事件の当事者たちの気持ちを考えずに、その場の勢いだけで当事者たちへのプライバシー侵害や誹謗中傷を、彼、彼女らの気持ちも顧みないで発信するこれらの流れと戦っているのである。自分の娘が当初そういう被害を受けたのが理由なのは確認するまでもなかった。私自身がこの二人の宿敵のような立場にいたこと、十一年前に的部さんの知り合いだと嘘をついていたことが原因で、この二人からアポを取るのには苦労させられた。この二人がメディアの人間を極端に嫌っていなければ、この本の出版はもう少し早くなっていたかもしれないのに(というか当時の私がバカなことしなければよかっただけなのだが)。
 二人目の被害者、高宮詩織の両親は、老々介護で苦労していた。高宮さんのお父さんは事件発生の二年前から大腸癌を患っていた。それも、一度完治したと思ったら別の場所に
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