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♯1ー4
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「す、すいませ」
「あなた、廊下で生徒に声をかけられて、その子の名前を思い出すために胸の名札をいちいち確認するの? 普通の教師ならしないわよ、そんなみっともない真似。ましてやそれが、自分が担当する学年ならなおさら。いいですか? 樋口先生にはこれから一年間、問題のある生徒を受け持ってもらうことになってます。その子のためにも、まずはあなたが立派な先生としての自覚を身につけなさい」
「は、はい。それは私も重々承知しております。三年生は受験もありますし、最後の県大会やコンクールがあって何かと大変ですから」
私は小刻みに頭を下げながら、心の底から思っていない自己改革の意思を小林先生に伝える。ところがこれは、かえって彼女に油を注ぐ結果になってしまった。
「そういう話じゃないって勘づきなさい。そんな全生徒に言える話なら、いちいち一人の生徒を引き合いに出したりなんかしないでしょ。確かに生徒全体の心のケアも大事だけど、内田君はほかの生徒よりずっと深刻なのよ」
え? ほかの生徒より深刻?
小林先生の言っている言葉の意味がすぐに分からなかった私は、頭を上げて彼女の顔を見る。顔全体が風邪を引いたようにピンク色に変化しているが、元からこんな顔の色だったかもとも思えてきた。
私がその内田という転入生の問題に対して質問すると、「ちょっと待ってなさい。持ってくるの忘れた」と言って小林先生は一度自分の席に戻っていった。三十秒ほど直立不動で待っていると、小林先生は一つの書類を私に手渡した。青色のゼムクリップで留められた、A4二枚分の書類だった。
「この場で確認しても……」
「早くなさい」
私は小林先生の許可をもらい、その書類に目を通した、一枚目の表面には、その内田平治の漢字表記と読み仮名、モノクロの顔写真が印刷されていた。不機嫌そうにも見える無表情な顔をしていて、耳が隠れないくらいに揃えられた寝ぐせのない髪の毛をした少年だった。さすがにこれだけだと話の全容が見えてこない。私は視線を紙の下へと動かしていき、さらに書類を読み進めていく。そして私は、彼の名前の下にあった、以前通っていた学校の名前を見て、事の真相を察した。
『宮城県仙台市立藤塚中学校』
「あなた、廊下で生徒に声をかけられて、その子の名前を思い出すために胸の名札をいちいち確認するの? 普通の教師ならしないわよ、そんなみっともない真似。ましてやそれが、自分が担当する学年ならなおさら。いいですか? 樋口先生にはこれから一年間、問題のある生徒を受け持ってもらうことになってます。その子のためにも、まずはあなたが立派な先生としての自覚を身につけなさい」
「は、はい。それは私も重々承知しております。三年生は受験もありますし、最後の県大会やコンクールがあって何かと大変ですから」
私は小刻みに頭を下げながら、心の底から思っていない自己改革の意思を小林先生に伝える。ところがこれは、かえって彼女に油を注ぐ結果になってしまった。
「そういう話じゃないって勘づきなさい。そんな全生徒に言える話なら、いちいち一人の生徒を引き合いに出したりなんかしないでしょ。確かに生徒全体の心のケアも大事だけど、内田君はほかの生徒よりずっと深刻なのよ」
え? ほかの生徒より深刻?
小林先生の言っている言葉の意味がすぐに分からなかった私は、頭を上げて彼女の顔を見る。顔全体が風邪を引いたようにピンク色に変化しているが、元からこんな顔の色だったかもとも思えてきた。
私がその内田という転入生の問題に対して質問すると、「ちょっと待ってなさい。持ってくるの忘れた」と言って小林先生は一度自分の席に戻っていった。三十秒ほど直立不動で待っていると、小林先生は一つの書類を私に手渡した。青色のゼムクリップで留められた、A4二枚分の書類だった。
「この場で確認しても……」
「早くなさい」
私は小林先生の許可をもらい、その書類に目を通した、一枚目の表面には、その内田平治の漢字表記と読み仮名、モノクロの顔写真が印刷されていた。不機嫌そうにも見える無表情な顔をしていて、耳が隠れないくらいに揃えられた寝ぐせのない髪の毛をした少年だった。さすがにこれだけだと話の全容が見えてこない。私は視線を紙の下へと動かしていき、さらに書類を読み進めていく。そして私は、彼の名前の下にあった、以前通っていた学校の名前を見て、事の真相を察した。
『宮城県仙台市立藤塚中学校』
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