イレブン

九十九光

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♯2ー9

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がその被災者かを知っていて、一斉に列の前のほうにいる彼に視線を向けた。

 私がその場に立ったまま周囲を見渡すと、出入り口側の壁際にいた小林先生が一歩前に出てくる。動揺する生徒たちを静かにさせようとしているのは明白だった。

「騒ぐな、お前ら!」

 マイクなしで体育館全体に響いた怒声は、一瞬で全校生徒の思考回路をストップさせ、館内に静寂をもたらした。結果はこれでよかっただろうが、何かがおかしい。

 こうして体育館が静まり返ると、壇上の校長は何事もなかったかのように話を続けた。

「えー、皆さんにも、そういう悲しい経験をした友達がいるということを理解してほしくて、こういう話をさせてもらいます。それでは、三年二組の内田平治君。もしよかったら、壇上まできてくれないかな?」

 あーあ。クラスと名前まで言いやがった。被災した子供への対応マニュアルがないから独自のやり方で学校全体への理解度を広めるしかないのは分かるが、この傷口に塩を塗りこむようなやり方はどうなのだろうか。

 新しい情報の開示を受けて、再び全校生徒がざわめき始める。二組の生徒たちも、「やっぱりあいつがそうか」というような内容の話を近くの生徒たちとし始めた。

 私は慌てて男子の列の前方に向かった。「もしよかったら」という佐久間校長の言葉から察するに、事前の打ち合わせがないのは明白だ。私もそんな話は聞いてないし。

 肝心の内田本人は、真後ろに座る伊達から、「おい、お前マジで地震で家族死んだのかよ?」と小声で話しかけられていた。本人は視線を後ろに向けて、その話を無表情で聞いている。

「ちょっといいか、伊達。静かにしてて」

 私は二人の間に手を差し込んで、伊達から内田を離した。その内田の前方に座る、声変りがまだ来ていない桐林隼人からも、「先生、その子、本当に地震の被害者なんですか?」と話しかけられる。それに対して私は、「あとで答えるからちょっと待ってて」と言って受け流した。

「内田、行けとは言わないよ。無理に行かなくていいからね」

 私は内田の両肩に手を置きながら、彼の顔を見てそう言った。その内田本人は、相変わらずいつも通りの無表情を貫き、無言のまま体育座りをしていた。自分のことだという自覚があるのだろうか。

 すると内田は、両肩にある私の手を軽い力で払うと、その場から立ち上がって壇上へと進んでいった。直角に進んで直角にカーブし、ステージ階段の前に来ると館内全体に向かって
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