イレブン

♯３ー11

「娘から聞いてますよ。お宅の内田君、全校生徒の前で父親にレイプされたなんてでたらめ言ったり、先生や親切にしてくれた同級生に対して反抗的な態度を取ってるそうじゃないですか。お宅のしつけはどうなってるんですか！　あれですか？　震災で前の学校の友達や家族を亡くしてるってのを理由に、学校でやりたい放題してきなさいって言ってるんですか？　どうしたらそんな考えに行き着くんですか！　地震で誰を亡くしたかなんて知りませんけど、それを理由に学校全体のまとまりを台無しにするようなことをさせないでください！　そもそもそんな問題のある子供を、どうして身障者用の学校に入れないんですか！　それに震災被災者なら、放射線の問題とかもありますよね？　そこはちゃんと検査してるんですか？　あとで調べてやっぱり被ばくしてましたって話だったら、あなた私たちにどう責任取るつもりなんですか！」

　なんだか話が本筋からそれてきた。さすがにこれ以上放置しておくのは、会の進行的にまずそうだ。

「松田さん、ちょっと落ち着いてくださいませんか。話が本来の議題からそれて」

「黙ってなさい、あなたは！」

　松田母の銃口がこっちに向いた。

「あなた、うちの里穂と内田君の担任ですよね？　どうしてうちの子をそんな問題児と同じクラスにしたんですか！　昨年度の末に頼みましたよね？　うちの子の担任を新貝先生にしてほしいって。なんで保護者の要望を無視するようなクラス分けにしたんですか！　それもあなたみたいな、経験も浅くて生徒とのスキンシップもまるでしない人のクラスに！　あなたたちは保護者と生徒をなんだと思ってるんですか！」

　また話が変わってしまった。私だって好きであんたの子供の担任になったわけじゃないのだからお互いに我慢しようよ。

　さすがにこんな心の声を肉声にするわけにはいかないので、私は周囲を見渡して助けを求めた。

　椅子に座る保護者各位は、「また松田さんの教師いびりが始まったわ」と言いたげに隣同士で眉をひそめるか、「松田さんの言う通りです。東中の先生は生徒のことを微塵も考えていない」と言いたげにこっちをにらみつけて腰を据えている。壁際に横一列になって立つ同僚たちは、「そろそろ止めに入ったほうがいいですかね」「だとしても誰が行きます？」とでも相談するかのようにお互いに顔を合わせており、小林先生は私のほうを見て、「早くなんとか落ち着かせろ」と言いたげに表情と手で合図を送っている。どうしてこういう時だけ弱