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♯4ー4
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を共にし、固い絆(一部例外あり)で結ばれたこの生徒たちの団結力に我々教員が追いつけていない。それが山田先生をはじめとした重役たちの考えだった。要は、一定レベルの学力があるから学級崩壊じゃない。学級崩壊じゃないからこのままの状態にしておいても問題ない、という話なのである(そんな馬鹿な)。
そろそろ話を五月六日の出来事に戻そう。
この日の一時間目。私は静かな一組の教室で、文明開化直後の日本史について教えていた。騒ぐ生徒は一人もおらず、板書の合間に窓から南側の景色を一瞬だけ見ることもできた。
雑巾などが干してあるベランダの向こう側からは、二組と四組の男子生徒の声が聞こえてくる。西側にあるこの教室からは姿が見えないことを考えると、東側のスペースに集まって鉄棒か幅跳びでもしているのだろう。校庭の奥にはコンクリート製の平屋が見える。屋外の体育倉庫と外で行う運動部の部室が一つになった建物だ。さらにその奥に目をやると、野球部のボールが飛んでいかないようにするための高いネットが張られ、そこから向こうは学校とは無関係の広い空き地である。空はあいにくの曇天だが、空き地では緑色のススキやセイタカアワダチソウが高い背丈を自慢し合う、絵になりそうな光景が広がっていた。
騒がしいうちのクラスと同じ学校のクラスとは思えないほど静かで、生徒が勝手に作った掲示物が何一つない教室内で、とても平和な時間が過ぎていった。まだ今年で三年目だが、教員としてこれほど働きやすい環境もそうはないだろうと感じる。白いチョークの字に黄色いチョークで下線を引きながら、いっそ二組以外のクラスの授業だけを受け持ちたいと考えてしまう(教師として最低の発言だ)。
その次の瞬間だった。
「おい、何やってんだ、石井!」
閉めきっていたベランダの窓ガラス越しに、体育教師の山田先生の声が響いてきたのだ。
一組の生徒は全員揃って声の方向に視線を向け、私も最初は生徒たちと同じように首を右に向けた。『いや、自分とこの生徒が大声で名指しされたんだから、それじゃダメだろ』という考えに気づいたのは、そこから数秒経ってからだった。
「ちょっと待ってて」
私は教室全体に向けてそう言うと、引き戸タイプのガラス戸を開けてベランダに出て校庭全体を見渡した。
校庭東側、体育館と武道場のある別館とはヒノキの植え込みで仕切られている幅跳びの砂場付近に、男子生徒十数名と山田先生が見えた。生徒は全員揃って同じ体操服を着て同じ
そろそろ話を五月六日の出来事に戻そう。
この日の一時間目。私は静かな一組の教室で、文明開化直後の日本史について教えていた。騒ぐ生徒は一人もおらず、板書の合間に窓から南側の景色を一瞬だけ見ることもできた。
雑巾などが干してあるベランダの向こう側からは、二組と四組の男子生徒の声が聞こえてくる。西側にあるこの教室からは姿が見えないことを考えると、東側のスペースに集まって鉄棒か幅跳びでもしているのだろう。校庭の奥にはコンクリート製の平屋が見える。屋外の体育倉庫と外で行う運動部の部室が一つになった建物だ。さらにその奥に目をやると、野球部のボールが飛んでいかないようにするための高いネットが張られ、そこから向こうは学校とは無関係の広い空き地である。空はあいにくの曇天だが、空き地では緑色のススキやセイタカアワダチソウが高い背丈を自慢し合う、絵になりそうな光景が広がっていた。
騒がしいうちのクラスと同じ学校のクラスとは思えないほど静かで、生徒が勝手に作った掲示物が何一つない教室内で、とても平和な時間が過ぎていった。まだ今年で三年目だが、教員としてこれほど働きやすい環境もそうはないだろうと感じる。白いチョークの字に黄色いチョークで下線を引きながら、いっそ二組以外のクラスの授業だけを受け持ちたいと考えてしまう(教師として最低の発言だ)。
その次の瞬間だった。
「おい、何やってんだ、石井!」
閉めきっていたベランダの窓ガラス越しに、体育教師の山田先生の声が響いてきたのだ。
一組の生徒は全員揃って声の方向に視線を向け、私も最初は生徒たちと同じように首を右に向けた。『いや、自分とこの生徒が大声で名指しされたんだから、それじゃダメだろ』という考えに気づいたのは、そこから数秒経ってからだった。
「ちょっと待ってて」
私は教室全体に向けてそう言うと、引き戸タイプのガラス戸を開けてベランダに出て校庭全体を見渡した。
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