44 / 214
♯4ー8
しおりを挟む
「さすがにそれはまずいですって。あと一週間で中間テストなのに、そんなことしてたらほかのクラスとの差ができるじゃないですか」
私はその場から立ち上がって小林先生に言い返した。
だがこの程度の逃げの一手では、小林先生の王手から逃げきることはできなかった。
「そんなの問題を起こした生徒たちの自業自得でしょ。十日も経ってるのに進展なしなんて状況のほうが深刻な問題よ」
なかなか手厳しいことを言う人だ。というか、いじめにかかわっていない生徒の授業の遅れはいいのか。
「確かに先生の言い分も分からなくはないですけど……。そもそも、叱るといっても具体的にどうやってやればいいのか分かりませんし……」
私は胸の下で腕を組んで本音を思わず口にする。そんなことを言えば、目の前の上司から何を言われるかなんてことは、冷静に考えれば検討がつくはずだった。
「あなたね、二年間何を見てきたの。生徒への叱り方が分からない? 三年目にもなってそんなの通用すると思ってるの? そんないい加減な態度だから生徒に馬鹿にされるんでしょ。そういうところから直していきなさいって、何度も言ってきたわよね。いつになったら学習するの、あなたは?」
私は、「やってしまった」と感じながら、厳しい姿勢で言葉をぶつけてくる小林先生の顔を見つめるしかなくなった。
そんなことを言われたって、私にだって得手不得手ってものはあるのだから、少しくらい妥協してくれたっていいじゃないか。それにどちらかと言えば、生徒への説教は小林先生の専売特許だし、いっそ先生がやったほうが効くのではないのか。
そんなことを考えながら、私の視線は助けを求めるように、小林先生の頭越しに見える、東側の出入り口に向かう新貝先生に向けられる。彼は、「先生も大変だね」とでも言いたげな表情をして、引き戸を開けて職員室から出ていこうとしていた。薄情な男だ。
その次の瞬間だった。
「樋口先生! いますか!」
新貝先生がノブに手をかけていた戸が突然廊下側から勢いよく開けられ、私を呼ぶ女子生徒の声が飛び込んできた。
私が体を横にそらして、小林先生が振り返ってそちらに視線を向けると、驚いて職員室後方の黒板に背中をつけている新貝先生と、彼に背中を向けて立っている松田里穂がいた。な
私はその場から立ち上がって小林先生に言い返した。
だがこの程度の逃げの一手では、小林先生の王手から逃げきることはできなかった。
「そんなの問題を起こした生徒たちの自業自得でしょ。十日も経ってるのに進展なしなんて状況のほうが深刻な問題よ」
なかなか手厳しいことを言う人だ。というか、いじめにかかわっていない生徒の授業の遅れはいいのか。
「確かに先生の言い分も分からなくはないですけど……。そもそも、叱るといっても具体的にどうやってやればいいのか分かりませんし……」
私は胸の下で腕を組んで本音を思わず口にする。そんなことを言えば、目の前の上司から何を言われるかなんてことは、冷静に考えれば検討がつくはずだった。
「あなたね、二年間何を見てきたの。生徒への叱り方が分からない? 三年目にもなってそんなの通用すると思ってるの? そんないい加減な態度だから生徒に馬鹿にされるんでしょ。そういうところから直していきなさいって、何度も言ってきたわよね。いつになったら学習するの、あなたは?」
私は、「やってしまった」と感じながら、厳しい姿勢で言葉をぶつけてくる小林先生の顔を見つめるしかなくなった。
そんなことを言われたって、私にだって得手不得手ってものはあるのだから、少しくらい妥協してくれたっていいじゃないか。それにどちらかと言えば、生徒への説教は小林先生の専売特許だし、いっそ先生がやったほうが効くのではないのか。
そんなことを考えながら、私の視線は助けを求めるように、小林先生の頭越しに見える、東側の出入り口に向かう新貝先生に向けられる。彼は、「先生も大変だね」とでも言いたげな表情をして、引き戸を開けて職員室から出ていこうとしていた。薄情な男だ。
その次の瞬間だった。
「樋口先生! いますか!」
新貝先生がノブに手をかけていた戸が突然廊下側から勢いよく開けられ、私を呼ぶ女子生徒の声が飛び込んできた。
私が体を横にそらして、小林先生が振り返ってそちらに視線を向けると、驚いて職員室後方の黒板に背中をつけている新貝先生と、彼に背中を向けて立っている松田里穂がいた。な
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる