イレブン

九十九光

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♯6ー9

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 予想していた通りの答えを言ってきた山田先生に、私は何も言わずにうなずいた。

 山田先生と佐久間校長の判断は、あながち間違っていない。学校のクラス分けは、相性が悪いと判断した生徒を分断するように行っている。そこから考えれば、いじめられっ子という火種に人を近づけさせないようにするのは学校教育では定石と言えるのである。

 だが生徒たちは、あの一件から心を改めて、内田平治をほかの生徒と同様に扱い、あからさまな冗談を言ったりしようとしているのだ。これが彼らのスキンシップであり、仲間の証なのである。スポーツの世界大会の応援席でともに日の丸を振るようなものなのだ。

「たしかに理由には納得できますけど……。これ、原田から出た苦情なんですよ」

 私はそれ以上言わなかった。先に地の文で示したような考えは口にせず、事実だけをありのまま、山田先生に伝えた。口ベタな私にはこれが精一杯だった。生徒の中の心の声には薄々気づいてはいるが、経験も浅い私にはこれが限界だった。

 当然、こんな弱々しい反論では、山田先生も「それは分かってるんですけどねえ……」という中途半端な言葉しかくれなかった。それどころか、原田の叫びはより一層その立場を危うくされることになる。

「樋口先生。山田先生を困らせないの」

 いつものジャージ姿の小林先生が横槍を入れてきた。どうやら彼女も、山田先生と同じ考え方を持っている様子だった。

「こういう複雑な問題は可能性から断ち切れっていう、佐久間校長からの指示よ」

 小林先生から飛び出した『佐久間校長』という言葉に、私の中で『またか』というセリフが湧き上がった。

 あの人はいつもそうだ。教室にいる子供たち一人一人のことを把握もしないで、職員室の西側に設置されている部屋から私たちにあれこれ指示を飛ばし、従わないと後々痛い目に合うぞと言うような雰囲気を無言で見せつける。数日間私に代わって教壇に立てとまでは言わないが、せめて定期的に視察くらいはしてほしいと思う。

「それは……、分かってますけど……。なんか、こう……」

 私が自分の思いと原田たちの本心をうまく言葉にできないでいると、小林先生は畳みかけるように話題を別のものへと変えてきた。

「それより、樋口先生。松田里穂はどうなりましたか。無断欠席が目立つじゃないですか」

 耳が痛くなる話だ。というよりあんたも松田の副担任なのだから、私に押しつけるような言い方じゃなくて、一緒に問題視するような言い方をしてほしい。
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