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♯10ー2
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あげるようにしてください」
私は困ったような顔を意識しながら、確認と同調の意味を込めて、天然ボケという表現がぴったりの穣一さんに説明する。
穣一さんはうなずきながらその話を聞くと、次のように返事を返した。
「はーい、分かりましたー」
本当に分かっているのかと思うほど気の抜けた返事だ。完全に学習態度の悪い中学生のそれである。
私が心の中にかかっている不安感をぬぐえないでいるのを知ってか知らずか、穣一さんは履物を履いて入ってきた出入り口から出ていこうとする。
松田母のように私たちにあれこれ言ってくる保護者も困るが、逆に穣一さんのように子供と学校教育に完全に無関心な保護者も困り者だ。しかも内田のように、誰の目から見ても問題を抱えていると分かる生徒の保護者ならなおさらだ。昭和どころか平成の後半戦の時代なのだから、男は亭主関白で構わないという考えはやめてほしいものだ。
ここまで明確に考えてはいなかったにせよ、私が心の中でこの男にあきれていると、穣一さんは出入り口のドアを開け放った状態で手を止め、こちらに振り返ってきた。
「あーあー。そう言えば、パート先の家内に電話で伝えた時に言われてたんですけど、平治を助けてくれた先生にお礼を言ってこいって。今、どちらにいますか?」
まるでよく行くコンビニで会計を済ませたあとでタバコを買い忘れていたのを思い出した、という感じの言い方だ。
すかさず大野先生が反応する。
「教員じゃなくて、生徒が助けたって聞いてるんですけど……。そうでしたよね、樋口先生」
私は彼女の質問にイエスと答えて、「呼んできましょうか?」ともつけ加えた。
「いえいえ、いいですよ。その先生によろしく伝えておいてください」
穣一さんの言葉が二転三転する。奥さんの言いつけを守らないどころか、こっちの話も聞いちゃいない。
そんなことを堂々と指摘できない私は、「そうですか。分かりました」と、穣一さんの言葉を受け止めた。
こうして内田と穣一さんとの嵐のような一時を終え、私は六時間目の授業のために四組の教室に足を運んだ。内容はこの日の一時間目に二組でやったものと変わらないため、持ち物の変化と言えば名簿表くらいだ。
私は困ったような顔を意識しながら、確認と同調の意味を込めて、天然ボケという表現がぴったりの穣一さんに説明する。
穣一さんはうなずきながらその話を聞くと、次のように返事を返した。
「はーい、分かりましたー」
本当に分かっているのかと思うほど気の抜けた返事だ。完全に学習態度の悪い中学生のそれである。
私が心の中にかかっている不安感をぬぐえないでいるのを知ってか知らずか、穣一さんは履物を履いて入ってきた出入り口から出ていこうとする。
松田母のように私たちにあれこれ言ってくる保護者も困るが、逆に穣一さんのように子供と学校教育に完全に無関心な保護者も困り者だ。しかも内田のように、誰の目から見ても問題を抱えていると分かる生徒の保護者ならなおさらだ。昭和どころか平成の後半戦の時代なのだから、男は亭主関白で構わないという考えはやめてほしいものだ。
ここまで明確に考えてはいなかったにせよ、私が心の中でこの男にあきれていると、穣一さんは出入り口のドアを開け放った状態で手を止め、こちらに振り返ってきた。
「あーあー。そう言えば、パート先の家内に電話で伝えた時に言われてたんですけど、平治を助けてくれた先生にお礼を言ってこいって。今、どちらにいますか?」
まるでよく行くコンビニで会計を済ませたあとでタバコを買い忘れていたのを思い出した、という感じの言い方だ。
すかさず大野先生が反応する。
「教員じゃなくて、生徒が助けたって聞いてるんですけど……。そうでしたよね、樋口先生」
私は彼女の質問にイエスと答えて、「呼んできましょうか?」ともつけ加えた。
「いえいえ、いいですよ。その先生によろしく伝えておいてください」
穣一さんの言葉が二転三転する。奥さんの言いつけを守らないどころか、こっちの話も聞いちゃいない。
そんなことを堂々と指摘できない私は、「そうですか。分かりました」と、穣一さんの言葉を受け止めた。
こうして内田と穣一さんとの嵐のような一時を終え、私は六時間目の授業のために四組の教室に足を運んだ。内容はこの日の一時間目に二組でやったものと変わらないため、持ち物の変化と言えば名簿表くらいだ。
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