イレブン

九十九光

文字の大きさ
上 下
111 / 214

♯10ー6

しおりを挟む
生徒が『まずい』だの『嫌い』だのと難癖をつけてほとんど手をつけないという始末。最終的には私と内田の二人だけで、ほとんど手をつけられなかったせいで重さに大した変化がない鍋等を配膳室まで戻すことになった。

 そしてこんな状況が翌日以降も続けば、私たち教員が何もしないわけにはいかなかった。

 六月十七日、本来なら修学旅行三日目のはずだった金曜日の放課後。私を含めた三年生担当の教員八人は、部活動の監督で人がほとんど残っていない職員室で臨時の職員会議を開くことになった。

「樋口先生、小林先生。何か心当たり等、ありませんか」

 書記担当の三島先生の横で、学年主任の山田先生が尋ねてきた。

「さあ……。各家庭からは、理由を聞いても、なんにも言わないって返ってきますし……。私たちも生徒に声をかけてるんですけど、何も言ってくれないんですよ。怒鳴っても、優しく説得してみても……」

 私がこれまでに集められた情報をありのまま説明すると、「樋口先生の言う通りです」と、不安そうな顔をする小林先生が不必要なつけ足しをする。そしてさすがにこれだけだとまずいと思ったのか、彼女は少し間をあけておまけのセリフを追加した。

「今度の土日に、臨時の家庭訪問を行おうと考えています。すでに各家庭には事情を説明し、日程の確認も行っていますので」

 この提案は私が事前に小林先生にしたものだった。学校にとどまって理由が分からないのであれば、生徒の自宅に突撃して直接聞きだせばいい。そんな単純な発想から生まれた考えだった。

 今まで、というよりクラス担任になる前の私なら、仮に他クラスでこういう問題が起きたところで、大変だなあと思いながら他人事で済ましていたかもしれない。だがそれが自分のクラスでの話となると、なりふり構っていられないと思うのは当然だった。

 目先のことしか考えていない身勝手な話だが、私という人間はそういう風にしかものを考えられないのかもしれない。

「それでどうにかなりますかね……」

 そう苦言を呈したのは、私の横に座る佐藤先生だった。

「根拠があるわけじゃないんですけど……。今回の問題、確実にただの悪ふざけじゃないと思うんですよね……。うちの学校、ほぼ全員が同じ小学校の卒業生なんで、団結力はほかの学校以上にありますし……。何より、二組って今年度に入って問題ばかり起きてるじゃない
しおりを挟む

処理中です...