イレブン

九十九光

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♯15ー6

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人がほとんどだった。

もちろん、生きてる人間とも出会った。テレビとかでよくやってた、知り合いの顔写真片手に人捜ししてる人なんかほとんどいない。それよりずっと多かったのは、崩れかけた家のそばとかで、子供やお年寄りを蹴りつけてる大人たちだった。無人のコンビニやスーパーなんかで盗みをやってる人も、遠めに見てるとたまに見つかる。

……。別にこういうのを見てもなんとも思わなかった。こんなに大きな地震が起きても、やっぱり人間は自分本位なことしかできないんだなって思った。起こる前とあとで全然変わってないなって思ったよ。

……。愛知に来たのは、地震から二週間くらいしてからだった。穣一さんと信子さんが、こっちにいた自分の子供、僕の父親を捜して役所に連絡してたんだ。それで僕のことを二人が知って、ボランティアに便乗して仙台まで来た。この時初めて知ったよ。自分の親戚が愛知県にいたなんて」
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