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第2章 異世界攻略編

第13話 平凡ですね☆

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「冒険者ギルドでは主に、ダンジョンと呼ばれる迷宮を攻略するか、冒険者ギルドに依頼されたクエストを達成する事でギルドランクを上げる事が出来ます」

 ギルド職員の説明を受ける。

「ギルドランクは全部で五段階。
『ビギナー』『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』『プラチナ』とランクが上昇していく毎に、魔物討伐の還元率が上昇します」

 有り体に言えば、報酬がアップするという事か。

「ダンジョンや依頼受注に何か制限はないのか?」
「はい、ありません。というのもここ最近、かなりの実力者がいきなり冒険者ギルドに現れる事が多くて、受付制限を撤廃したんです。実力者に対して低ランクの依頼を強制してのさばらせておく訳にもいきませんからね」

 おい言い方。
 大丈夫なのかこの職員。

 俺の心配をよそに、説明はまだ続く。

「通常は、冒険者ギルドとは別に小ギルドを結成して冒険に挑まれる冒険者も数多くいます。高ランクの冒険者が、多くの低ランク冒険者を雇って攻略する事もあれば、逆に低ランクの冒険者が、高ランクギルドの《荷物持ちポーター》としての職務を全うしつつ、時々見返りに経験値を得て強くなる等、結成方法は様々です。」

 この世界が、RPG的な世界観に基づいているならもしくは、と思っていたが、やはり経験値システムは存在したのか。しかし俺の『鑑定眼』には何も映らなかった。

 理由は恐らく、後から分かる事だろう。

「その他採取系クエスト、冒険者同士の騒動に関する規則などは、冒険者ギルドが発信しているこちらのパンフレットに記載されています。今一度、目を通しておいてください」

 要約すると、一定の薬草を取り過ぎて生態系を意図的に壊すような行為の禁止。冒険者同士の諍いに当ギルドは不干渉を貫くといった、言わばギルド側のスタンスが明確に記されている。

 続いて受付嬢は隣にある掲示板へと目を移す。

「またこちらのギルドでは、貢献度に応じて掲示板に最大五十位までランキングを掲載するシステムを導入しております。名前を売りたい場合は是非ランキング入りを目指してくださいね。中には匿名を希望される方もいますけど」

 なるほど。これはギルド内の立場向上にも使えそうだ。

 俺は心の中にメモしていく。

 あまり目立ちすぎるのは勘弁だが。

「では最後にギルド証を発行します」

 二枚の羊皮紙が手渡される。
 ここに必要事項を記入していくシステムらしい。

 名前、役職、得意な武器、魔法、特技など。
 小ギルドを結成する際にこれらの書類を使って冒険者ギルド側が斡旋するいったシステムもあるらしい。最悪攻略に行き詰った際のギルド再結成、または実力不足で追放された冒険者の救済処置といった役割もあるのかもしれない。

 漫画やアニメで見た冒険者ギルドよりもサポートが充実していて、特に現実感という意味では役所の煩わしさも含めて凄く再現されていると思う。

 これが異世界か。なんだか少し感動するな。

「主、顔がキモイです」
「感動に浸る暇すら与えてくれないのか」

 魔法か。俺も一度は使ってみたい。
 魔法とは科学を馬鹿にしたような存在だからな。

 ふはは、楽しみだ。

 という訳で、そこは無記名だ。

「では最後に魔力量を」

 なん、だと……!?
 受付嬢が棚から取り出したのは水晶。

「ふふ、ふははは」
「主……どうしたんですか?」

 ドン引きのルナをよそに俺はそれを指さす!

「魔力量を計測するのだろう?」
「は、はい。ご存じだったのですか?」

 ふはははは……来てしまった。
 異世界転移最重要イベント。

 これは本気を出さねばならないようだ。

 魔力、魔力……魔力!
 俺には見えないし感じられないが、きっと体内に流れているのだろう。心拍数を上げ血流を増やせば、体内に流れる魔力も自然と活性化する、はず。

「手を翳して頂くと……」

 ガッ!!
 俺は水晶を鷲掴みする。
 そして、全魔力を注ぎ込む!

「白色、平凡ですね。次、ルナさん」

 あれ。おかしいな。
 俺弱い……?

「ぷぷ、主平凡ですって」

 これは乱数調整だ、そうに違いない。
 今後どこかで巻き直しが来るはずだ。

 俺の真の実力が発揮される場所。
 それが必ず訪れる。

「ま、まぁ俺は頭脳担当だし」
「凄いです、ルナさん。紫色ですよ!」

 は?
 俺はその瞬間、ルナに殺意を抱いた。
 主より目立つ従者なんて不出来な奴だ。

 ここに捨てて行ってしまおうか。

「凄いなんてものじゃありません! 才能の塊ですよ。剣士職とここには書かれていますが、魔法師の道も考えてみては如何ですか!?」
「すみません、そうしたいのはやまやまですが、この不甲斐ない主が相方ですと前線が崩れてしまいますので、後衛職を私が務めるというのは」

 ルナ。お前あとで屋上な?
 この際だ、みっちり理解らせてやる!!

「ふふっ」

 ルナは勝ち誇った笑みを浮かべた。
 畜生ッ! 絶対追い抜かしてやるからな!


 こうして、俺達は異世界で生きぬく為の準備を整えた。

『ギルド証』
 名前 レイ
 レベル 1
 HP200/200 MP100/100 

 名前 ルナ
 レベル 1
 HP100/100 MP400/400

 ※特殊スキル『成長』
 効果:冒険者専用スキル。ギルド証に記載された値分だけ、実際の体力と魔力に補正値が付与される。『成長』は敵を倒す事に経験値として効果が増強する。


 最強のアタッカーであるルナ。
 そして、最強の頭脳を持つ俺。

 ダンジョンが何だか知った事ではないが。

「いいか、ルナ。俺達の命は粗末に使ってナンボだ」
「つまり死ぬ寸前まで暴れてオッケー?」
「そうだ、安全マージンなんて知った事か。極限状態に身を置いてこそ俺達は輝ける。死ぬ事を恐れるな」

 どこぞの有名人が言った。
 死ぬ事以外は掠り傷、と。

 俺はこの世界で生き抜く為、容赦はしない。
 一階層は、一日でカタを付けてやる。
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